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今月の表紙の筆蹟は、村上春樹さん。版画は、タダジュンさん。

波 2023年5月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2023/04/27

発売日 2023/04/27
JANコード 4910068230539
定価 100円(税込)
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筒井康隆/老耄倹約日記 第4回
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第68回
【村上春樹『街とその不確かな壁』刊行記念特集】
角田光代/すぐ近くの異界
タダジュン/線がざわざわと動きだす 装画の銅版画をめぐって
永井紗耶子『木挽町のあだ討ち』
[特別対談]神田伯山×永井紗耶子/人生に脇役はいない 前篇

平野啓一郎『三島由紀夫論』
中島岳志/虚無への関心を共有しつつ、その死を拒絶する

サンダー・コラールト、長山さき 訳『ある犬の飼い主の一日』(新潮クレスト・ブックス)
いしいしんじ/我々は物語のなかに生きている

武内 涼『厳島』
吉川晃司/夢とロマンは歴史の中に

前田英樹『保田與重郎の文学』
片山杜秀/窮極の保田與重郎論

山本さほ『てつおとよしえ』
南沢奈央/大共感! “家族あるある”漫画

Superfly 越智志帆『ドキュメンタリー』
塩谷 舞/内側にいる他者と向き合い生まれたスター

中村富士美『「おかえり」と言える、その日まで―山岳遭難捜索の現場から―』
中江有里/遭難者を発見する“だけじゃない”ドキュメント

【特別読物】
バッキー井上/京都裏寺40前後 第五部 後篇

【記念エッセイ】
森下典子『日日是好日―「お茶」が教えてくれた15のしあわせ―』
森下典子/授賞式 IN ローマ
【短篇小説】
北村 薫/映画から手品
ヨルシカ×新潮文庫 コラボレーションブックガイド】
けんご/音楽と文学の幸福な関係
 ヘミングウェイ、高見 浩 訳『老人と海
 宮沢賢治『新編 風の又三郎
 ワイルド、西村孝次 訳『幸福な王子
 萩原朔太郎『萩原朔太郎詩集
 グリム兄弟、植田敏郎 訳『ブレーメンの音楽師―グリム童話集III―
 アンドレ・ジッド、今 日出海 訳『地の糧
【私の好きな新潮文庫】
いまみちともたか/夢中で読んだ3冊
 道尾秀介『向日葵の咲かない夏
 阿部和重、伊坂幸太郎『キャプテンサンダーボルト 新装版
 ジョン・アーヴィング、筒井正明 訳『ガープの世界(上・下)
【今月の新潮文庫】
ドナルド・レイ・ポロック、熊谷千寿 訳『悪魔はいつもそこに』
江國香織/そもそもあり得なかったものの美しさ
【コラム】
三宅香帆/物語のふちでおしゃべり 第14回

三枝昴之・小澤 實/掌のうた

[とんぼの本]編集室だより

崎山蒼志/ふと、新世界と繋がって 第8回

宮本雄二『2035年の中国―習近平路線は生き残るか―』(新潮新書)
宮本雄二/習近平を待ち受ける困難と挑戦

【連載】
橋本 直(銀シャリ)/細かいところが気になりすぎて 第7回
高嶋政伸/おつむの良い子は長居しない 第9回
近藤ようこ 原作・梨木香歩/家守綺譚 第8回
大木 毅/指揮官と参謀たちの太平洋戦争 第6回
エリイ(Chim↑Pom from Smappa!Group)/生時記 第9回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第27回
川本三郎/荷風の昭和 第60回

編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、村上春樹さん。版画は、タダジュンさん。

◎小社資料室には同業他社の社史類を集めた一角があり、ふと一冊手に取ってみたら、あれもこれもと読みたくなる面白さ。文藝春秋の社史二種(『七十年史』『八十五年』)は夫々OBの半藤氏松尾氏の執筆で、「社中日記」の会社らしく人懐っこく、上等な好讀物。筑摩書房のは創業から三十年を和田芳恵(『接木の台』等の作家)、以後(倒産及び復活)を永江朗氏が描く二部作で、書きぶりも含めて対比的な味わいが魅力です。
◎出版社の社史は商売上の失敗や筆禍や執筆者とのトラブル等も割と率直に記してあって、例えば『中央公論社の八十年』によると、戦後すぐ青年社長は谷崎を某鮨屋で接待したものの、怪しげな前菜が次々と出て文豪を怒らせてしまう。後日、聞きつけた小林秀雄からも「谷崎にオムレツを食わせる馬鹿がどこの世界にいる。お前は出版屋は落第だ」と叱られた由。それをきっかけに社長は小林に傾倒し、この批評家の助言によって中央公論新人賞を設立。第一回は深沢七郎楢山節考」で、単行本はベストセラーになるものの、やがて「風流夢譚」事件へと繋がっていくわけで、いかにも歴史に触れているなあという気分にさせます。
◎講談社のは図鑑みたいで、僕の好みで言えば野間省一・惟道両社長の追悼文集二冊の方が読みごたえあり、中でも惟道氏を悼む大江健三郎さんの友情溢れた文章は白眉。
◎と、出版社社史を漁り始めたのは、いま多くの本好きが入手に奔走中の『国書刊行会50年の歩み』に興奮したせいです。これはあの濃厚で特殊で志高い、殆どパンキッシュな出版社の来歴と秘話を、社員やOBが無類の明るさで披露し続ける小冊子。同業者としては大笑いしながら背筋が伸びる珍しい読書体験をした社史の傑作でした。
▽次号の刊行は五月二十九日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。