ホーム > 書籍詳細:ぼけますから、よろしくお願いします。

母85歳に認知症診断、父93歳が初の家事に挑む!? 娘が見た老老介護のリアル!

ぼけますから、よろしくお願いします。

信友直子/著

1,500円(税込)

本の仕様

発売日:2019/10/24

読み仮名 ボケマスカラヨロシクオネガイシマス
装幀 新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 254ページ
ISBN 978-4-10-352941-5
C-CODE 0095
ジャンル ノンフィクション
定価 1,500円
電子書籍 価格 1,500円
電子書籍 配信開始日 2019/11/08

「心配せんでもええ。あんたはあんたの仕事をした方がええわい」――両親の気丈な言葉に背中を押されても、離れて暮らすことに良心の呵責を抱く映像作家の娘。時に涙で撮り続けた超高齢夫婦の介護の日常は、ほっこりする愛と絆で溢れていた。同名映画にもなった、克明な親の「老い」の記録、そして見守り続けた子の心境を綴る。

著者プロフィール

信友直子 ノブトモ・ナオコ

1961年広島県呉市生まれ。東京大学文学部卒。森永製菓入社後、「グリコ森永事件」当時に広告部社員として取材を受けたことがきっかけで、映像制作に興味を持ち転職。制作プロダクションを経て2019年10月現在はフリー。主にフジテレビでドキュメンタリー番組を手がける。「仕事が恋人」を公言し独身。2005年子宮筋腫により子宮摘出手術、2006年インド旅行中に列車事故で重傷、2007年乳がんを発症など波乱の人生。乳がんの経験はセルフドキュメント「おっぱいと東京タワー〜私の乳がん日記」(フジテレビ「ザ・ノンフィクション」)として放映。

書評

父と母へ。最後にして最大のラブレター

大島新

 ある事象を長期にわたって取材した結果を表現物として発表する手段に、映像のドキュメンタリーと活字によるノンフィクションがある。両者の大きな違いは、カメラがあるか、ないか、だ。映像のドキュメンタリーは、カメラが回っていなければ「なかったこと」と同じである。一方、活字の場合、その瞬間の直接的な記録がなくても、取材メモや記憶によって再現することができる。
 どちらがその事象を、受け手により深いものとして伝えられるのか。カメラの制約がないぶん、活字の方がより細やかに、取材した内容を伝えることができるだろう。だが映像が持っている情報量もあなどれない。例えば取材対象者の表情。「目は口ほどに物を言う」の諺にもある通り、ある人のインタビューを映像として使用しても、活字にしても内容は同じだが、それがどんな表情によって発せられるのかで、受け手の印象はまったく異なる。映像業界に身を置く者としては、優れた活字ノンフィクションの存在を重々承知の上で、「映像も負けてないよ」と言いたいところだ。さて、同じ映像業界に生きる信友直子は、自ら作った映画と同名タイトルの本を、どんな風に仕立て上げたのか。
 一読後、思ったのは「まいりました」だ。信友は、普段の仕事とは異なるジャンルでの表現に挑み、映像の持つ情報量の豊かさの壁を、まったく違う形で打ち破った。この本は、タイトルこそ同じだが、いわゆる「映画のノベライズ」では断じてない。その方法論の違いを中心に、書籍版『ぼけますから、よろしくお願いします。』を読み解いていきたい。
 映像ドキュメンタリーを活字化した際に、宣伝の惹句などでよく使われるのは「映像には収めきれなかったエピソードがふんだんに入った……」という言葉だ。確かに、この本にもそういう場面はたくさんあるし、そのことによって内容が深まってもいる。だが私が一番に感じたのは、信友の「語り口」の違いである。映画でも一人称のナレーションで信友自身の心情が語られる場面はあるが、その分量は極めて少なく、表現も抑制的だ。これは「できるだけ“撮れているもの”で勝負したい」という、信友の映像作家としての矜持による選択だろう。
 だが書籍ではその禁を破り、物語が全面的に彼女の心情吐露によって進行していく。それでいて嫌みになっていないのは、取材対象となったご両親への果てしない愛とユーモアのおかげだ。
 例えば認知症と初めて診断された母を残して、信友が東京に戻る日。母は娘を広島空港行きのバス停まで送ってくれて、手を振って別れる。これは映画にもあるシーンなのだが、書籍で読んで初めて知った信友の母への思いに触れ、私は泣けて仕方がなかった。映画ではすっと通り過ごしていた何気ない場面だったのにもかかわらず、だ。
 ユーモア、という点では、こんな場面がある。デイサービスの施設に初めて連れて行った際、母がかしこまって自己紹介をするくだりだ。
「『わたくしは、信友文子でございます』/『わたくし』だって? 『ございます』だって? お母さん、何を気取っとるんね?/おほほほ、と口に手を当てておしとやかそうに笑っている母に、私は思わずツッコミを入れたくなりました。(中略)これが認知症になってからの母のよくないところなんですが、自分に自信がなくなっているので、初めて会う人にばかにされたくないという意識が働くのか、必要以上にお上品ぶって、マウンティングする気満々なんです」
 信友さん、この場面も映画にあったけど、こんなことを思っていたなんて聞いてないよ。この場面は、断然本の方が魅力的だわ。
 信友の愛とユーモアは、取材対象となったご両親から受け継がれ、育まれたものだ。この本では、そのことがよくわかるお二人の人柄が、娘の筆によって「これでもか」と語られる。愛し抜いた両親がともに90歳を過ぎ、先が決して長くはないと知った娘が、父と母のことを世に残しておきたいと願って書いた記録であり、最後にして最大のラブレターでもある。
 そして愛とユーモアに貫かれた信友家の長い記録は、終盤に信友が悩んだ末に明かした彼女の“日記”によってクライマックスを迎える。そこに記されているのは、いずれ訪れる肉親の死についての、哲学的とも呼べる考察だ。こんな表現は、映像には絶対にできない。
 優れたドキュメンタリー映像作家である信友直子は、この本の発表をもって、優れたノンフィクション作家ともなったのだ。

(おおしま・あらた ドキュメンタリー映像作家)
波 2019年11月号より
単行本刊行時掲載

目次

はじめに
第1話 お母さんは、認知症になったんかもしれん……
第2話 「お母さんがおかしゅうなったけん、撮らんようになったん?」
第3話 私が帰ってきた方がええかね?
第4話 「詐欺グループの名簿に、お母さんの名前が載っていました」
第5話 「人に迷惑をかけない年寄りになりたいです」
第6話 「わしにも男の美学があるんじゃ」
第7話 「あんたはあんたの仕事をした方がええわい」
第8話 「どうしてかね、大事なときに。せっかくあんたが帰ってきとるのにね」
第9話 「この老夫婦は誰ですか?」
第10話 「あんたの仕事じゃけん、わしらは何でも協力するよ」
第11話 「これは、ちちにするぶん」
第12話 「カメラマンか何か知らんが、知らんヤツをこの家に入れるなよ」
第13話 「私たちにつないでいただければ、あとは何としてでも入っていきます」
第14話 「介護はプロとシェアしなさい」
第15話 「母の認知症は、神様の親切かも」と思うに至った私
第16話 「おまえは感謝の心を忘れたんか!」
あとがきにかえて――父と母のいま

感想を送る

新刊お知らせメール

信友直子
登録する

書籍の分類

この分類の本

ぼけますから、よろしくお願いします。

全国の書店、または以下のネット書店よりご購入ください。

※ 書店によっては、在庫の無い場合や取扱いの無い場合があります。あらかじめご了承ください。
※詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

  • amazon
  • 楽天ブックス
  • 7net
  • e-hon
  • HonyaClub
  • TSUTAYA ONLINE
  • 紀伊國屋書店
  • エルパカBOOKS - HMV
  • honto

ぼけますから、よろしくお願いします。

以下のネット書店よりご購入ください。

※ 詳しい購入方法は、各ネット書店のサイトにてご確認ください。

電子書店

Shincho Live!