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2ちゃんねる、あなどりがたし
宣伝男 

 私は2ちゃんねるのカキコを読んで泣いたことがある。マスコミ関係の掲示板を覗いていた時のことだ。若いフリーのライターが、仕事に自信がないと嘆きの書き込みをしていた。彼を励ます何人もの同業者のレスが続き、その親身な言葉に、彼は立ち直る勇気を得たのだった。私はそのやりとりを読んでいてノドの奥が熱くなった。
 9月始め、とある会議で担当編集者から「電車男」の企画説明を受けながら、このことを思い出した。瞬間、「電車男」絶対いけると直感した。
 ……匿名の善意。電車男のリアル行動と書き込みの同時進行。もてない男がもてない男を勇気づけるおかしさ、人を信頼すること。……企画のこの時点で広告のアピールポイントがいくつもあった。「電車男だからやっぱ、電車の中吊りでしょう」などと軽口を叩き、早く制作にとりかかりたくてウズウズしていた。
 ところが、当初の初版部数は私が思っていたより少なめ。スタートは慎重に行こうとしているようだった。読者に伝えたいことがあっても部数が少なければ広告スペースがとれないのだ。残念。しかし、どうも納得できない。話を聞くだけで面白そうなものは、広告すればもっと面白さが伝わるものなのだ。これを広告しないでどうする。私の中の宣伝男が「広告スペースもっとたのむ」と叫んでいた。
 その後すったもんだがあり、本当に電車の中吊り案が実現してしまった。部数は発売1週間で15万部まで伸びている。大勢の人が「電車男」を読んで、笑ったり泣いたり感動したりしている。その中にはきっと、私たちが作った中吊りを見て、この本の存在を知った人もいるはず。どんな方か私には知る由もないが、2ちゃんねると同じように、見えないが、つながりを感じることができる。(今月、「電車男」の新聞広告も出るから見てね。)