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スサノヲの正体

関裕二/著

836円(税込)

発売日:2023/07/18

  • 新書
  • 電子書籍あり

荒ぶる悪神か、救いの善神か。『日本書紀』の企みを古代史研究の鬼才が暴く!

アマテラスの弟スサノヲは、天上界では乱暴狼藉を働いて追放される悪玉だが、地上界では八岐大蛇(やまたのおろち)を退治して人々を助ける善玉になる。そのキャラクターは『古事記』と『日本書紀』とで大きく異なり、研究者の間でしばしば論争となってきた。ヤマト建国への関与、祭祀をめぐる天皇家との関係、縄文文化のシンボル……。豊富な知識と大胆な仮説で古代史の謎を追ってきた筆者が、スサノヲの正体に鋭く迫る。

目次
はじめに
序章 スサノヲはどこで祀られているか
スサノヲを祀る神社は少ない/桁違いに多い八幡と稲荷/氷川神社は出雲の流れを汲む/スサノヲと天皇家の不思議な関係/末法の世に熊野に押し寄せた貴種たち/なぜ伊勢ではなく熊野なのか/政敵のシンボル?/大自然と同じ恐ろしい神/弥生的ではなく縄文的
第一章 なぜ古事記で敬われ、書紀で蔑まれるか
『古事記』は畏敬し『日本書紀』は蔑視する/『古事記』でのスサノヲのふるまい/「スサノヲ」は地名ではなく「荒ぶる性格」から/『日本書紀』の描いたスサノヲの生涯/手足の爪を剥いで追放/簑笠を着ている者=蔑まれる存在/考古学が示した「出雲の国譲り神話」の現実味/本居宣長から始まるスサノヲ研究史/「大国主神が元」と推理した津田左右吉/「山の神」説や「戌亥隅信仰」説/世界の神話が似ている理由/記紀のスサノヲ像を混同するな/『古事記』は『日本書紀』のウソを告発する書/記紀神話の政治性に着目せよ
第二章 ヤマト建国の立役者は誰だったのか
神話を絵空事と考えることなかれ/ヤマト建国の地・纏向に北部九州の土器は流れ込んでいない/建国のきっかけは近江・東海の勃興/立役者はスサノヲ/近江・東海へ浸透したタニハ/古来、淡路島は畿内ではなかった/『播磨国風土記』に残された出雲とタニハの戦い/河内に拠点を構えた吉備/神功皇后の足取りと考古学/住吉大神と神功皇后の秘め事/神武・応神と海神のつながり/天孫降臨神話は九州南部への逃避行/祟る日本海の鬼・大物主神
第三章 天皇家の祖神はスサノヲなのか
天皇家の祖はスサノヲ?/「アマテラスと大物主神は一体分身」/なぜ崇神天皇はアマテラスを遠ざけたのか/伊勢神宮を整備したのは持統天皇/天皇家の祖が単為生殖だった理由/持統天皇の伊勢行幸に反対した三輪氏/伊勢で語られるスサノヲの伝説/「スガ」から「ソガ」への音韻変化/スサノヲと蘇我氏の共通点/新羅王子のアメノヒボコ/タニハの戦術そのもの/『三国史記』に登場する脱解王/大物主神とサルタヒコ/服属して伊勢に舞い降りた?
第四章 なぜスサノヲは「抹殺」されたか
スサノヲはタニハからやってきた/タニハと新羅/「出雲の国譲り」タケミカヅチは尾張系?/伊勢と熊野は何が違うか/ヤマト建国後、発展しなかった尾張/『日本書紀』と『先代旧事本紀』/天香具山にはナガスネビコが祀られている?/持統天皇の万葉歌の真意/住吉大社の執念/ヤマトの真の太陽神
終章 蘇る縄文の魂とスサノヲ
縄文の神/文明的価値体系への疑問/農業と文明と戦争/スサノヲの問いかけ/古代人のシンボル的存在
おわりに 参考文献

書誌情報

読み仮名 スサノヲノショウタイ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-611005-4
C-CODE 0221
整理番号 1005
ジャンル 歴史読み物、歴史・地理・旅行記、世界史
定価 836円
電子書籍 価格 836円
電子書籍 配信開始日 2023/07/18

蘊蓄倉庫

アマテラスにも謎は多い

 本書ではスサノヲの正体を探っていく中で、姉のアマテラスの謎にも迫ります。アマテラスは皇祖神なのですが、天皇とアマテラスの関係はちょっと意外です。まず、実在の初代王と言われる崇神天皇はアマテラスを伊勢に追いやっています。また、伊勢神宮を整備した持統天皇だけは伊勢に参りましたが、それ以降明治になるまで、1000年以上も歴代天皇はアマテラスを祀る伊勢神宮を訪れませんでした。そして、明治天皇が東京に遷御したあと武蔵国の鎮守勅祭の社に定めたのは、スサノヲの祀られる氷川神社(現さいたま市)。明治天皇は氷川神社を訪れた翌年に、伊勢神宮を訪れたのです。そもそも伊勢にいる神はアマテラスなのか、その正体は何なのか――。本書はそんな疑問も投げかけます。

掲載:2023年7月25日

担当編集者のひとこと

裏テーマは「尾張」

 新潮新書での関裕二さんの作品は、『神武天皇vs.卑弥呼―ヤマト建国を推理する―』(2018年)『古代史の正体―縄文から平安まで―』(2021年)に続いて3作目となります。それぞれいろいろな読み方ができる作品なのですが、今回の「裏テーマ」は、あまり脚光を浴びることがない「尾張」かもしれません。ヤマト建国に多大な貢献をしたにもかかわらず、最後に裏切られてしまった尾張。その結果、日本海勢力である天皇家は天香具山で東海勢力を祀ることになり、それは紆余曲折を経て、今も住吉大社に受け継がれることになります。天香具山の重要性と東海勢力の関係――ぜひ本書でご確認ください。

2023/07/25

著者プロフィール

関裕二

セキ・ユウジ

1959(昭和34)年、千葉県柏市生まれ。歴史作家、武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。仏教美術に魅了されて奈良に通いつめ、独学で古代史を学ぶ。『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『神武天皇vs.卑弥呼』『古代史の正体』など著書多数。

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