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新潮文庫を見れば答えがわかる! 不朽の名作に隠された秘密とは?

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 本号表紙を飾った川端康成の代表作といえば、『雪国』。新潮文庫では、どの本にも1ページ目の本扉下部に番号が振られていますが(今は11600番台)、これは入稿番号といいます。その記念すべき第1番は『雪国』でした。
 文庫『雪国』は昭和22年7月に発行されましたが、なんとこのときは、現在とは結末が違いました。初版では、最新版文庫の149ページ12行目で終わります。じつは文庫刊行後、「小説新潮」に「続雪国」が掲載され、のちにそれを増補し、今の『雪国』となったのです。川端は「書き足さぬ方がよかったかもしれない。しかし(略)終章を加えた形で今は出版してみることにした」と書いています。みなさんはどちらのラストがお好みか、ぜひ確認してみてください。
 ちなみに「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」という書き出しはあまりに有名ですが、昭和10年に雑誌へ掲載されたときは「濡れた髪を指でさわった」から始まりました。雑誌では「国境のトンネルを抜けると、窓の外の夜の底が白くなった」という一文もあり、度重なる推敲を経て、現在の『雪国』が誕生したことがわかります。

波 2022年5月号「いま話題の本」より

著者紹介

川端康成カワバタ・ヤスナリ

(1899-1972)1899(明治32)年、大阪生れ。東京帝国大学国文学科卒業。一高時代の1918(大正7)年の秋に初めて伊豆へ旅行。以降約10年間にわたり、毎年伊豆湯ケ島に長期滞在する。菊池寛の了解を得て1921年、第六次「新思潮」を発刊。新感覚派作家として独自の文学を貫いた。1968(昭和43)年ノーベル文学賞受賞。1972年4月16日、逗子の仕事部屋で自死。著書に『伊豆の踊子』『雪国』『古都』『山の音』『眠れる美女』など多数。

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