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韓国民主政治の自壊

鈴置高史/著

946円(税込)

発売日:2022/06/17

書誌情報

読み仮名 カンコクミンシュセイジノジカイ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 266ページ
ISBN 978-4-10-610953-9
C-CODE 0222
整理番号 953
ジャンル ノンフィクション
定価 946円
電子書籍 価格 946円
電子書籍 配信開始日 2022/06/17

これは「従中・反米・親北」路線の帰結だ! 朝鮮半島「先読みのプロ」による冷徹な分析。

文在寅大統領は在任期間中、一貫して民主政治を壊そうとしていた。三権分立を無視した検事総長の解雇、検事や裁判官を捜査するための「ゲシュタポ機関」創設、「メディア懲罰法」制定の試み……。そのすべては「従中・反米・親北」という政治路線と符合していた。文在寅にクビにされたその検事総長が新大統領に就任した今、果たして韓国は変わるのか。朝鮮半島「先読みのプロ」による冷徹な観察。

目次
はじめに——混沌の李朝末期が再現する
第1章 コロナが暴いた韓国の素顔
1 「西洋の没落」に小躍り
2 宗教に昇華した「K防疫」
3 絶望的な劣等感が生む「から威張り」
第2章 あっという間にベネズエラ
1 三権分立の崩壊が生んだ尹錫悦大統領
2 永久執権目指し「ゲシュタポ」設立
3 「メディア懲罰法」で言論の自由も放擲
4 法治なければ民主なし
5 「チャベス」はこれからも出てくる
第3章 そして、友達がいなくなった
1 猿芝居外交のあげく四面楚歌
2 「慰安婦を言い続けるなら見捨てる」と叱った米国
3 「韓国は人権無視国家」と米国が認定
第4章 韓国はどこへ行くのか
1 「レミング」が呼ぶ李朝への先祖返り
2 保守も左派も核武装に走る
3 ついに縮み始めた韓国経済
おわりに——韓国にも『三四郎』はあるのだが

蘊蓄倉庫

「K防疫」の詐術

 新型コロナウイルス感染症が猛威をふるい始めた当初、「K防疫」なる言葉が拡がりました。韓国の感染症対策の優秀さをアピールするもので、日本でも自国の感染症対策の不徹底ぶりを強調するために、この「K防疫」が持ち出されたりしました。
 しかし、この「K防疫」を巡っては、かなりの統計的詐術が駆使されていた疑いが濃厚です。著者の鈴置氏の試算では、コロナによる公表死亡数は実際の三分の一程度。また、医療専門家の中には「韓国では糖尿病など既往症を持つ人がコロナで死亡した場合、死因をコロナではなく既往症と報告するケースがある」としている人もいます(詳しくは本書の第1章参照)。
 もっとも、ちょうどウクライナ危機が起こった頃に韓国はコロナの第五波に見舞われ、人口1000万人以上の国の中で100万人あたりの新規感染者数が世界一になってしまい、死亡数も過去最高を記録し始めてしまったため、「K防疫」という言葉は今では流行らなくなってしまったようです。

掲載:2022年6月24日

担当編集者のひとこと

ベネズエラ化する韓国

 2017年5月から今年5月までの5年間大統領の職にあった文在寅氏は、その在任期間中ひたすら「反米・従中・親北」路線を突き進み、韓国の民主政治の基盤を大きく毀損しました。

 2021年1月、裁判官や検事を捜査するための高位公職者犯罪捜査処(公捜処)を発足させ、そのトップや検事を左派で固めました。退任直前には保守の牙城と見なした検察から汚職と経済事件をのぞいて捜査権を取り上げました。大統領退任後に自身が訴追されるのを未然に防ごうとの魂胆が見え見えの策でした。

 2021年には、「誤報」を理由に言論機関に巨額の罰金を科しうる「メディア懲罰法」の導入も図っています。国会の委員会を通過した同法案は、国際社会からの反対もあって本会議へは上程されませんでしたが、民主政治の基礎とも言うべき「言論の自由」を貶める法案が与党から堂々と提示された事実は変わりません。

 さらに驚くべきは、公捜処にもメディア懲罰法にも、国民からさほどの反対が起きなかったことです。韓国では左右対立という政治闘争の過程で、民主政治の基盤をなす制度があっさりと犠牲にされてしまうのです。
 この本の第2章のタイトルは「あっという間にベネズエラ」とされています。かつての南米随一の豊かな産油国・民主国家は、左右対立の果てにいま、大量の難民を送り出す「破綻国家」に成り果てています。左右のポピュリズムによって民主政治の制度が毀損されている現在の韓国は、この「ベネズエラ化」のプロセスの始まりいるのかも知れない、と著者は考えています。

 日本人としては、2014年に起こった産経新聞ソウル支局長に対する名誉毀損事件も同時に思い出しておいた方がいいでしょう。当時の朴槿恵大統領に対する噂を、現地紙の報道などを元にして書いたコラムが大統領に対する名誉毀損にあたる、とされた事件ですが、記事の大本である朝鮮日報ではなく産経新聞を狙い撃ちにした検察の対応は明らかに「政治的」でした。本来、中立的に民主政治のシステマチックな機能を担うべき機関が、政治的に運用されてしまうのが韓国の実態なのです。

 2018年に出された著者の前著は『米韓同盟消滅』というタイトルを持っています。出版当時は「さすがに言い過ぎでしょ」という反応もありましたが、その後、米韓同盟を毀損する動きは一向に止んでいません。本書のタイトルも、「韓国は曲がりなりにも民主主義でしょ」「さすがに言い過ぎでは?」と感じられるかも知れませんが、言い過ぎかどうかは、文在寅によってクビにされた元検事総長の大統領率いる保守政権の今後の出方によって明らかになるでしょう。ちなみに著者は、「保守政権になっても、民主政治の仕組みが毀損されていく韓国の傾向は変わらない」との見立てを取っていますが、果たして……。

「朝鮮半島先読みのプロ」として定評のある著者の韓国観察、どうぞご一読ください。

2022/06/24

著者プロフィール

鈴置高史

スズオキ・タカブミ

1954(昭和29)年愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本経済新聞社に入社。ソウル特派員、香港特派員、経済解説部長などを歴任し2018年に退社。2002年、ボーン・上田記念国際記者賞を受賞。著書に『米韓同盟消滅』など多数。

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