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一汁一菜でよいと至るまで

土井善晴/著

902円(税込)

発売日:2022/05/18

書誌情報

読み仮名 イチジュウイッサイデヨイトイタルマデ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 239ページ
ISBN 978-4-10-610950-8
C-CODE 0276
整理番号 950
ジャンル ノンフィクション
定価 902円
電子書籍 価格 902円
電子書籍 配信開始日 2022/05/18

料理に失敗なんて、ない。「一汁一菜でよい」という、家庭料理の斬新なスタイル。そこに至るまでの修業、出会い、発見、迷い……、すべては人を幸せにする料理につながっていく。

料理に失敗なんて、ない――レストランで食べるものと家で食べるものとを区別し、家庭では簡素なものを食べればよい、という「一汁一菜」のスタイルを築いた料理研究家・土井善晴。フランス料理、日本料理の頂点で修業を積んだ後、父と同じ家庭料理研究の道を歩む人生、テレビでおなじみの笑顔にこめられた「人を幸せにする」料理への思い、ベストセラー『一汁一菜でよいという提案』に至るまでの道のりを綴る。

目次
一汁一菜でよいと私が思うに至るまで
第一部 料理は一生のもの――父、土井勝の名の陰で
『きょうの料理』と同い年◆料理は真面目なもの◆元祖。たらこスパゲティ◆「家庭料理は女がするもの」でした◆海軍の調理法◆父の料理学校◆おふくろの味◆口癖は「旬が大事です」◆父、土井勝のこと◆一粒のご飯にも神様がいた◆もう、勉強ばかりするのは嫌です◆ポール・マッカートニー命◆『食生活と身体の退化』を読む◆周りの素敵な人に磨かれた美意識
第二部 料理って、こういうことなんだ――フランスでの料理修業
大学を休学してスイスに◆語学学校でカンニングは許されるか◆生まれて初めての厨房で◆書き写しただけのレシピ◆「人間が選ぶ」西洋と「おのずからなる」日本◆五つ星ホテルの超クラシックな厨房◆日本を離れた初めての一年間◆神戸「ビストロ・ド・リヨン」◆自覚していた弱い自分◆食の都リヨンのシンボル「ポール・ボキューズ」◆フランスにおける一汁一菜、野菜スープとチーズとパン◆毎日の野菜スープは水で煮る◆違いを愛するフランス流の寛容◆「食べる人」の意志は尊重される◆人間中心主義から生まれたフランス料理◆料理をしながら食べる伝統文化◆一人で旅して食べる◆アラン・デュカスのファンになる◆ヌーベル・キュイジーヌと大阪万博◆フランス料理と日本料理の出会い◆芸術になったフランス料理◆コース料理という楽曲アルバム◆影響し合い、グローバル化する料理◆料理とは何かを学んだロワイエット村◆新しいフランス料理は素材重視◆よき料理は自然とつながっている◆おいしさだけではない料理の価値観
第三部 料理の「顔」と「目的」を見極める――「味吉兆」で学んだこと
日本料理がわからないと自覚する◆味吉兆主人・中谷文雄◆調理場の厳しさがもたらす心地よさ◆「すっとこどっこい」と叱られる◆「全力でする仕事」と「ええ加減にする仕事」◆タブーを冒さないといけない◆味吉兆の「バンザイ」◆繊細な包丁の仕事◆家庭とプロの包丁の違い◆包丁くらべ◆それぞれの立場で日本一を目指す◆まねること、まなぶこと◆日本料理のエレガンス◆湯木貞一という天才◆「世界の名物 日本料理」◆懐石料理の極意とは◆何もないゼロから始まる懐石料理◆お茶があるか、お茶がないかの基準◆日本一美しい盛り付け◆自分には見えなかった価値◆美は至るところに現れる
第四部 家庭料理とは、無償の愛です――料理学校で教える立場に
料理は花嫁修業でした◆『きょうの料理』という責任◆ご馳走を求めていく昭和の家庭料理◆家庭料理とプロの料理は区別してください◆「なんで私が家庭料理やねん」◆レストラン開発の仕事は丹波篠山から◆長野県小布施での挑戦◆料理学校に戻ったころ◆「おいしそうに見えない」と言われて◆天然自然のおいしさを知らなかったショック◆「家庭料理は民藝だ」という大発見◆季節を知りたい、素材を知りたい◆憧れの田中一光さんに持ち込んだ写真素材◆料理学校の指導要綱を作成する◆料理学校の閉校というXデイ◆おいしいもの研究所をつくる◆おいしいものがおいしくなくなる理由◆うまい漬物をつける人は信用できる◆師匠の雲田さんの庭◆建築家 坂茂を訪ねる◆アトリエ兼自宅を建てる◆父から引き継いだ『おかずのクッキング』◆番組に鍛えられる◆マラソンで十歳若返る◆日本の家庭料理独習書◆早稲田大学「食の文化研究会」を主宰する◆和食の百科事典を作るハードワーク◆祝いの料理◆一汁一菜でよいという提案◆味噌汁は何を入れてもいい◆健康は後からついてくる。一汁一菜を信じてください。
料理をなめてはいけない

インタビュー/対談/エッセイ

「一汁一菜」で幸せになって欲しい

土井善晴

 やっと本が出ることになりました。『一汁一菜でよいと至るまで』という、初めての新書です。
 この「」で2018年の11月から、一年以上にわたって連載した文章をまとめて、加筆して、書き直して、削って、また加えて、と、何度も試行錯誤したものです。連載当初から、拙い私の文章を楽しみにしてくださっていた方がいらして、その上、「いつ本になるのか」という問い合わせのお電話を何本も頂戴した、と担当の編集者さんから聞きました。本当に、ありがたいことです。そういう方の顔が浮かんで、頑張れました。
 連載の当初は、毎月の締め切りに間に合わせるのに精一杯で、連載原稿を書くことそれ自体が挑戦でした。それをまとめるというのですから、さらなる大きな挑戦です。そもそも、連載を始めるにあたり、担当の方に言われました。
 ――『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)で書いたような、ある意味で、料理研究家としての自らの首を絞めるであろう「提案」をする、土井さんのような奇特な料理研究家がなぜ誕生したのか、ご自分のことを書いてみてください。
 言われてみれば、料理研究家の父親を持ち、料理の道を歩むことは十代の頃には志していました。とはいえ、あまりにも何もできない自分がそこにはいて、スイスやフランスへ武者修行、帰国時には神戸のフレンチで、そして自分に足りない日本料理の現場「味吉兆」で仕事しました。その後父の料理学校を手伝い、教壇に立ちましたが、修業時代に出会った素晴らしい人、技、美しいもの、その全てを伝えるのは難しいことでした。
 そこで大きな壁にぶち当たるのです。プロの料理と家庭料理の違いをどう考えるべきか。その後、悩みに悩みました。とにかく手足を動かして、会うべき人に会って、たくさん話して考えて、とやってみるしかなかった。父、土井勝は、「善晴は料理しかできないからね」と言いましたが、その通りで、今もそれは変わらないのです。
 1957年生まれの私は、そうして、料理のことばかりに携わる人生を過ごしてきました。それをまとめたのがこの新書です。どうして「一汁一菜」というスタイル、思想に至ったのか、その思考の流れをまとめる結果になりました。連載の企画が出てから五年、「一汁一菜」を最も必要とする、働く世代が読む新書という形になり、嬉しく思っています。簡単に、当たり前に、人生を豊かにする「一汁一菜」に、難しいことは何もありません。それに「失敗」ということもありません。その日の挑戦の結果が伴わなかった、というだけ。誰もが成長途中ですから、大丈夫。
 料理という行為、それを日常にする「一汁一菜」というスタイルを武器にして、幸せになってください。それが私の願いです。

(どい・よしはる 料理研究家)
波 2022年6月号より

薀蓄倉庫

料理に失敗なんて、ない。

 父、土井勝さんが元祖となったたらこスパゲティ。フランスの「一汁一菜」は野菜スープとパンとチーズ、スープは毎日水で煮る。修業した味吉兆での賄いは、その後テレビ番組で教えた際にも大評判となった「たまねぎのけったん」。はっきり言って、うまい漬物をつける人は信用できる。忘れずにね、味噌汁は何を入れてもいい!
 料理研究家、土井善晴さんが「一汁一菜」という日常のスタイルでもある「思想」にたどりつくまでに出会った、魅力的な人や食。すべてが、料理人生に活きていきます。料理で失敗だと思うこと、あると思います。でも、それを「失敗」に終わらせてはもったいない。いくつになっても、成長していると思えばよいのです。

掲載:2022年5月25日

担当編集者のひとこと

5年間、発酵させた1冊です。

「一汁一菜でよい」という、家庭料理における斬新なスタイルの提案は、毎日の料理にプレッシャーを感じる人たちにとって大きな励ましとなりました。『一汁一菜でよいという提案』(新潮文庫)はロングセラーになっています。根源的で画期的なこの「提案は家庭料理に革命的な変化をもたらしたといえます。それなら、そこに至るまでの土井さんの半生と思考の過程とは、どのようなものだったのか。そんな疑問から、企画が生まれたのはなんと5年前のこと。まず、2018年の11月から月刊誌「波」で1年以上にわたり連載をいただきました。その後も加筆して、修正して、また直して、という試行錯誤を経て、やっとまとまったのが『一汁一菜でよいと至るまで』(新潮新書)です。発酵期間は充分、土井先生の言葉が見事に熟成し、味わい深いものになりました。
 具沢山の味噌汁、ご飯、そしてお漬物があれば大丈夫。そんな「一汁一菜」に至るまでの修業、出会い、発見、迷いの数々。テレビでおなじみの笑顔にこめられた、料理への真摯な思いが、土井さん自身の足跡を辿ることで見えてきます。料理人として、その後は、料理研究家として、積み重ねてきた料理人生を追体験して見てください。すべては「人を幸せにする料理」へと、つながっていくのです。

2022/05/25

著者プロフィール

土井善晴

ドイ・ヨシハル

1957(昭和32)年、大阪生れ。芦屋大学教育学部卒。スイス、フランス、大阪で料理を修業し、土井勝料理学校講師を経て1992(平成4)年、「おいしいもの研究所」を設立。十文字学園女子大学特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学技術研究センター客員研究員などを務め、「きょうの料理」(NHK)などに出演する。著書に『一汁一菜でよいという提案』、『料理と利他』(共著)、『くらしのための料理学』など多数。

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