
世界の知性が語る「特別な日本」
792円(税込)
発売日:2021/09/17
読み仮名 | セカイノチセイガカタルトクベツナニッポン |
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シリーズ名 | 新潮新書 |
装幀 | 新潮社装幀室/デザイン |
雑誌から生まれた本 | 波から生まれた本 |
発行形態 | 新書、電子書籍 |
判型 | 新潮新書 |
頁数 | 188ページ |
ISBN | 978-4-10-610924-9 |
C-CODE | 0220 |
整理番号 | 924 |
ジャンル | ノンフィクション |
定価 | 792円 |
電子書籍 価格 | 792円 |
電子書籍 配信開始日 | 2021/09/17 |
「日本は白人の優位性を吹き飛ばした」――リー・クアンユー。「私が範としたのはドストエフスキーと谷崎だ」――オルハン・パムク。近現代日本の栄光と挫折、そして達成。
近代日本は世界にとって如何なる存在だったのか。欧米列強を打ち負かした国であり、アジアを侵略した国であり、敗戦後に驚異的な復興を遂げた国。日本が歩んだ曲折の道のりは、他国の人々の精神にも大きな影響を与えてきた。リー・クアンユー、李登輝、ブトロス・ガリ、アンジェイ・ワイダ、オルハン・パムクら世界の政治家や知識人にインタビューし、それぞれの国が抱えた近代の葛藤と日本への特別な思いに迫る。
目次
序章 敗者を生きる
リー将軍と西郷/フォークナーの手紙/少年水兵の思い出/新人民軍ゲリラとの対話/ヒロシマとホロコースト
第一章 英雄であり、残忍な支配者 リー・クアンユー
不思議な愛着/一身にして二生を経る/「歴史のたき火」/「清潔都市」を生んだもの/福田赳夫と「銀の御所車」/「贈り物」のもう一つの意味
第二章 戦前日本を賛美する胸のうち 李登輝/張有忠
もう一人のリー/壁の中の自由とフェアな精神/「良い台湾」を目指して/「光華寮」裁判との関わり/台湾人に生まれた悲哀/台湾服を着た母との思い出
第三章 深い傷を負っても切れない絆 呉建民/王緝思/許智宏
中国の「大人」たち/「抵抗としての東洋」/保守=重臣リベラル/王緝思のおとなの思考/「下放」時の贈り物/知の空白を埋めた日本の友人
第四章 「東郷神話」と「日本の乙女」 ブトロス・ガリ
現場部隊が集う街/緒方貞子の実践的知性/国連改革と日本への期待/虎の尾を踏んだガリ/父と叔父の論争/外務省の反対を押し切って/国民的大詩人がうたった「日本の乙女」/共振した両国のナショナリズム
第五章 ドイツ占領下で、北斎の衝撃 アンジェイ・ワイダ
東海散士が見たポーランド/欧州の血の匂い/日本絵画との出会い/時代と国を超えて/クラクフの「マンガ」センター/初期作品のなかの北斎
第六章 南北戦争と明治維新という並行 ジョン・ダワー
被災者へのメッセージ/ヘンリー・ジェイムズと夏目漱石/並行する日本とアメリカの近代化/米西戦争と日清戦争/「近代化論」への反発/ダワーが発見した日本のモダニズム/江藤淳との交友/占領期検閲でも重なる立場
第七章 満洲と広島、建築への衝撃 レム・コールハース
戦争と芸術/プロジェクト・ジャパン/シンガポールとメタボリズム/丹下健三と満洲/タブラ・ラサとしての廃墟/マンハッタンの美との違い
第八章 アジア両端で西洋近代と対峙 オルハン・パムク
九・一一と三・一一/テロを予見していた『雪』/日本とトルコが互いに抱く幻想/『雪』、『闇の奥』、『こころ』/谷崎潤一郎の反西洋
終章 第三の敗戦を乗り越えて
明治国家と戦後国家/マハティールの落胆/消えた「日本モデル」/「第三の敗戦」が続く理由/戦死者を弔う
あとがき
薀蓄倉庫
東郷神社を参拝した国連事務総長
第6代国連事務総長を務めたエジプトのブトロス・ガリは、日本を訪れるたびに東郷神社を参拝したそうです。平和のための世界組織である国連の事務方トップが、なぜ日本の「軍神」を? じつは長年イギリス統治下にあったエジプトにおいて、日露戦争でロシアに勝利した東郷平八郎提督は英雄でした。反英闘争・独立運動の士で、後に外務大臣となるガリの叔父も「いつかはエジプトだってニッポンみたいになる。東郷が現れるんだ」と心の支えにしていたそうです。そうした記憶はガリにも引き継がれました。「日本を国連安保理常任理事国に」というガリの過剰ともいえる期待には、こうした背景があったのです。
掲載:2021年9月24日
著者プロフィール
会田弘継
アイダ・ヒロツグ
1951(昭和26)年生まれ。東京外国語大学卒業後、共同通信社でジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長を歴任。2021年9月現在は関西大学客員教授。アメリカ保守思想を研究。著書に『追跡・アメリカの思想家たち』『破綻するアメリカ』などがあるほか訳書も多数。
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