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終戦、恋愛、天災、終活……徹底取材で明らかになる、天皇の“心模様”。

天皇の憂鬱

奥野修司/著

864円(税込)

本の仕様

発売日:2019/03/15

読み仮名 テンノウノユウツ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
雑誌から生まれた本 週刊新潮から生まれた本
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 250ページ
ISBN 978-4-10-610805-1
C-CODE 0221
整理番号 805
ジャンル 政治・社会
定価 864円
電子書籍 価格 864円
電子書籍 配信開始日 2019/03/22

天皇は憂(うれ)えている。戦前も、戦後も、平成の世も――国民がなかなか知ることができないその内面に、大宅賞作家が徹底した取材で深く迫っていく。終戦の日、まだ少年だった今上天皇は何を思われたのか。美智子皇后との恋愛をどのように成就されたのか。いつから、なぜ被災地で跪(ひざまず)かれるようになったのか。「終活」はいつから始められたのか。皇室の家計簿はどうなっているのか。……柔らかな筆致でいま浮かび上がる皇室の「光と陰」。

著者プロフィール

奥野修司 オクノ・シュウジ

1948(昭和23)年、大阪府生まれ。ノンフィクション作家。立命館大卒。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞と大宅賞を受賞。『ねじれた絆』『皇太子誕生』『心にナイフをしのばせて』『魂でもいいから、そばにいて』『ゆかいな認知症』など、著作多数。

目次

まえがき――日本人にとって天皇とは何か
1 陛下はなぜひざまずかれるのか――天災と天皇
被災者と天皇陛下/平成は災害の時代/〈何もひざまずく必要はない〉/跪きながら語りかける/分刻みのスケジュール/いつから跪かれたのか/伊勢湾台風――最初のお見舞い/お見舞いは天皇のご意志/熊本地震――元侍従との再会/陛下からの「ありがとう」/東日本大震災――超人的な活動/生前退位――「上皇」になられても/天皇の憂鬱
2 天皇はいつから「終活」を始められたのか――「生前退位」秘録
「生前退位」報道の衝撃/退位のご意向はいつから?/ホルモン療法の影響/天皇と終活――「死すべき定め」のご受容/同窓会に出かけられる理由/安倍政権との距離/「生前退位」前夜
3 なぜ軽井沢を深く愛されるのか――美智子妃、交流の記
本当に自由になれる土地/辻邦生との交流/「武」ではなく学問/部屋に上がってお茶を/皇室を支えたクエーカー人脈/正田邸との別れの歌
4 終戦の日をどう迎えられたか――天皇皇后とあの戦争
「慰霊の旅」の原点/終戦の日の天皇の夕食/「先の大戦」が終わった日/原爆で亡くなった「美智子妃の親族」/沖縄について深く学ぶ/皇太子時代のノート/陛下が詠んだ琉歌の意味/祈りに込められた思い/失われていく記憶
5 家計簿の中身とは――天皇家と東宮家に見るふところ事情
情報公開でわかった「公」と「私」/事前調査に二度行った/天皇皇后の行幸啓なら/両陛下「了解済」の印/宮中晩餐会フルコースの費用/園遊会を彩る寿司と酒/手術の数は職員より少ない/海外には「宮内庁病院」はない/「新電力」も利用/“ねじれ”をどうするのか
6 なぜ恋愛は成就されたのか――美智子妃、密会のとき
母の死/「美智子さまが泣いていた」/「お母さまを、お守りください」/「美智子妃いじめ」の中で/お忍びで正田家に/軽井沢がいちばんの楽しみ/流産後の葉山ご静養/洗礼を受けた母・富美子
あとがき

インタビュー/対談/エッセイ

天皇陛下の心に秘められた思い

奥野修司

 もうすぐ私は三代を生きることになる。昭和、平成、そして未だ知らずの御代みよだ。私が幼い頃にはまだ明治生まれの人はたくさんいて、なんだか骨董品のように見えたものだ。自分もまさかそんな大先輩と同じだけ生きるとは思ってもみなかったのに、そのまさかが現実になった。でも、長く生きることは、悪いことばかりではない。見えなかったものがよく見えてくる。『天皇の憂鬱』も、そんなことを思いつつ書かせていただいた。
 本書は、平成の御代が変わるからと、慌てて書いたわけではない。昭和から平成になった時から「おやっ」と思ったことを、一人の国民の視点から取材をしてきたものだ。
 とりわけ昭和生まれの私を驚かせたのは、天皇陛下が一般人である被災者の前で跪かれたことだ。なぜ跪かれたのか。私には不思議でしかたがなかった。あるいは、日本が戦争に負けたとき、天皇は、皇后はどうされていたのか。御用邸があるわけでもないのに、なぜ毎年夏になると軽井沢に行かれるのか。「生前退位」は天皇の“終活”ではないのか……。天皇は生まれながらに天皇だが、象徴天皇はならんとしてなるものであることを考えれば、これらの疑問はいずれも平成の天皇が築きあげた象徴天皇像に繋がってくる。
 取材とは、一次情報に近づけるかどうかがカギになるが、天皇に関してはまず不可能だ。こちらから質問できないからである。そうなると、できるだけ天皇皇后のおそばにいる方に聞くしかない。つまり侍従長や侍従職、ご学友などだが、この方たちからどれだけ話を聞けるか、にかかっている。
 たとえば、天皇皇后の御成婚に関しては、たまたま私が、戦前から正田家に仕えていた方と知り合ったことがきっかけだった。その人物とは二十年近い交流だったのに、両陛下についてひと言も語ったことがなかった。それが死期を悟られたのか、亡くなる数年前に呼ばれ、「聞きたいことがあったら……」と言われた。ずいぶん昔に「(美智子)妃殿下の母娘の絆について聞かせてほしい」と尋ねたことを覚えていたのだろうか。こうして書き上げたのが「なぜ恋愛は成就されたのか――美智子妃、密会のとき」である。
 本書は、いずれも雑誌で発表したものに大幅な加筆を施したものである。ただ、パーツだけでは見えなかった全体像が、組み合わさることで見えることがあるように、雑誌に書いた時には見えなかったことだが、こうして一冊の本になることで鮮やかに浮かび上がってくるものがある。
 たとえば、天皇は象徴天皇にならんとして、すでに皇太子時代から努力をされていたことがわかったのもその一つだ。だが、その象徴天皇像が完璧すぎたゆえに、新天皇も宮内庁もむずかしい判断を迫られることになるとは皮肉である。

(おくの・しゅうじ ノンフィクション作家)
波 2019年4月号より

担当編集者のひとこと

優しい眼差しと柔らかな筆致で本質を衝くノンフィクション作家

 著者の奥野修司さんは、ジャーナリズム、医療、皇室、事件、現代史、人間発掘、大震災など多彩なテーマを手掛けられ、多くの作品を著されてきました。
 奥野さんは、10年以上も一貫して、皇室にまつわる取材を行ってきました。
 今上天皇の「即位の礼」から5日後に、長崎の雲仙・普賢岳の噴火が起きます。
 その後も、阪神・淡路大震災、東日本大震災など、未曾有の天災が続き、それら被災地を訪れる中で、天皇陛下はどのようにお見舞いの形を変えていかれたのか。
 また、病魔と闘われながらも、精力的に公務を続けられる中で、「生前退位」を決断された背景には、どのような思いがあったのか。
 さらに天皇に即位される前、美智子妃との恋愛はどう成就されたのか……など。
 以下のような6つの視点から、長期にわたる取材のもと、天皇陛下の「心模様」に迫ったルポを編んだのが、『天皇の憂鬱』です。

 1 陛下はなぜ跪かれるのか――天災と天皇
 2 天皇はいつから「終活」を始められたのか――「生前退位」秘録
 3 なぜ軽井沢を深く愛されるのか――美智子妃、交流の記
 4 終戦の日をどう迎えられたか――天皇皇后とあの戦争
 5 家計簿の中身とは――天皇家と東宮家に見る懐事情
 6 なぜ恋愛は成就されたのか――美智子妃、密会のとき
                          【目次より】

 皇族や宮内庁の関係者、ご学友、親交のあった人々などの貴重な当事者証言から、ときには感動的な秘話、ときには驚愕の逸話を紹介しながら、天皇陛下の内面を浮き上がらせています。
 奥野さんならではの優しい眼差しと柔らかな筆致で本質を活写した、渾身のノンフィクションとなっています。
 ぜひご一読ください。

2019/03/25

蘊蓄倉庫

天皇と美智子皇后の恋愛成就

 今上天皇(当時・皇太子)と美智子皇后(当時・正田美智子さん)のご成婚は、昭和34年4月10日でした。
 皇太子の「お妃選び」が本格的に始まったのは昭和30年秋。旧皇族、旧華族から約300人がリストアップされたといわれています。
 昭和32年夏の軽井沢で、皇太子と聖心女子大を卒業したばかりの正田美智子さんは、テニスのダブルスで対戦したことで出会いました。皇太子は負けましたが、意外にも嬉しそうだったそうです。しかし、このとき、美智子さんは、将来、結婚するなどとは考えてもいなかったのです。
 翌33年、皇太子のご学友が開いたダンス・パーティで、ラストダンスの相手に、皇太子は美智子さんを選びました。これはお妃候補としての兆しであったともいわれます。
 美智子さんの父も母も、皇太子との縁談に「あり得ない話」として難色を示し、どうにか回避しようと努めましたが、東宮参与の小泉信三をはじめ宮内庁関係者は、正田家の説得にあたりました。
 美智子さんは事態を察して、海外への旅に出てしまうのです。
 しかし、美智子さんの両親は小泉や東宮侍従らに説得され、結婚を娘の判断に任せることになったそうです。
 皇太子の熱意と正田家の反対……相反する思いの果てに、この「世紀の恋愛」は成就することになります。
 当時は多くの報道がなされましたが、いまや知らない世代も多いことでしょう。
 この恋愛成就のいきさつは、本書で詳述されています。

掲載:2019年3月25日

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