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戦後史の解放II 自主独立とは何か 後編―冷戦開始から講和条約まで―

細谷雄一/著

1,430円(税込)

発売日:2018/07/27

書誌情報

読み仮名 センゴシノカイホウ2ジシュドクリツトハナニカコウヘンレイセンカイシカラコウワジョウヤクマデ
シリーズ名 新潮選書
装幀 駒井哲郎/シンボルマーク、新潮社装幀室/装幀
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 286ページ
ISBN 978-4-10-603830-3
C-CODE 0331
ジャンル 日本史
定価 1,430円
電子書籍 価格 1,144円
電子書籍 配信開始日 2019/01/11

「国のかたち」を決めたのは誰か?

憲法制定と講和条約――米ソ対立が深まる中、戦後日本の新しい「国のかたち」を巡り、近衛文麿、幣原喜重郎、芦田均、吉田茂、白洲次郎らが、マッカーサー、ホイットニー、ケナン、ダレスらと激しい駆け引きを繰り広げる。世界史と日本史を融合させた視点から、日本と国際社会の「ずれ」の根源に迫る歴史シリーズ第二弾。

目次
第4章 分断される世界
1 リアリズムの復権
不安が交錯する世界 ソ連の不安 アメリカの不安 グルーの懸念 急転する世界情勢
2 再編される世界秩序
勢力圏分割による平和 ロシアの膨張主義 イギリス帝国とロシア帝国 スターリン演説の衝撃 「鉄のカーテン」演説の余波 東アジアの地殻変動 日本の退却 イギリス帝国のアジア イギリスの帝国防衛 イギリスの対日占領政策 若きイギリス人の経験 マッカーサーとガスコイン
3 ジョージ・ケナンと日本
ケナンのリアリズム 「長文電報」の衝撃 「確固として注意深い封じ込め」 世界における「五つの拠点」 ドイツと日本 日本の戦略的価値 新しい戦略の胎動 マッカーサーとケナン 対日占領政策の転換 ケナンの見た日本
第5章 国際国家日本の誕生
1 吉田茂と新生日本
開花した民主主義 鳩山一郎とウィロビー 「戦争で負けて外交で勝った歴史」 娘との散歩 吉田茂の首相就任 新憲法の公布 国際主義者吉田茂
2 芦田均の国際感覚
中道左派政権の成立 リベラリストの矜恃 明治憲法から日本国憲法へ 芦田修正と自衛権の思想 芦田修正をめぐる混乱 「芦田メモ」とアメリカとの提携
3 吉田茂と政治の保守化
戦後史の転換 アメリカの方針転換 新しい政治の始動 総選挙での勝利 吉田茂の「非武装国家」論
4 冷戦のなかの日本
アジア冷戦と二つの危機 中国問題の重力 対日講和への動き イギリスの勢力均衡観 「太平洋協定」という構想 アチソンの憂鬱 NSC四八/一と戦略の転換 国際情勢のなかの対日講和 ダレスの登場
5 平和という蜃気楼
戦争への嫌悪感 吉野源三郎と「世界」 思想から運動へ 平和問題談話会 丸山眞男の平和思想 平和主義の矛盾 「いままで勉強していなかった」
6 講和会議への道
二つの要望 吉田茂の密使 池田蔵相の渡米 東アジアの勢力均衡 ダレスの極東視察 東京におけるダレス 吉田=ダレス会談 朝鮮戦争の勃発 国連軍と共産主義圏 サンフランシスコへ向けて 「太平洋協定」の挫折 再軍備への道 吉田茂の宿題 マッカーサーの退場
終章 サンフランシスコからの旅立ち
和解の条約 「戦争犯罪という嘘」 「拘束と選択」のなかの自主独立 サンフランシスコへの旅 サンフランシスコ講和会議 吉田首相の受諾演説 二つの条約の調印 予期していなかった歓迎 愛国者の独立心 国際環境と日本の針路 戦後日本の自主独立
おわりに

関連年表

書評

「国際主義」に生きた日本人たち

篠田英朗

 鮮やかだ。こういう爽やかな政治史を書いてみたい、と素直に思う。
 国際的な視点から、日本史を見る。素朴だが、贅沢な要請だ。果たして本書より以前に、この要請を、これほど見事に満たしてくれた書物があったか。見事な労作である。
 本書は、細谷による「戦後史の解放」というシリーズの「二巻目」の「前編」と「後編」である。このシリーズの構成は、いささか複雑になってきている。戦前を扱った一巻から始まり、敗戦から憲法制定までの時代を扱った「二巻前編」をへて、三冊目の「二巻後編」で冷戦下のサンフランシスコ講和条約の時点にたどり着く。この複雑な構成は、しかし細谷が、斬新な歴史書を書いていることの証しでもある。
 細谷は、国際政治史を専門とする。その細谷が、なぜ日本政治史の著作シリーズを刊行しているのか? 答えは簡単である。細谷は、国際政治史家でなければ書けない日本政治史を、書いているのだ。
 このシリーズのテーマは明確だ。国際政治史の中で、日本政治史を描き出す、ということである。
 日本の歴史が国際社会の歴史の一部として存在していることは、自明だ。世界大戦の前後の時期となれば、特にそれが当てはまるはずだ。
 だが実際には、国際政治史の中の日本政治史を描き出すことは、容易ではない。数多くの人々が、日本国内の政治状況に引きずられてしまい、曇り眼鏡で国際社会を見てしまう誘惑に惑わされてきた。あるいは、日本の内情を看過して、平板な国際政治史を書く陥穽にはまりこんできた。
 しかし、細谷は、驚くべき程に広範な国際政治史に関する知識と、熱情に満ちた日本政治史への洞察とを、鮮やかに結合させる。そして見事なまでに美しい、国際政治史の中の日本政治史を、紡ぎだす。
 要領よく、バランス感覚を持ち、日本占領期や、冷戦勃発期の国際情勢を具体的に描写していく筆致は、さすがである。ただしそこでさらにこの労作を際立たせるのは、やはり細谷の人間への深い関心であろう。
 細谷の語り口は、いつもながらに滑らかだ。読者は、流れるように展開する五〇〇頁以上の「前編」「後編」を、一気に読了するだろう。しかしもちろん、その滑らかさは、細谷が何の苦労もなく本書を書き上げたことを、意味しない。「おわりに」で語られている執筆の苦労は、嘘ではないだろう。苦闘しながら、細谷は、何度も新潮社の宿泊施設に泊まったという。しかし細谷は、その「戦後史の世界に没頭する日」を「至福の時間」と振り返る。
「前編」の「はじめに」は、1941年生まれの坂本九のエピソードで始まり、「後編」の「おわりに」は、吉田茂、白洲次郎、近衛文麿の旧邸宅への訪問のエピソードで終わる。本書の中で、細谷の熱い眼差しは、さらに芦田均、幣原喜重郎らにも、向けられる。
 歴史の節目で、苦悶しながらも、国際社会の中で生きる日本を見つめ、決断してきた日本人たちを、細谷は、豊かな筆致で語り続ける。あたかも彼らが旧知の友人であるかのように優しく、語り続ける。そして「国際主義」に生きた日本人たちを通じて、細谷は、運命という大海の荒波に翻弄されながら、なお気概を持って生き抜いていこうとする日本人の姿を明らかにする。
 第二巻を通じて細谷が特に光をあてるのは、歴史の転換期に決定的な役割を演じた日本の「国際主義者」たちだ。たとえば「前編」では、ダイナミックに日本国憲法制定をめぐる人間模様を描き出している。「押しつけ憲法」論や「八月革命」論のような抽象的な物語にそって憲法を語っていくのではなく、日本の「国際主義者」たちの国際政治への洞察をふまえた判断の産物として憲法を語っていく手法は、圧巻だ。
「世界史」と「日本史」を分断して教える日本の学校教育の弊害は、「内向き」日本の国際的視野の欠如に、つながっている。細谷の「戦後史の解放」は、そんな視野の狭い歴史観にとらわれている日本人を、国際政治史の中の日本政治史へと、劇的なやり方で「解放」していく書物だ。

(しのだ・ひであき 東京外国語大学教授)
波 2018年8月号より

著者プロフィール

細谷雄一

ホソヤ・ユウイチ

1971年、千葉県生まれ。慶應義塾大学法学部教授。立教大学法学部卒業。英国バーミンガム大学大学院国際関係学修士号取得。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻博士課程修了。博士(法学)。北海道大学専任講師などを経て、現職。主な著書に、『戦後国際秩序とイギリス外交』(サントリー学芸賞)、『倫理的な戦争』(読売・吉野作造賞)、『外交』、『国際秩序』、『安保論争』、『迷走するイギリス』、『戦後史の解放I 歴史認識とは何か』など。

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