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モテるかもしれない。

カレー沢薫/著

1,430円(税込)

発売日:2021/04/28

  • 書籍

あいつらばかり、なぜモテる? 斜め上をゆく全人類愛され攻略法。

モテたいとは言いづらいが、他人のモテっぷりは気になる。嫉妬しちゃうから直視したくないけれど、とにかくモテを見つめてみよう。もしかしたらモテるようになるかもしれないし。EXILEから西野カナ、果ては安室透にバーフバリ、乙女ゲームやAV男優まで。モテに挫折した人気コラムニストのカレー沢薫、満を持してのモテ論。

目次
はじめに
第1回 モテの道のプロに学ぶ
第2回 小中学生からモテをやり直したい
第3回 EXILEに学ぼう
第4回 琥珀さんに学ぼう
第5回 バーフバリに学ぼう
第6回 安室透に学ぼう
第7回 売れっ子AV男優に学ぼう
第8回 ジブリに出てくる男達に学ぼう
第9回 乙女ゲームに学べるモテもあるかもしれない
第10回 西野カナに学ぼう
第11回 婚活におけるモテを知りたい
第12回 いつまでもオタクがモテぬと思うなよ
第13回 “面倒くさい”のにモテる者たち
第14回 前澤友作氏に学ぶ「モテ」
第15回 匿名でもモテたい
おわりに

書誌情報

読み仮名 モテルカモシレナイ
装幀 カレー沢薫/装画、新潮社装幀室/装幀
雑誌から生まれた本 yom yomから生まれた本
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-353971-1
C-CODE 0095
ジャンル 文学・評論
定価 1,430円

書評

モテと非モテの分断を超えてゆけ

朱野帰子

 モテたい、などという煩悩は忘れて生きてきたはずだった。なのに、本書を開いてすぐ目に入った「自分はモテを手に入れられなかった」という言葉にひどく動揺した。
 本書の著者であり、漫画家として、エッセイストとして、さらにツイッタラーとして、人気が爆上がり中のカレー沢薫氏はこう書いている。
「現在では自分がモテようとすることはもちろん、モテている人間、モテる技術、果てはモテようとあがいているモテない人間すら眩しくて見ることができない」
 私はすでに中年だ。人間ドックで悪玉コレステロールに気をつけてくださいと言われたり、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:II」最終作の上映前に膀胱を軽くしたりしている四十一歳だ。結婚した時に思ったのは「これで恋愛しなくてすむ」だし、不倫報道を見るたびに「なぜわざわざ疲れることをするのか」と思ったりもしている。なのに。
「モテ」という二文字を見るたび感じるこの激しい焦りや不安は何であろう。
 お前はモテか? それとも非モテか?
 この二択を社会から二十四時間突きつけられている気がしてならないのは私だけではないだろう。そして、自分が「非モテ」であると答える人が世の中には多い。
 では、誰がモテているのか。「モテ」とは何なのか。
 本書はできれば直視したくない問いにカレー沢薫氏(と担当編集)が勇敢に挑んだ日々の記録である。彼らがめざすのは「モテ」への呪縛からの解放である。そして、そのことによって、逆に「モテるかもしれない」という淡い希望も抱いている。
 まずカレー沢氏が冒頭で挑むことを宣言したのは西野カナである。理由はモテそうな女が好きそうだから。だが「レベルが高すぎる」という理由で一旦回避し、まずは少し低い山から登ることになる。
『ルールズ 理想の男性と結婚するための35の法則』、女子中学生向けのファッション誌「nicola(ニコラ)」、少女漫画雑誌「ちゃお」の付録の手帳など、モテ初心者へのモテ指南を強く打ち出している書を彼らは紐解いていく。そしてモテとは「計算・努力・優勝」なのであるという結論にわずか38ページ目でたどり着いてしまう。
 …………。
 39ページ目から、彼らは路線を変更する。
 EXILE、バーフバリ、安室透、売れっ子AV男優、ジブリに出てくる男たち、乙女ゲーに出てくるイケメン二次元キャラクターなど、「モテ」を体現している異性たちから学びを得ようとしはじめる。
 自分たちが「モテるかもしれない」という希望から逃げ始めたのである。しかし、私はその逃避行に安息を感じていた。もういいじゃないか、モテなくたって、どうせ努力したってモテないよ、誰かをモテさせる側にいるほうが楽なんだよ、と思い始めた。ファミレスで仕事をしていると隣でオタク女子たちが推しキャラを巡って激論を交わしていることがあるが、そこに参加させてもらえたような豊かな時間だった。だが、
「もうお気づきの方もいるかもしれないが、私はカナと向き合うことを先延ばしにし続けていた。いや、恐れていたと言っても過言ではない」
 カレー沢氏(と担当編集)は実に連載六回分にも及んだ逃避行から戻ってくる。そして西野カナと真正面から向かい合う。本書で最も私の胸が熱くなった瞬間である。
 突然だが、私の妹はめちゃくちゃモテる。生まれ落ちた瞬間から親戚一同にモテたし、幼稚園、小学校、中学校とモテまくっていた。遠足のバスでは女子たちが妹の隣の席を取り合ったし、「お前の妹、可愛いよな」と校舎の廊下ですれ違った男子に私が告白されもした(あまりに妹が眩しすぎて本人には言えなかったらしい)。
 なぜそんなにモテるのか、妹に尋ねてみたことはないが、LINEで「西野カナ好き?」と聞いてみたところ、十五分ほどして「すごい好きってわけじゃないけど、好きだよー☺︎」と返ってきた。……やっぱり!!!!
 行け、カレー沢氏。西野カナと向かい合ってきてくれ。
 西野カナの曲を聴き、西野カナの評価をネットで調べ、カレー沢氏は彼女の曲が「モテソング」であるという仮説の検証に力を注ぐ。
 世界の分断を埋める方法はただ一つ、相手を知ることなのである。
 そして、その検証結果は意外なものだった。妹がモテていたのは西野カナのせいではないらしい(最初からわかっていたような気もするが)。
 だったら「モテ」とはいったい何なのか。大勢の人にチヤホヤされたい好かれたいというこの願いを遂げるには、どう生きたらよいのか。ラストでカレー沢氏はその切実な問いに答えてくれる。
「モテ」と逃げずに向かい合った者しか到達できない結論がそこにはある。

(あけの・かえるこ 作家)
波 2021年5月号より
単行本刊行時掲載

著者プロフィール

カレー沢薫

カレーザワ・カオル

1982(昭和57)年生れ。漫画家、コラムニスト。2009(平成21)年に『クレムリン』でデビュー。『アンモラル・カスタマイズZ』は2014年、文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品に突如選出され、話題騒然となる。さらに『ひとりでしにたい』が2021(令和3)年、同芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した。主な漫画作品に『猫工船』『きみにかわれるまえに』、エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』『非リア王』『ひきこもりグルメ紀行』『カレー沢薫のワクワク人生相談』などがある。

判型違い(文庫)

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