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性的マイノリティのアイデンティティはどんどん細分化されてゆく。細分化された「カテゴリ」のどこかに属するべく、いつの間にか自分が「分類」されている。(誌面のことば――小佐野彈「僕の彼氏は何者ですか?」より)

yom yom vol.56 2019年6月号

(隔月1、3、5、7、9、11月第三金曜日発行)

756円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2019/05/17

発売日 2019/05/17
JANコード F80328
価格 756円(税込)

◆NEW SERIES
浅原ナオト「今夜、もし僕が死ななければ」 画:新井陽次郎
「人の死期が見える」少年に出会って、残された時間が動き出す――。『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』著者による新連載スタート!

小松エメル「銀座ともしび探偵社」 画:しきみ
近代化の狭間に取り残された「不思議」を求め街を彷徨う小山田は、水夫に言われるまま、舟に乗せられ――。

柏井 壽「祇園白川 小堀商店 いのちのレシピ」 画:中川 学
休暇で和歌山を訪れた「小堀商店」の面々は、思いもかけぬ郷土料理に出会う。大好評、京都グルメ小説。新章開幕!

◆SPECIAL ARTICLE
愚者と賢者のネット平成史
神田桂一  「A面 ネットの産声と賢者たちの夜明け」
中川淳一郎 「B面 ネットの暗黒と炎上を愉しむ愚者」

エブリスタ × yom yom
「yom yom 短編小説コンテスト」結果発表
■大賞 井川林檎「もう少し後で」
■準大賞 下永聖高「ハングリーエイプ(抄)」
■準大賞 霜月りつ「夏のしらべ 子育て若様奮闘帖(抄)」
■入賞作品紹介

◆SERIES
最果タヒ「暗闇くん/暗闇くん 別邸」[第13回]
ポニーテールに絡まりながら読む詩/冷え性の詩/春の辞表/入社3年目/ストロー

吉川トリコ「ベルサイユのゆり マリー・アントワネットの花籠 Colorés」[第2回] 歴史監修:川島ルミ子 画:斉木久美子
大反響を呼んだ『マリー・アントワネットの日記』、待望のスピンオフ!

寺地はるな「ここにない希望」[第4回] 画:夜久かおり
会社の先輩が失踪して、1年が経つ。誰からも嫌われず飄々としているあいつが、俺は心底嫌いだった。

馳 星周「極夜」[第2回] 画:ケッソクヒデキ
渋谷の租界化をもくろむ台湾人たちは、その地に凱旋門を建てる――。

小林勇貴「殺界団地」[第3回] 画:ねとろもりこん
ウチの名前は吉寝リンダ。特技はリスカ♡ DVパパは消え、弟は自殺。ママは信じた男に殺された!

武内 涼「阿修羅草紙」[第3回] 画:加藤木麻莉
――何故あの女が気になる。伊賀忍者・名張ノ音無は、すがるの抜けるような肌の白さを思い出していた。

武田綾乃「君と漕ぐ2」[第3回] 画:おとないちあき
部のムードメーカー、舞奈は勉強が苦手。なのに、オリンピックのカヌー種目のボランティア講習を受けることに!

早坂 吝「犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー」[第2回] 画:吉田ヨシツギ
三つ子の右龍のうち、行政が遺体として発見された。司法もこの島にいるという。一行は、彼の家を訪ねることに――。

結城充考「アブソルート・コールド」[第4回] 画:與座 巧
人工知能技術部長の頭部が、尾藤の目の前で吹き飛んだ。コチと未来の接触現場を謎の狙撃手の銃弾が襲う。細菌テロの演出者の影が、刻一刻と濃くなって行く。

乾 緑郎「機巧のイヴ3 如洲望郷篇」[第5回] 画:獅子猿
震災の混沌の中、お夕を見つけ出した林田。「後から必ず行く」――胸騒ぎを覚えながらも、彼女を先に送り出す。

門井慶喜「地中の星」[第9回] 画:山田ケンジ
胴八はなぜ若い勝治を目のかたきにするのか。ふたりの職人頭の反目を解こうと竹五郎が腐心するなか、現場ではとんでもない事故が起こる。

◆COMIC
ふみふみこ「愛と呪い」[第12回]
引きこもりから抜け出した愛子の口癖は、「がんばれ、がんばれ」。

◆WORLD TRENDS
土橋章宏「トレンドを、読む読む。」
「ニンジャ」の魅力を再発見!

◆CULTURE & COLUMN
荻上チキ「理不尽と闘う武器を持て!」[最終回] 構成:山本菜々子
日々感じる「ちょっと苦しい」「なんか変」をやり過ごすな。理不尽に立ち向かうための僕らの武器とは。

今 祥枝「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」[第3回]
ポリコレは娯楽を窮屈なものになんてしない。365日ドラマと映画を見ながら考える。

小佐野 彈「境界線に置くことば」
僕の彼氏は何者ですか?

平原 卓「知のバトン 哲学者が考え、引き継いできたもの」[第4回]
「神の存在」「あの世」――現代社会で見られる、非合理的なものの再生。なぜ今、そうしたものへの憧れは復活したのか。論じるための原理はここにある。

カレー沢 薫「モテる技術(仮)」[第13回]
結婚しなくても幸せになれる時代に、それはそれとしてモテが知りたいのである。婚活回です!

ものすごい愛「午前一時のノスタルジア」
後悔と寄り添う

砂田麻美「世界のαに関するカルチャー時評」[第11回]
なぜ、いま『北の国から』なのか? ~興味はあるが、とても全話見返せないあなたへ~(後編)

渋谷直角「パルコにお店を出したくて」[第4回]
ついに「お店づくりプロジェクト」始動! ずばり、コンセプトは……ん? 南総里見八犬伝??

柳瀬博一「日本を創った道、国道16号線」[第4回]
日本の文明を規定したのは、全長約340キロの国道16号線である――『翔んで埼玉』に歴史教科書、消された関東史がここにある!

恒川光太郎「多摩川異聞録」[第5回]
江戸社会の人々にとって、死後の世界はごく鮮明で身近なイメージとともにあった。日野にて日常感溢れる輪廻転生譚と出会う。

執筆者紹介/編集後記

「そして、僕たちは舞台に立っている。」、
「東京デストロイ・マッピング」(新納 翔氏)、
「読みたい人、書きたい人のための、ミステリ超入門」(新井久幸氏)は本号休載です

編集長から

理性の内部に定位しつつ、割り切れない「外部」を眼差すこと

 もうずいぶん前のことですが、ある本について「アラフォーって自称するのは平気なのに、他人にそう呼ばれるとなぜか嫌」というような感じのキャッチコピーを書いたら「何が言いたいのかわからない」とこき下ろされたことがあって、実際コピーとしてどうなんだというのはありますが、いまだに着眼点は悪くなかったと思っています(恨みは絶対に忘れないタイプ)。

 つまりどういうことかと言いますと、「私は恨みは絶対に忘れないタイプ~」とは普通にひっかかりなく口にしつつ、誰かに「あなたは恨みは絶対に忘れないタイプ」とカテゴライズされると「は? ちげーし! 少なくとも違うとこあるし」と割り切れない気持ちになるということです。

 人は理性によって物事を捉え、分析し意味を細分化しカテゴリ分けの作業を続けることで、世界の姿や自分自身の姿をどうしても把握したい存在なのだと思います。そのこと自体が悪ではなく、人が古代から近・現代に至るまで工夫に工夫を重ねてきた一種の方法論であることは平原卓氏の連載「知のバトン 哲学者が考え、引き継いできたもの」の明らかにするところでありますが、同時に平原氏は、人は理性と認識の「外部」にある、分析し得ない非合理へと手を伸ばそうともすると記します。

 この分析→細分化→カテゴライズの欲望が、たとえば他者へと向けられるとき(他者から「私」へと向けられるとき)、欲望を向けられた側には耐えがたい息苦しさをもたらすこともあるでしょう。それがマイノリティへの視線と同調すれば、人の自由を削り取る巧妙な檻にもなりかねません(小佐野彈氏の「境界線に置くことば」をぜひ)。あるいはインターネットという、誰かがした分析の模倣にうってつけのツールを手にした我々は、メディアとの向き合い方を強く問われることにもなるでしょう(特集「愚者と賢者のネット平成史」、荻上チキ氏「理不尽と闘う武器を持て!」をぜひ)。

 繰り返しますが、「分析」そのものが悪ということではないのでしょう。大切なのは、あくまでも理性の内部に定位しつつ、割り切れない「外部」を眼差すことのように思います。今号の平原氏「知のバトン」を読みながら、そんなことを考えていました。あるいは、たとえば寺地はるなさんの連載小説「ここにない希望」を読みながら、しばしば似たようなことを感じています。分析への欲望と、分析からの逃避への欲望とが、ないまぜになった場所の物語と言いますか……。

 今号は『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』(NHKでドラマ化・放送中)の浅原ナオトさん「今夜、もし僕が死ななければ」が新連載小説としてスタートしました。小松エメルさん「銀座ともしび探偵社」、柏井壽さん「祇園白川 小堀商店 いのちのレシピ」は、既刊人気シリーズの第二弾。前記の特集「愚者と賢者のネット平成史」に加えて、小説投稿サイトエブリスタとのコラボ企画「エブリスタ×yom yom 短編小説コンテスト」の結果発表・受賞作も掲載です。どうぞじっくりとお楽しみください。

「yom yom」編集長 西村博一

次号予告

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雑誌から生まれた本

yom yomとは?

世界はこんなにも様々な可能性に満ちているから。

「yom yom」はそんな物語の囁きを、あなたがこっそり聞きに来る雑誌です。あなたと一緒に歩いてくれる、あなたのための物語が、見つかる場所になりたいのです。それでお気に入りを読み終えたら、「しょうがない。明日も生きていってやるさ」とでも思っていただければ幸せです。注目作家の小説も詩もコミックも……文芸の「イマココ」に必ず出会えるボリュームたっぷりの文芸誌です。