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粘り強く前に進む言葉のなんとたくさんあることよ。

yom yom vol.55 2019年4月号

(隔月1、3、5、7、9、11月第三金曜日発行)

756円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2019/03/15

発売日 2019/03/15
JANコード F80327
価格 756円(税込)

◆NEW SERIES
馳 星周「極夜」 画:ケッソクヒデキ
昭和二十一年、新宿。台湾人青年・楊偉民は闇に足を踏み入れる。『不夜城』前日譚。

吉川トリコ「ベルサイユのゆり マリー・アントワネットの花籠 Colorés」 歴史監修:川島ルミ子 画:斉木久美子
大反響を呼んだ『マリー・アントワネットの日記』、待望のスピンオフ!

早坂 吝「犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー」 画:吉田ヨシツギ
2018年ミステリーシーンを席巻した、探偵AIが戻ってきた! 今度の事件は国際謀略もの!?

◆CLOSE UP
[特別対談]
ふみふみこ×押見修造 「未来はない」と諦めた日から生きること
性、家族、時代。逃げられないものに傷つく苦しみから、私たちは自分をどう救うのか。
『愛と呪い』『血の轍』最新刊を刊行した二人が語る生き延び方――。

◆SERIES
朱野帰子「わたし、定時で帰ります。2 ブラック企業討入り篇」[最終回] 画:Minoru
ブラック過ぎるクライアントに疲れ果てた結衣。転職を考えたものの、晃太郎の過去を知り、戦場に戻る決意をするが――。

九螺ささら「きえもの」[最終回] 写真:餅井アンナ
短歌と散文が共鳴して、日常の中に非日常への扉を開く。

吉野万理子「トリカブトの残り香 忘霊トランクルーム2」[最終回] 画:中村至宏
お花の会にトリカブトを持参した西条さん、その企みとは――。記憶をめぐる青春ミステリ、完結編。

青柳碧人「猫河原家の人びと2」[最終回] 画:MITO(監修:uki)
殺しの現場に残された彼のサングラス。疑いを晴らすため、逃走、変装、決め手は南京玉すだれ!?

武田綾乃「君と漕ぐ2」[第2回] 画:おとないちあき
千帆の姪っ子、海美のカヌー体験に付きあう恵梨香と希衣。関東大会を控え、束の間の穏やかな時間が流れる。

寺地はるな「ここにない希望」[第3回] 画:夜久かおり
父のような夫にはなりたくなかった。妻の秘密には気づかないふりをしてきた。

小林勇貴「殺界団地」[第2回] 画:石川晃平
なあ、聞こえるか? 俺はあの日、お前に殺されたってよかったんだ。

武内 涼「阿修羅草紙」[第2回] 画:加藤木麻莉
唯一の支えであった父を喪い、復讐を誓う女志能便・すがる。賊の手掛かりは、朝廷と武家の陰謀渦巻く京都にあるという――。

最果タヒ「暗闇くん/暗闇くん 別邸」[第12回]
終電の電車の中で読むための詩/人生の2時/シロツメクサの冠/リスペクト/進級

門井慶喜「地中の星」[第8回] 画:山田ケンジ
掘った土をいかに搬出するか。竹五郎を悩ませ続けた難問を、奈良山勝治は一瞬で解決した。「この男、頭の出来が違う」。

乾 緑郎「機巧のイヴ3 如洲望郷篇」[第4回] 画:獅子猿
こんな日がずっと続けばいいのに――ナオミが初めて手にした安らかな日常。しかし、未曽有の事態が天府を襲う。

結城充考「アブソルート・コールド」[第3回] 画:與座 巧
遺体から密かに立方体を回収したコチ。だが来未は、その小さな事件を目撃していた。警官の身分を得た尾藤は、佐久間種苗の対応に不信感を強める――。

◆COMIC
ふみふみこ「愛と呪い」[第11回]
逃げても逃げても、逃げ切れない絶望の果てで……。

◆SPECIAL ARTICLE
生きづらい私のための人工知能[連続特集第2回]
松田雄馬「「自分好み」の情報の中で溺れないために」

◆WORLD TRENDS
三谷匠衡「トレンドを、読む読む。」
世界中に熱狂的なファン続出。「テラスハウス」が提示する新しい「リアリティ」の形。

◆CULTURE & COLUMN
今 祥枝「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」[第2回]
ポリコレは娯楽を窮屈なものになんてしない。365日ドラマと映画を見ながら考える。

平原 卓「知のバトン 哲学者が考え、引き継いできたもの」[第3回]
知の展開によって辿り着いた「壁」。私たちは外へ向かうべきか、それとも内へ戻るべきなのか――。

荻上チキ「理不尽と闘う武器を持て!」[第3回] 構成:山本菜々子
日々感じる「ちょっと苦しい」「なんか変」をやり過ごすな。理不尽に立ち向かうための僕らの武器とは。

トミヤマユキコ「世界のαに関するカルチャー時評」[第10回]
韓国フェミニズムからの熱い問いかけ。

清田隆之「境界線に置くことば」
「ここにいる自分」の矛盾と恋愛相談。

カレー沢 薫「モテる技術(仮)」[第12回]
モテたくてモテたくて震える。今こそ語るのだ、西野カナさんを――!

渋谷直角「パルコにお店を出したくて」[第3回]
伝説の経営者・増田通二氏を通じて見るパルコの真髄とは。そして、「お店づくりプロジェクト」の行方は……!?

柳瀬博一「日本を創った道、国道16号線」[第3回]
日本の文明を規定したのは、全長約340キロの国道16号線である――音楽の発信地は、ここにあり。ミュージックシーンを読む!

恒川光太郎「多摩川異聞録」[第4回]
武蔵国の中心部、府中。鎌倉街道に沿う古戦場は万騎の兵どもが夢の跡。

新納 翔「東京デストロイ・マッピング」[第8回] 写真:テキスト
高輪/八潮団地/多摩川河口。圧倒的な力が東京を概念化された秩序で塗り潰す。2020年に向けた再開発で消えてゆく、様々な街の「核」を捉える写真都市論。

永 拓実「午前一時のノスタルジア」
切実な悩みがないという切実な悩みが甘ったれているとわかっている。

新井久幸「読みたい人、書きたい人のための、ミステリ超入門」[第12回]
「ときめきメモリアル」は黒澤明の夢を見るか? ――世界の綻びを読者は好まない。

執筆者紹介/編集後記

*「そして、僕たちは舞台に立っている。」は本号休載です

編集長から

粘り強く前に進む言葉のなんとたくさんあることよ。

 この変化の激しい時代に、「十年ひと昔」はもう死語かもしれません。でも私たちの日常には、気付かなくとも過去の時間が静かに息づいているのでしょう。馳星周氏の新連載「極夜」は、名作『不夜城』の前日譚にあたります。時代は終戦直後、台湾人青年・楊偉民を取り巻く闇市での激しい価値観の衝突は、たとえば私たちが生きる上で何を信頼するのかといった部分に、強く結びついているのを実感します。

 新連載は他に二作。早坂吝氏「犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー」は、ミステリシーン注目の『探偵AIのリアル・ディープラーニング』シリーズ第二弾。吉川トリコ氏「ベルサイユのゆり マリー・アントワネットの花籠 Colorés」は、大反響を読んだ『マリー・アントワネットの日記』のスピンオフ、アントワネットの生涯に関わった女性たちの物語です。時代も国籍も身分も違う彼女たちに現代の女性たちから共感の声が寄せられる、まさに時間を超えた作品です。

 こうして目次を眺めていると、学生の頃にアルバイトをしていた店のオーナーに「小説なんて所詮ウソだろ。読んだって役に立たないだろ」と揶揄されたのを思い出します。いや、揶揄というのは私の拗け心による印象で、あれはたぶん揶揄ではなかった。オーナーは至極素直にそう考えていたのだと思います。

 当時は九〇年代の入り口で、まだバブルの真っ直ぐな力を疑わないオトナがほとんど(に見えて)、私ら真っ直ぐな何かを直視すると目が潰れる拗けた小僧は必然的にサブカル者へと育つわけです。サブカルと言えばそれはメタ。後に、他人を上からナナメに見るしか能がないポンコツになり果てる、忌まわしきメタ厨どもの爆誕です。

「平成とは被害妄想と誇大妄想の泥沼」と分析されれば、現実を恐がり「ここではないどこか」を夢想して、そこへ連れていってくれない誰か(誰だよ)に向けて恨みを撒き散らしてきた私らの罪は大きいよなと思うしかないです。でも一つだけ言い張らせてもらいたいのは、メタ厨の精神は本来、白黒はっきりしないものを排除しない。真っ直ぐなアプローチでは諦めたくなる問題を、上から横からナナメから「もっとしっかり捉えられる次元はないのか」と飽くなき努力を続けるものなのだ!

 平成がもうすぐ終わる今、この時代の好きなところも挙げたいのです。たとえば、上手くいかない現実を前にして、それこそ上から横からナナメから、「もっとなんとかできないか」と考え続ける人も増え続けたこと。一向に目の前に開けてくれない「ここではないどこか」であっても、その心の宙吊り状態に踏みとどまり、どこかを探し続ける人が必ずいること。インターネットやSNSから注ぎ込まれる大量の“意見”に気持ちを削られることもあるけれど、一人で遠吠えするしかなかった昭和にも戻りたいとは思いません。

 最新号の目次を眺めてゲラをひっくり返していたらもう、小説にせよエッセイにせよ論考にせよ、この真っ直ぐには進めない世の中を、それでも粘り強く前に進む言葉のなんとたくさんあることよ。そういう真面目で素晴らしい「平成最後のyom yom」を、お届けできて嬉しいです。

「yom yom」編集長 西村博一

次号予告

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雑誌から生まれた本

yom yomとは?

世界はこんなにも様々な可能性に満ちているから。

「yom yom」はそんな物語の囁きを、あなたがこっそり聞きに来る雑誌です。あなたと一緒に歩いてくれる、あなたのための物語が、見つかる場所になりたいのです。それでお気に入りを読み終えたら、「しょうがない。明日も生きていってやるさ」とでも思っていただければ幸せです。注目作家の小説も詩もコミックも……文芸の「イマココ」に必ず出会えるボリュームたっぷりの文芸誌です。