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これからもくり返し人間の内部に侵入しながら、あなたが思っている以上に、すでに私はあなたと混ざっているのだと、しつこく告知し続けてくるだろう。(誌面のことば―― 森田真生「計算と生命のあいだ」より)

yom yom vol.64 2020年10月号

(隔月1、3、5、7、9、11月第三金曜日発行)

770円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2020/09/18

発売日 2020/09/18
JANコード F80345
定価 770円(税込)

◆NEW!
馳 星周「眠らぬ王 極夜・第二部」[第1回] 画:ケッソクヒデキ
昭和三十一年、楊偉民が台湾から新宿に戻ってきた。歓楽街の覇権をめぐり、新たな血が流れる。緊迫と興奮の『不夜城』前史――。

早坂 吝「探偵AI3 四元館の殺人」[第1回] 画:吉田ヨシツギ
知能増幅連続殺人事件で以相に敗れた相以。光と影に分かれた双子AIの推理バトルが再び始まる。

長谷川純子「脳出血で倒れたひきこもり弟が憎いのか愛しいのかわかりません!」[第1回]
貧乏に馴染んでしまった母と、そのスネをかじる中年の弟。家族を、もうすぐ捨てるはずだったのに――。

◆CLOSE UP
ハマ・オカモト×橋爪駿輝「長く続けるために、好きなことをやる」[特別対談] 撮影:菊池 大
昨年デビュー10周年を迎えたハマ・オカモトと売れないバンドマンを主人公に小説を書いた橋爪駿輝。平成生まれのふたりが、今思うこととは。

演芸写真家 橘蓮二セレクション
次世代の新星たち[連続企画第2回] 文・写真:橘 蓮二
昔昔亭A太郎瀧川鯉八桂伸衛門
四半世紀にわたり噺家たちの写真を撮り続けた目で、これからの活躍が期待される若手をご紹介。今回は、落語芸術協会新真打ち。

◆SPECIAL STORY
南沙良×ごめん「頭の中の女の子たち」 文:南沙良 絵:ごめん
女優であり、本誌エッセイ「届かない手紙を書きたい」も人気の南沙良さんと、繊細な筆致で切り取られた切ない瞬間が共感を読んでいるイラストレーター・ごめんさんのコラボレーションが実現した。テーマは「頭の中の女の子」。南さんとごめんさん、それぞれの頭の中に存在する女の子たちが文章とイラストで浮びあがる。

伊藤朱里「幸福な母親」 画:山田 緑
長女は美しく、次女は賢い。三女は夢を叶え、四女は自由に生きている。四人の娘を育てた私にも、かつて思い描いた未来があった――。

◆SERIES
最果タヒ「森森花畑ぼく森森海/森森花畑ぼく森森海 雷雷雷」[第6回]
天文台/衛星/海み/緑の匂い/秒針

小佐野 彈「我とひとしき人しなければ」[第8回] 写真:Dan Osano
自身のセクシュアリティに気付いて以来、大きな秘密とともに生きてきた。それが霧散したとき、「僕」が感じたのは、自由やよろこびではなく……。

朱野帰子「わたし、定時で帰ります。 ライジング」[第3回] 写真:plainpicture/アフロ
生活残業問題を解決するために、給料アップを会社に提案しようと奮闘する結衣。しかし、部内に不穏な空気が漂い始め……。

中江有里「愛するということは」[第5回] 画:椋本サトコ
いったいどこで気付かれたのだろう――警察の事情聴取を受け、一時帰宅が許された里美。けど、あの子に、汐里に合わせる顔が、ない……。

加藤千恵「手の中の未来」[第3回] 画:LIE
ひと月ちかくアプリで連絡を取ってきた彼との初デート。私たちは、どれくらいお互いを知っているといえるのだろう。

燃え殻「これはただの夏」[第8回] 画:森 優 デザイン:熊谷菜生
どうせ逃げきれない、限りある自由と命。だとしたら、否定よりも工夫のほうが、人生には必要なのかもしれない――キミもボクもたくさんの嘘の結晶。

◆COMIC
磯谷友紀「ぬくとう君は主夫の人」[第5回]
「デキる男」にこだわってきたサラリーマン時代の先輩が、優太を呼び出した理由とは? 見栄っ張りな“俺たち”の思い込み――。

谷口菜津子「今夜すきやきだよ」[第6回]
恋愛脳でも相手の嫌な部分が見えないわけじゃないんだけど……。

◆WORLD TRENDS
丸山ゴンザレス「ドキュメント国連」[第2回]
国連への理解の浅さは、教育に原因があるのではないか。高校生はどのように国連を学ぶのか。受験世界史のスペシャリストに話を聞くと――。

福島香織「香港メディアのシンボル ジミー・ライ逮捕の衝撃」[特別寄稿]

◆CULTURE & COLUMN
新井見枝香×千早 茜「胃が合うふたり」[第8回 芦原温泉編] 絵:はるな檸檬
胃が合うふたりの胃が合わぬとき――体と向き合う温泉街。書店員×作家、胃袋無尽蔵の食べ友エッセイ。

南 沙良「届かない手紙を書きたい」[第6回] 撮影:石田真澄
もしも音楽がなかったら――女優、モデル、18歳。南沙良が綴る等身大エッセイ。

村上貴史「不夜城を照らす静かな光」[特別寄稿]
〜馳星周氏の直木賞受賞と「極夜」第二部開始に寄せて〜


◆シリーズ コロナ禍での思考
森田真生「計算と生命のあいだ」[特別寄稿]

サンキュータツオ「世界のαに関するカルチャー時評」[第18回]
不要不急のエンタメ相場〜配信落語会顛末記〜

手塚マキ「トレンドを、読む読む。」[第10回]
令和の光源氏たち、百人百様の素顔

秋ひのこ「境界線に置くことば」[第14回]
横飛び族、あらわる

田中 開「午前一時のノスタルジア」[第19回]
ビニールカーテンは酒のツマミになるか


今 祥枝「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」[第11回]
障害者の家族の「セルフケア」について考える。

北村紗衣「結婚というタフなビジネス」[集中連載第3回]
元祖DVリベンジもの『ワイルドフェル・ホールの住人』

清田隆之「一般男性とよばれた男」[第4回] 画:unpis
妻と不妊治療を頑張りたい。でも、彼女の心の奥に触れるのはなんだか怖い――。恋バナ収集ユニット・桃山商事代表がインタビューして聞いてみる、マジョリティ社会的多数派たちの「なぜか口にできなかった自分語り」。

カレー沢 薫「モテる技術(仮)」[第21回]
匿名だってモテる。そう、ツイッターならね。魑魅魍魎が跋扈するSNS上でのモテとは。

長井 短「友達なんて100人もいらない」[第5回] 撮影:亀島一徳
長井短、悔やまれるあの頃の自分を、今更だけどあの子になって考えてみた。「本当のことはわからないけれど、たぶん私が悪いのだ。ごめん。」

パリッコ「たそがれドリンカーズ」[第8回]
高価な装備を持たなくてもアウトドアの楽しさは味わえる。今日は小さな焚き火をしに、電車一時間の河原にてチェアリング。思いつき途中下車、ちょい飲み物語。今回の思いつきは武蔵五日市。

平原 卓「知のバトン 哲学者が考え、引き継いできたもの」[第10回]
――哲学者が考え、引き継いできたもの
ヘーゲルによって一つの完成を見た近代哲学。その後に現れたハイデガーの実存論は、哲学をさらに拡張する――。

執筆者紹介/編集後記

「覇王の譜」(橋本長道氏)、
「そして、僕たちは舞台に立っている。」、
「パルコにお店を出したくて」(渋谷直角氏)、
「多摩川異聞録」(恒川光太郎氏)は本号休載です

編集長から

「1996年の衝撃」から四半世紀、馳星周氏の原点にして未来

 1996年の衝撃。先ごろ第163回直木賞を受賞した馳星周氏のデビュー作『不夜城』を、書評家の村上貴史氏は今号の特別寄稿「不夜城を照らす静かな光」の中でそう形容しています。読書界の話題を席捲した同作から四半世紀、馳氏は昨年から『不夜城』の前日譚にあたる「極夜」を本誌で連載中です。

『不夜城』主人公の祖父的な存在である楊偉民の若き日があった新宿は、GHQや中国国民党も暗躍する混沌の街。薬学を学びに台湾から来た実直な青年の志は、時代の昏い熱狂の中で予期せぬ方向に捻じ曲がりました。
 直木賞作『少年と犬』の無償の愛と、『不夜城』「極夜」の暗黒と。馳氏の作品世界にあるこの対照性を、村上氏は「己と他人の命を天秤にかけて選択」しなければならないという私たちの宿命の双極として捉えています。
 やがて歌舞伎町の闇社会に君臨する男は、人の命を操り支配し続けることの地獄に、いかにして身を投じたのか――。「眠らぬ王 極夜・第二部」、ついに本号で開幕です。

 同じく新連載、早坂吝氏の「探偵AIシリーズ」の第3弾「四元館の殺人」。現実の人工知能の特性や課題(たとえば「フレーム問題」のような)とミステリのトリックが結びつくという離れ技が楽しめる本シリーズは、早坂氏の代表作として各種ミステリランキングでも高評価を得ています。
 長谷川純子氏のコミックエッセイ「脳出血で倒れたひきこもりの弟が憎いのか愛しいのかわかりません!」は、ある日、突然に「8050問題」と「家族介護」に向き合うことになった長谷川氏の葛藤や迷いが率直に描かれます。
 ほかにも女優・南沙良氏のショート・ショートと人気イラストレーター・ごめん氏がコラボした特別企画「頭の中の女の子たち」や、OKAMOTO'Sのベーシスト、ハマ・オカモト氏×作家・橋爪駿輝氏のスペシャルトークなど、今号もバラエティー豊かな誌面になりました。

 ところで、今号から継続的に掲載して行く予定の「シリーズ コロナ禍での思考」。森田真生氏がお寄せくださった考察「計算と生命のあいだ」に次の一節がありました。

 近代の自然科学の礎を築いた哲学者たちは、自分の体内に何兆ものバクテリアが棲んでいることを知らなかった。思索に耽るとき、太陽から降り注ぐ夥しい数のニュートリノが全身を貫通していることを感じなかった。自分のDNAの一部が、ウイルスをはじめとした他の生物種たちによってもたらされたものであることなど、想像するすべもなかった。……
 人間と人間以外の相互依存性は、近代においては秘匿され、秘密にされてきた事実だった。その抑圧の上に、まるで世界から切り離された神のように、「自然」の全体を超越的に見晴らせる「人間(human)」という特異な地位が捏造された。

 新型コロナウイルスの流行をきっかけに「ニューノーマル(新たな常態)」というキーワードで括られ始めた様々な事象は、実は私たちが既にそこに包まれていた課題と言えるのかもしれません。森田氏の指摘するように、自然に対して超越する存在として自己規定した人間は、国家や資本主義などの近代のシステムを通じて世界を“人間一人のもの”として整理し、統合し、開拓してきました。
 そのプロセスは、たとえば世界経済が地球規模に拡大して成長余力を失った二十世紀後半に密かな転換点を迎えていたわけですが、近代の人間中心主義に代わる思考の枠組みを私たちはまだ模索しています。

 ただし、新たな枠組みは「人間の傲りを捨てよ、自然を愛せよ」というようなアプローチだけで到達できるものでもないのでしょう。自然を愛するということも、自然を人間とは切り離されたものとして客体化することに他ならず、ここにも主体(=人間)による客体(=自然)支配が忍び込むからです。
 こうした構図に囚われない環境哲学のあり方を、森田氏寄稿でも触れられている米ライス大学教授のティモシー・モートンは「エコロジーは自然なきものになるだろう」という、一見、矛盾にも感じられる言葉で表現しています(『自然なきエコロジー』/以文社刊)。

「特異な地位」が支配を生み、支配者は支配し得ないものとの関係を分断して「敵」とみなす。いま世界の様々な場で叫ばれている「コロナとの戦い」に潜む危うさは、それが「自分たち/敵」の区分けから生じる、社会のあらゆる場所にある差別や抑圧の構図と相似形をなすことにあるでしょう。
 コロナ禍での日常は、分断や差別や抑圧に、そしてそれらの、時には近代社会で“善きもの”としての価値を与えられてきた何かに後押しされてしまうような再生産に、目を凝らしてゆくべき日常にもなるのだろうと感じます。

 ですので「シリーズ コロナ禍での思考」は、もちろん政治的や科学的や思想といった大きな問題にも取り組むのですが、「よく考えると、どう考えればよいのか分からなくなった」というような小さな違和感も大事にしていきたいと思います。

「yom yom」編集長 西村博一

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