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もう戻れない、社会のありきたりの構造に疑問を持たない事に。もう戻れない、戻れない世界がある事を寂しがることができる自分に。(誌面のことば――なみちえ「乙女心」より)

yom yom vol.62 2020年6月号

(隔月1、3、5、7、9、11月第三金曜日発行)

770円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2020/05/15

発売日 2020/05/15
JANコード F80340
定価 770円(税込)

◆NEW SERIES
朱野帰子「わたし、定時で帰ります。 ライジング」 写真:アフロ
支社から異動して来た、残業が好きだという若者。早く帰そうと指導に手を焼く結衣だったが……。ドラマ化も大好評だった新時代のお仕事小説シリーズ第3弾!

加藤千恵「手の中の未来」 画:LIE
結婚はいずれするものと思い込んでいた。アラサー独身彼氏なし、妹の子どもにメロメロなわたしのマッチングアプリ婚活がはじまる――。

◆SERIES
武田綾乃「君と漕ぐ3」[最終回] 画:おとないちあき
ついに迎えたインターハイ。恵梨香と希衣のペアは優勝をつかめるか。青春部活小説シーズン3、熱いフィナーレ!

門井慶喜「地中の星」[最終回] 画:山田ケンジ
「早川さんの会社の、株を買う」電光石火の早業で、東京高速鉄道を敷設した五島慶太。ついに新橋駅で雌雄を決する時が来た。

小林勇貴「殺界団地」[最終回] 画:石川晃平
あれから10年。俺達は、狂った団地のことなど忘れていた――。ウイルスが蔓延した世界で衝撃怒涛の最終章ラストバトル

小佐野 彈「我とひとしき人しなければ」[第6回] 写真:Dan Osano
アイコちゃん。そして、リュウ。あまりに呆気なく二つの命が消えた。苦しみの中にいる「僕」にとって、春のキャンパスは明るすぎてーー。

最果タヒ「森森花畑ぼく森森海/森森花畑ぼく森森海 雷雷雷」[第4回]
扉の詩/摩周湖とは春/10歳の詩/お花見/美しいもの

燃え殻「これはただの夏」[第6回] 画:森 優 デザイン:熊谷菜生
“幸せとは? みたいなバカなことを考えなくなったよ。それだけは癌になってよかったことだな。” キミもボクもたくさんの嘘の結晶。

中江有里「愛するということは」[第3回] 画:椋本サトコ
誰も教えてはくれなかった。子どもがいるとこんなにみじめな思いをするなんて……。わたしは、あの子の奴隷なの?

橋本長道「覇王の譜」[第5回] 画:サイトウユウスケ
連勝中の直江の前に立ちはだかったのは、奨励会時代の友人で、アマ強豪として復活を遂げた桑島だった。

結城充考「アブソルート・コールド」[第10回] 画:與座 巧
逃亡した産業密偵が尾藤に取引を提案。生還した来未は微細走査官の役割を知る。コチは電子思考体が籠城する情報施設に向かう――。

成田名璃子「ヤマワラウ」[第4回] 画:Miltata
戦争が芳乃の生活に暗い影を落としはじめる。そして現代、帰京した詩織は母と対峙する。

◆COMIC
谷口菜津子「今夜すきやきだよ」[第4回]
「男女の友情は成立するのか問題」でちょっと不機嫌になる二人。

◆WORLD TRENDS
澤田智洋「トレンドを、読む読む。」
壁を取り払い、境界を引き直す「ゆるスポーツ」の可能性。

◆CULTURE & COLUMN
新井見枝香×千早 茜「胃が合うふたり」[第6回 高田馬場・新大久保編] 絵:はるな檸檬
「半地下」とお茶がいざなう、打ち明け話。書店員×作家、胃袋無尽蔵の食べ友エッセイ。

北村紗衣「結婚というタフなビジネス」[特別寄稿]
〜ジェーン・オースティンとジョージ・ムアのヒロインたち。

トミヤマユキコ「世界のαに関するカルチャー時評」[第16回]
ドラマ『フォロワーズ』とコモディティ化された「女性の自立」。

今 祥枝「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」[第9回]
パンデミックに世界を分断されることについて考える。

なみちえ「午前一時のノスタルジア」
乙女心。

南 沙良「届かない手紙を書きたい」[第4回]
私だけが知っている“女の子”のはなし――女優、モデル、17歳。南沙良が綴る等身大エッセイ。

長井 短「友達なんて100人もいらない」[第3回] 撮影:亀島一徳
愛ってたぶん、等価交換から一番遠くにあるものだ。長井短26歳、初めての連載エッセイ。

清田隆之「一般男性とよばれた男」[第2回] 画:unpis
“順風満帆なサラリーマン生活と自傷的な自慰行為” 恋バナ収集ユニット・桃山商事代表がインタビューして聞いてみる、普通の男マジョリティたちの「なぜか口にできなかった自分語り」。

濱野ちひろ「境界線に置くことば」
種を越境する人々。

出口治明「新型コロナウイルスを世界史の中で捉える」[特別寄稿]

カレー沢 薫「モテる技術(仮)」[第19回]
モテはモテでも嬉しくないモテはなーんだ? 「既婚者モテ」という闇モテ考察回。

パリッコ「たそがれドリンカーズ」[第6回]
“人生はキッチンで成熟中の鶏白湯”思いつき途中下車、ちょい飲み物語。今回の思いつきは自分の家。

執筆者紹介/編集後記

「そして、僕たちは舞台に立っている。」、
「パルコにお店を出したくて」(渋谷直角氏)、
「知のバトン 哲学者が考え、引き継いできたもの」(平原 卓氏)、
「ぬくとう君は主夫の人」(磯谷友紀氏)、
「多摩川異聞録」(恒川光太郎氏)は本号休載です

編集長から

宙吊りの中で記録する

 続々と原稿が届く最中に「緊急事態宣言」が発出され、本誌も在宅勤務での編集に移行しました。電子媒体ですので、もともとある程度はリモート作業ができる仕組みでしたが、編集者が自宅にいられるのは執筆者や校閲者、印刷会社の協力があるからです。

 新型コロナウイルスの脅威をめぐっては、この数ヶ月、様々な立場からの発言が行われました。フェイクニュースや誹謗中傷の類は論外として、SNSでの発信も含め発言者が身を置く環境ゆえの困難や心配事、怒りを伝える言葉はみなそれぞれの説得力があり、何がよいことで何がそうでないのか軽率に断ずることを許しません。誰もが真剣なんだと感じます。そして、この社会が常日頃、いかに糊代の少ないギリギリ態勢で営まれてきたのかということも。

 今号の「海外エンタメ考 意識高いとかじゃなくて」で、筆者の今祥枝さんは「未曾有の経験に際し私ができることといえば、記録しておくことぐらいしかないのだ」と記しています。出版業界や演劇・映像業界でも、何年もの時間をかけて(そして重い金銭的な負担に耐えながら)準備した公演・興行が軒並み中止や延期になりました。こうした中、たとえば普段だったら同意せずとも受け止めることはできた誰かの意見を、全力で叩きに行きたい気持ちに駆られます。今はただ、判断の宙吊りに耐えながら記録を続けることの意味を実感します。

 戸惑いの中で編集した今号ですが、誌面では変わりなく新たな物語が誕生しています。働き方改革の一筋縄ではいかない部分を鮮やかに描く朱野帰子氏『わたし、定時で帰ります。』は、シーズン3「ライジング編」が始まりました。加藤千恵氏の新連載小説「手の中の未来」はマッチングアプリ婚活が舞台になります。『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』などの研究著作が注目を集める北村紗衣氏や『全世界史』の出口治明氏、あるいは動物性愛者への取材を通してセクシュアリティのあり方を考え続けた『聖なるズー』の濱野ちひろ氏など、鋭い問題意識に裏打ちされた特別寄稿の数々にもご期待ください。

 表紙の「誌面のことば」は、ラッパー、着ぐるみ作家など身体パフォーマーとしてジャンル横断的な活動を続けるなみちえさんの「午前一時のノスタルジア/乙女心」より。このコロナ禍をくぐり抜けた後、私たちはみな後戻りできない変化を心のどこかに刻みます。その変化を悼む出来事、あるいは祝福する出来事の数々を、記録し続けたいと思います。

「yom yom」編集長 西村博一

次号予告

バックナンバー

雑誌から生まれた本

yom yomとは?

世界はこんなにも様々な可能性に満ちているから。

「yom yom」はそんな物語の囁きを、あなたがこっそり聞きに来る雑誌です。あなたと一緒に歩いてくれる、あなたのための物語が、見つかる場所になりたいのです。それでお気に入りを読み終えたら、「しょうがない。明日も生きていってやるさ」とでも思っていただければ幸せです。注目作家の小説も詩もコミックも……文芸の「イマココ」に必ず出会えるボリュームたっぷりの文芸誌です。

yom yom

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