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フレックスタイム制を利用して、3人の子どもたちの育児を効率よく分担。

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日本たばこ産業株式会社 法務部 次長 平 尚さん

 世界120以上の国と地域でたばこ事業を展開する日本たばこ産業(JT)。JTでは社員一人ひとりのワークライフバランスが尊重され、仕事とプライベートをともに充実できている状態とすることにより、イキイキとした職場風土を醸成し、組織としてのパフォーマンスの最大化を図ることを目的として「働き方改革」を推進しています。 具体的には、フレックスタイム制、テレワーク、弾力勤務など、個々人の状況に応じて柔軟に勤務できる仕組みを導入し、時間や場所に捉われない多様な働き方を推進しています。そこで今回は、フルタイムで働く奥様と家事分担をしながら、3人の男の子を育てる、法務部次長の平尚さんにご自身の働き方について伺いました。

――まず、平さんのお仕事の内容を教えてください。

 私は1998年にJTに入社し、今年で20年になりますが、その大半が法務部門におけるキャリアで占められます。法務部といえば、契約書審査や法的分析を行うのが一般的なイメージですが、そうした法的側面に限られることなく、経営・事業の視点から社内のさまざまなプロジェクトや社内外のトラブルをどうしたら最善、最適な形で解決できるかを、社内の他部門の仲間たちと一緒に考え、形にしていくのが主な役割です。プロジェクトと言っても、新製品の研究開発やサプライチェーンのスキーム検討、新たなビジネスモデルの検討、M&Aを含む事業再構築など、多岐に渡ります。また、各種意思決定資料の審査や社内ルールの整備支援のほか、法務部門の組織力の強化にも試行錯誤しながら取り組んでいます。

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――平均的にどのような一日を過ごしていますか?

 私はフレックスタイム制を利用しているので、コアタイムの10時から15時を中心に勤務時間を調整しています。朝は三男の支度をし、保育園に送って10時に出社します(妻は長男次男の弁当を作って出社)。退社時間は大きく分けて2つのパターンがあって、週2日は保育園のお迎えがあるので、17時半には退社します。残りの週3日は、18時から20時の間ぐらいに退社します。週の総労働時間で勤務時間を管理しているので、場合によっては15時に退社することもあります。

――逆に忙しい時はどのように過ごしていますか?

 忙しい時は会社に22時頃まで残ることもありますが、保育園のお迎えが必要な時には退社し、子どもたちに夕食を作って、お風呂に入れて寝かしつけてからテレワークを活用することもあります。

――3人のお子さんはおいくつですか?

 長男が10歳、次男が7歳、三男が4歳です。やんちゃ盛りの男の子3人です。ただ長男次男が最近だいぶお兄ちゃんになって、下の子の着替えをちょっと見てくれたり、片付けのお手伝いをしてくれるようになってきて助かっています。とにかく3人腹をすかして待っているので、帰ってすぐに夕食に取りかかる感じです。

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――今の働き方を始めたのはいつからですか?

 2017年10月からです。それまでは、平日は毎日妻が仕事から帰宅後に夕食を作っていましたが、仕事もこなして、食事を作って寝かしつけてというのが毎日続くのは本当に大変なんですね。妻も仕事が忙しいので、週末は疲れ果ててずっと寝ていたり。私はアウトドア派なので、休みの日は家族とどこかに出かけたいのですが、そうもいかなくて不満でした。そこで、お互いの不満をどうしたら解決できるか話し合って、今のスタイルを試してみようということになりました。できるかできないかはやってみなければ分からないですし、うまくいかなければやり方を変えればいいと始めて今に至っています。

――始めてみて、実際はいかがでしたか?

 もちろん大変な時もあります。「今日は夕飯にこれを作ってやろう」と張り切りモードの日もあれば、「ちょっとつらいなあ」という日もあります。そういう時は無理せず出来合いの夕食で済ませます。一方で、家族で週末出かけられるようにもなりましたし、この冬は月2回ペースで家族でスキーにも行くことができました。

――なかでも一番大変だったことは何ですか?

 家事育児には終わりが見えないことですね。分かりやすい報われ方がないのに、とにかく毎日回していかなければいけない。肉体以上に精神的につらいことが分かりました。どれだけ大変なのか経験してみないと分からない世界だと思いました。日本の人口減少による危機が叫ばれている中、こういった努力が将来生む社会経済的価値について世間ではまだあまり認識されていないのを痛感しています。

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――一概に家事といっても、細かなことがたくさんありますよね。

 そうなんです。炊事、洗濯、掃除とやっていることはそのものですが、その他にこれらをできるようにするためのお膳立てとして、やらなければならない目に見えないいろいろなことがあるわけです。私も従来の価値観の中で育ってきて、以前は家事がどれだけ大変なのか全く知りませんでした。でも実際にやりだすと、育児や家事が自分事になってくるのです。企業社会でもよくオーナーシップ・当事者意識と言われますが、家のことも同じだと思います。そうなると、洗濯物が散らかっているとか、これが回っていないとか、調味料が切れそうだ、などいろいろなことが気になってきます。どう効率的にマルチタスクをこなしていくかを考えるのは、まさに仕事と一緒ですね。

――そこまでの意識を変えられた男性はまだまだ少ない気がします。

 妻から仕事を再開したいと言われた時は、「なんでそこまで?」と思いました。パートナーの生き方を尊重したいし、応援したいという気持ちはありますが、働かなければ食べていけない状況ではないし、むしろ大事な幼少期の子どもたちをきちんと見てあげる必要もあるし、仕事との両立は体力的にも非常に厳しいですし。妻が働くという選択をあえてしたことで彼女自身が大変になるのは、自己責任だとも思っていました。でも始めてみると、真剣に仕事に取り組んでいるし、いろんな本を読んで熱心に勉強もしているし、極めつけは、生命保険の見直しの際に「万が一あなたが子ども3人残して他界したとしても働き続けるから、そこまで保険をかける必要はない」と言い切った妻を見て、生半可な覚悟で仕事をやると言っているわけじゃないのを知ったのです。だったら私も覚悟をしようと決めました。

――今のスタイルに働き方を変える時、周りの方にはどう伝えたのですか?

 私は普段から会社で家の話をしているので、プライベートでどう過ごしているのか、周りは大体知っているというのがまず前提にあります。さらに会社で共有しているスケジュールにプライベートの予定も結構入れています。私のスケジュールを見て、「小学校で歌の発表会があるんですね」と言われると、「すごく子どもたちの歌がいいんだよ」なんて、かなりの親バカだと思われているでしょうね(笑)。子ども3人の行事がそれぞれあって、持ちものの把握、宿題や書類の提出もあるので、最低限の行事ぐらいはまとめてスケジュールに入れておかないと自身のスケジュールの全体像が見えないのです。オンもオフもないので。

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――周りの方の反応はいかがですか?

 以前と変わりはありません。というのも、我が家では農園を借りていて、特に夏の間は週末だけでは足らず週の半ばも野菜を収穫に行くので、水曜日は15時頃にはフレックス退社をしていたのです。そんな働き方だったので、あまり違和感なく受け止められているのでは(笑)。でも理解をしてくれているチームメンバー、上司、同僚には本当に感謝しています。法務部員の殆どはフレックスタイム制を利用して働いているのですが、導入以降、それぞれの働き方の意識も変化して、残業時間がかなり減少傾向になっています。

――今の働き方に変えて一番良かったことは何ですか?

 日々戦いで、あまり考えたことがなかったです(笑)。最適な働き方は今も模索中ですし。でも、家事も育児もやることで、仕事に生きている部分が大きいですね。手の内を明かすと、育児の中で気づいたことがマネージメントに応用できることがあったりします。例えば、本音で話し合える関係作りだったり、モチベーションをどう引き出すかを考える時などは参考になりますね。あとは、妻が仕事をすることで、同じ経済社会の中で、彼女もまた違う景色を見ているんです。お互いにいろいろな考えを交換できるので、すごく勉強になっています。

(取材・文 寺田愛)

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