新潮社

書店員さんからの声

コメントは一部抜粋とさせていただいている場合がございます。掲載順は順不同です。

  1. 読み進めるごとに打ちひしがれる、という体験を久々にしました。「みんな違って、みんないい」という謳い文句に、どれだけ思考停止をさせられていたかを思い知りました。現在の社会潮流に一石を投じる傑作だと思います。多くの人に読んでいただき、考えてほしいです。

    (紀伊國屋書店 新宿本店 久宗寛和さん)

  2. 凄かった! 凄まじい熱量だった! “自分の想像力の限界”を突き付けられ続けた読書時間。どんなに言葉を尽くしても、どんなに想像力を膨らませても、できないこともあるのだと思い知らされた。圧巻!! 降参です……!

    (六本松 蔦屋書店 山田麻奈未さん)

  3. 「多様性のある社会=誰もが生きやすい社会」という概念を、粉々に打ち砕いてしまった! 自分の価値観・世界観がアップデートされていく感じがして、読後は世界が輝いて見えた。スゴイ作品でした!

    (西沢書店 北店 佐久間拓也さん)

  4. 自分が信じる「正しさ」は誰かにとっての「暴力」になりえるのだと、自分が認識している世界の狭さを思い知らされた感覚です。読み終えた後、自分が信じている価値観は脆く儚く崩れるが、それを引き換えに新しい自分が生まれるかのような、それくらいの衝撃がある作品でした。

    (明文堂書店 氷見店 前花祐太さん)

  5. きっつい話だけど、救われたようにも感じた。今は多様性の時代ですなんて、うわべだけの多様性、軽々しく言えない。孤独であることがしかたがないとあきらめ、いや孤独でいさせてくれと悲痛な思いをもつ者と周りのつながりを求める者との乖離が滑稽であり、辛くて苦しい。
    人間って辛くて悲しいものだ。でも、この作品を読んで、人間すべてを包み込んで愛したいと、心から思った。人間を守りたいと思った。きっと誰もが、この孤独のかけらを持っているから。

    (ジュンク堂書店 滋賀草津店 山中真理さん)

  6. 正しさは暴力だ。世の中の正しさというものも、言ってみれば所詮人が決めたもの。自分に正直に生きることと、その正しさを他人に押しつけることは違う。作中の人物の言っていることは、全て理解できるし理解したいと思った。 “多様性”という言葉にして安心した気になっていると本当のことは見えてこない。もっと自分自身とも向き合わなければ自分のことも他人のことも見えてこない、そう考えさせられる作品でした。

    (蔦屋書店 嘉島 迫彩子さん)

  7. 多数派にいることでどこか安心している自分の腹黒さを晒された。突きつけられた問いに答えが出せないまま読了。一言一句漏らすことなく味わい尽くしたい。ネタバレしないで、まっさらな心で読んでもらいたい。そして一緒に自分の心の汚れについて話し合いたい! 朝井リョウは私の心を写す鏡だ。

    (未来屋書店 大日店 石坂華月さん)

  8. 登場人物の絶叫にぶちのめされます。気楽な大声で感想をばらまきたがる私のような受けとり手とは真逆の、芯から自分のこととしてこの物語になぐさめを感じる人も、きっと沢山いると思います。その人たちに、この本を届けるためにできることをやりたいです。

    (本のがんこ堂 野洲店 原口結希子さん)

  9. 自分なりに理解したつもりで、今まで沢山のことを享受して生きてきた。誰もがそうだろう。この物語は、その人となりの根本を破壊しに来た刺客だ。なんて恐ろしくて凶暴な本。読む前の自分には、もう二度と戻れないのだと愕然とした。とてもじゃないけど、「面白かったよ」なんておすすめできない。でも、読んで良かった。それだけは間違いない。

    (ジュンク堂書店 吉祥寺店 田村知世さん)

  10. 読んでしまいました。もう、読む前の自分には、もどれません。外(社会)からの情報の受け取り方も、モノの見方も大なり小なり確実に、以前とはちがいます。それが、良い事なのか悪い事なのかはわかりません。この小説は、アダムとイヴの食べたリンゴだったのかもしれません。「どうして神様は、人間をみんな同じに作ってくれなかったの?」

    (けやき書房 辻本東美さん)

  11. 誰も信じられない世の中で人を裏切らないのは欲望だけだ。正視できない現実があれば欲に塗れた人間の素顔もある。本音と建前が渾然一体となって常識が音を立てて崩れさり、断絶による支配に包まれても緩やかに繋がる僕らは生き続ける。この世の理不尽を痛切に皮肉りながら「生」への希求は揺るがない! 時代が生み出したいま最もネイキッドな物語。読めば必ず世界が変わる! 劇薬のような一冊だ!

    (ブックジャーナリスト 内田剛さん)

  12. 読み手の胸のうちにある、言葉にならない、できないもの。それらを言葉で映してみせるのが小説の役割、効能のひとつとするなら、いま、その先頭にあるのが『正欲』だと思っております。切れ味鋭く、痛烈で、それでいて熱く、生きづらさを抱えるひとびとへの慈愛もある。素晴らしい作品を、ありがとうございました!

    (ときわ書房 本店 宇田川拓也さん)

  13. 安易に判断できない理解できない感情を超えることを、本書を読んだ人はどう判断するのだろうか。それでも「繋がり」を通じて、全ての人々が満たされる答えは今はないが、個々がどう自分らしく生きていくのかは読者へ委ねられていると思う。そしてこの物語が放たれた後、一方通行ではない色々な考えや提案が、世の中に現れて混じり合うことを願う。それはどう生きていくか、これから生まれてくる人々へのバトンにもなるのではないだろうか。

    (大盛堂書店 山本亮さん)

  14. この小説を読み進めるなかで、私を過ぎった偉人の言葉がある。それはこういうものだ。
    “はじめに彼等は無視し、次に笑い、そして挑みかかるだろう。そうして我々は勝つのだ”
    かつてあり得なかった状況が、今日当たり前になりつつあるように、いまあり得ないと目されるそれら状況が、いつか当たり前になることを夢見て、この頁の終端は私たちに繋がっているように、私には感じられた。この作品に対してシニカルに構えることをやめたとき、生きることについて、とんだ思い上がりばかりの希望を抱いている私にとって、その一途さは希望以外のどんなものでもあり得なかった。心より、良い作品に出会えたと感じています。ありがとうございました。

    (宮脇書店 水戸南店 松岡圭介さん)

  15. これほど読み手にとって、受け止め方が分かれる作品はあるだろうか? プロローグから不穏の渦に巻き込まれ、それぞれの正義・欲・混沌・秩序が、束になって頭と体の中に飛び込んでくる! 生きることを強く肯定しながら。

    (うさぎや 矢板店 山田恵理子さん)

  16. 朝井リョウという人物を私はいままで勘違いしていたのかもしれません。一つの大きな出来事に向かっていく人々をまるで監視カメラで覗いているようなリアルさに、呼吸するのも忘れそうでした。読む人によって感想が本当にまったく違う作品だと思います。私自身も今、なにが正しいのか、この作品が正しいのか頭がパニックです。

    (岩瀬書店 富久山店 吉田彩乃さん)

  17. 「他人」はわからない。どうしていいかわからない。手を差し伸べてほしい人もいれば、「ほっといてほしい」という人もいる。その「正解のなさ」「わからなさ」こそが「多様性」なのかな、と思ったりしました。
    夏月と佳道に、お互いがいてよかったねと思いました。しかし二人が出会えたのも偶然の産物で、他の人たちにはそういう人がいない。人間はなんて偶然に翻弄されて生かされているんだろう、ということも同時に思います。
    「移りかわる時代の中で、社会の中ですりつぶされる個人の叫び」を描かせたらかつては松本清張でしたが、今の時代だと朝井リョウだと思います。

    (伊野尾書店 伊野尾宏之さん)

  18. 読後ゆっくり思考整理して消化していますが、この作品は文字通り、読んだ人にしか『傑作』か『問題作』か判断できないと思います。私はあえての、『問題作』を選びます。多様性を受け入れていると言いながらその実、受け入れてないマジョリティ。人とは違っていることを引け目に感じているマイノリティ。傑作というにはあまりにも癖が強く、問題作にした方が、断然いい! 自分は普通だと感じてる人に読んで欲しいと思いました。

    (三省堂書店 そごう千葉店 沢口歩未さん)

  19. なんだこれ。しんどい。読んだあとに、こんなにモヤモヤして、喉の奥がギュッとなる小説は久しぶりでした。ページをめくる手は重いし、読み返すのにとんでもなく気力のいる作品。おもしろいとかつまらないとか、そういう言葉で片付けられない、片付けていい作品ではない……。登場人物の誰もに自分と共感する部分があって、だからこそ拒否したい部分があって。見たくもない自分のうす暗い部分を引きずり出されるよう。ほんとにしんどい。

    (丸善 津田沼店 西尾文惠さん)

  20. “価値観”“多様性”という言葉でぶん殴られるような衝撃。

    (くまざわ書店 四条烏丸店 山中津加紗さん)

  21. こんな商売をしていますから、この作品のPOPにはこんなことを書いてやろう、これを売り文句にしてやろうと目論みつつの読書になるのですが、先に読み進めるその都度私の浅はかな正義感はぶちのめされました。完敗でした。(完敗すぎて読後リアルにベッドで大の字に伸びました)
    白旗を上げながら言えることがあるとすれば、とりあえず冒頭13ページまで読んでみてもらって、こんな胸糞悪そうな話読みたくねえなと思った人にこそ最後まで読んでほしいということです。優しい言葉で溢れた世界に朝井リョウが放った、多くの人を打ちのめし、ほんの少しの人を救うかもしれない劇薬。ひとりでも多くの人の手に行き渡りますように。

    (三省堂書店 東京ソラマチ店 樋口愛さん)

  22. 頭の中が溶けそうです。読んでいる間も、読み終わってからも色んな思考がグルグルと駆け巡っています。『水』が性の対象になるとは思わず、想像してみようと思ってやってみてもわからず、終いには夢の中で色んな水と触れ合う始末(滝とかホースとか雨とかとか……)。夏月と夢の中で水ツアーをしていました。物理的に、夢にまで見る本は初めてのことだったので衝撃です。とりあえず、今後『多様性』ということばは気軽に使えません。

    (椿書房 渡部哩菜さん)

  23. 「多様性のある世の中にしていきましょう。」「多様性を認めていきましょう。」……って、最近よく聞くけど、その多様性って自分の中で“許せる範囲”だけのことだろ?? 軽々しく言うなバカタレ!!
    と、ぶったたかれた感じがすごい。たった1つの“多様性”と言う言葉の意味の広さと重さ。人間の性格や生き方って、“多様性”という一言では簡単にくくれない程エグみが深いということをまざまざと見せつけられた。

    (三省堂書店 有楽町店 平山佳央理さん)

  24. これはヤバイ!! ええっ……ちょっ……(言葉にできない)、すごすぎて読むのを止められない。朝井リョウさんの頭の中は一体どうなっているのか?!(めっちゃホメてます!!) あああ、おもしろかった!! スゴイ作品です!!

    (柳正堂書店 甲府昭和イトーヨーカドー店 山本机久美さん)

  25. 他人の悪や異常、醜聞などと無縁であることでしか自分の正しさを確立できない人間になっていないだろうか? 己と正面から向き合い、己の正義を以て、己の正体を証明せよ! と言われた気がした。今までの朝井作品の中で間違いなく突き抜けた1冊!

    (くまざわ書店 錦糸町店 阿久津武信さん)

  26. 普通を生きることから、はみだした異質。同調圧力のなかの孤独感がすごい。ひるがえって、普通に生まれて、普通に生き抜くのも、本当はすごく大変なことだと思う。すごいバランスの上で、たくましく生きている人々にも感心してしまう。

    (正文館書店 長久手フレンドタウン店 各務雅美さん)

  27. 頭の中にトゲが刺さってしまった、という感じがします。ある意見を耳にしたとき。あるニュースを見たとき。人と何かについて話しているとき。あらゆる場面、状況で、その受け取り方でいいのか? 聞いたまま、見たままの出来事なのか? 自分の想像力はそれで足りているのか? と、チクチクと問い質してくるトゲ。痛みはありますが、それに自覚的になれて良かったと思います。

    (BOOK BOX 文華堂 室井友佑さん)

  28. 読んでいる間、ずっと体におもりを付けられてるような、刃物を向けられているような緊迫感がありました。読後、解放されるのかと思いきや、抱えた重い空気をどこにも吐き出す事ができず、感想を書こうと思うまで数日間かかりました。共感も、全てのページに自分の影が見えて、社会の一部としての人間、個としての人間の全てを丸裸にされた気持ちです。

    (大垣書店 京都ヨドバシ店 大岩祐子さん)

  29. 歓喜して、それから世間一般の常識と呼ばれるものに背を向けた。理解なんて、求めてはいない。だから、こちらをこじ開けて覗き込まないでほしい。許されても許されなくても、私達はここにいるのだから。

    (丸善 丸広百貨店東松山店 本郷綾子さん)

  30. 本作は視点がころころ変わるけど、変わるたびにその人の心情や価値観に引っ張られて共感し、自分が元々持っていた価値観が何なのか分からなくなる。自分の意見が簡単にゆらぎ、自己嫌悪に陥る。「多様性」、便利な言葉だと思っていたけど、この作品を読んで、口を噤まざるを得なくなった。

    (TSUTAYA 西宝店 楠木亜梨沙さん)

  31. 自分の持っている常識や世界観が「井の中の蛙」だと思い知らされるように感じました。世の中の秩序もモラルもどれも真実で間違っていない。文章にするとなかなか伝わりにくいことがしっかりと緻密に書かれているのがすごい。この本は読み手によって解釈が全然違うのかも知れませんが、心に何かが残るのは間違いないです。

    (コメリ書房 鈴鹿店 森田洋子さん)

  32. 多様性の時代がやってきた。人と人とは尊重し合い、認め合い、繋がる時代がやってきた! 発信しよう! 発言しよう! 認めよう! 受け入れよう!
    だけどこうした時代はもうすぐ終わるのではないかと感じました。発信はしない、発言はしない、かわりに何も拒絶しない。誰も傷つけないために、自分が傷つかないように。世界と繋がって生きていたいのに、私は私の個人のちいさな世界を誰にも暴かれたくはない、と思っている。

    (文教堂 二子玉川店 高橋茜さん)

  33. 圧倒された。物語の力とはこんなにも凄まじいものか。わたしたちは世間体を憚って生きている。この作品に描かれている彼らも漏れなく同じだ。常識的な行動をする、理想と現実に折り合いをつける、空気を読む、犯罪行為に加担しない。そういった規範は、この作品の中ではほとんど破られない。では彼らはなぜ苦しめられるのか。作中にはその全ての原因が描かれている。人によって見え方が異なる物語だが、共感や許容をもって読む読者に対しても、その物わかりの良さを裏返しにして、醜悪さを暴きたてる危険な作品だ。

    (HMV&BOOKS OKINAWA 中目太郎さん)

  34. 本を読む前と後でこんなにも感覚が変わったのは初めてです。これは本当に“とにかく読んでほしい”すごい本です!! 多数決の原理で固められた世の中に特に違和感も感じていなかったので、頭をガツンと打たれた感覚でした。どんどんページをめくる手が止まらなくなり、読み終え本を閉じ放心……のあと、早く他の人にも読んでもらいたいという気持ちを抑えられません!

    (ブックスモア 大曲店 長沢葉月さん)

  35. 何を言っても薄っぺらくなりそうで簡単に感想を述べることさえできなくなる、刺さったまま抜けない棘のような物語。ありのまま、多様性、それぞれの幸せの形……昨今かかげられるテーマのようなものを特になんとも思わず享受していた自分。その裏側で傷ついている人が、苦しんでいる人がいる。いかに自分が何も考えず軽薄にそのような類の「キレイゴト」とも言える表現を使っていたかを思い知らされた。結局は自分の想像できる範囲内でしか思い至れない。この本を読んだ人の感想を知りたいと思ったし、話し合いたいとも思った。

    (宮脇書店 佐沼店 千葉遥さん)

  36. つながりとは? 多様性とは? 生きるとは?
    圧倒的なパワーで問いかけるこの問題作を、1人でも多くの方に読んで頂きたい。

    (紀伊國屋書店 天王寺ミオ店 木曽由美子さん)

  37. 日常で感じていた「普通」という言葉の重さがここにある。自分の抱く考えや、感情が“普通”かどうか気にしながらでしか生きられない、今の世の中に対しての問題提起的作品!! 「いなくならない」、とても素敵な言葉です。

    (TSUTAYA 中島店 仲田久美さん)

  38. 「繋がり」……読みはじめは難しい話なのかと思いました。でも読みすすめるうちにこの「繋がり」がとても深いものに思えてきました。誰にも理解してもらえない気持ちが誰かにわかってもらえる喜び……何ものにも変えられない事だと思います。誰かと繋がって明日を生きたいです。

    (ラフレ書店 中村まゆみさん)

  39. 正しい“欲”とは何か? それがまちがった“欲”と誰が判断できるのか? この世界のどこかに自分のすべてを否定する思いで生きている人がいるかもしれない。作者の投げかけるこうしたテーマはとても重い。しかし、どこかで繋がりを求めるのも人間の性(さが)。繋がりをみつけた主人公たちの行きついた先は哀しいが、お互い“いなくならない”と誓う2人の世界が確かに存在したことに、救いの光が見えた気がした。

    (平安堂 長野店 町田佳世子さん)

  40. 肯定されること、肯定すること、この欲求を人間は正しくあつかえているのか、自分の持っている肯定感がうらがえしにされたような気持ちです。とにかくすごい!

    (喜久屋書店 小樽店 渡邊裕子さん)

  41. 読んでいて目を背けたくなる気持ちもあるのに、それ以上の深い共感がありました。「新しい」だとか「衝撃」だとか、そんな言葉で語るのは生ぬるい……それ以上の、ものすごいものがこの作品にありました。読んでいる間も鳥肌ものでしたが、読み終わったあとも、ずっとドキドキしています。この感覚は一生忘れないでしょうし、ずっと自分の心のなかに爪痕を残すと断言できます。

    (SerenDip明屋書店 アエル店 武方美佐紀さん)

  42. 心の奥底にある澱みに触れてしまった。「多様性」という言葉のしっぺ返し。“理解したい”というこの気持ちがもどかしい。

    (紀伊國屋書店 札幌本店 高瀬ちな美さん)

  43. 他者と関わり合う中で無意識に取っているポーズや顔の皮を、容赦なく一枚一枚剥がされる気がする。それは、ページを一枚一枚めくる毎に……。
    自身の乏しい想像力や、“知識”の一部として蓄えた多様性のケース。それ等を受容する体勢を取る事で、悦に浸っている自分は居ないか? 多様性を「認める」「許す」事、自分はそれが出来る、そう思い込む事で優越に浸っていないか? そう自問自答を始め、すぐに自分の傲慢さに気付かされてしまった。

    (枚方 蔦屋書店 大江佑依さん)

  44. これがまだ若干31歳の青年が書いた物語とは……。鋭い凶器のような小説。多様性が叫ばれ世の中が諸手を挙げて理解しよう、するべきだとする昨今。自分自身も少しは理解している側にいるつもりだと思ってたけど、そんなのはただの思い上がりで、全然ゴミみたいなもの。頬を思いっきりひっぱたかれた気分。誰もがほんとは多数派でいたい、異端であってはならないと願っている世の中の人々の、心の奥底を朝井リョウさんは白日の下に晒した。

    (くまざわ書店 名古屋セントラル・パーク店 大洞良子さん)

  45. 「多様性」とは何か? 「正義」とは何か? 「正しい欲」とは何か? そもそも「正しい」とは何か?
    根底から揺さぶられた。朝井リョウに心の中を覗かれている気がする。私は試されているのではないか。私の浅い心の中をほじくり返され、深く深く抉られた感じがする。

    (くまざわ書店 新潟西店 大谷純子さん)

  46. 激情に駆られ叩き付けたくなったり、その孤独に哀しくなり抱きしめたくなったり、読んでいるうちに喜怒哀楽が爆発しそうになった。肩書き、人となり、社会性、全てを削ぎ落としひとりの人間としての自分と向き合わされた気がする。ただただ認めてほしいだけなんだ。自分は存在していていいと。私はただ無性に哀しい。この社会に、人間に、そして自分もそちら側の人間であることに。

    (紀伊國屋書店 仙台店 齊藤一弥さん)

  47. 気持ちが悪かった。この本に出てくる人物に共感してしまうと、今までつちかってきたアイデンティティというか、理性みたいなものが、小舟のように転覆してしまいそうで。

    (文教堂 西葛西店 水野知博さん)

  48. 何に対して(容姿、しぐさ)欲情するのか? それは、ひとそれぞれ。ノーマル、アブノーマル、なにが正解なのか。絶対多数が、全て正解、はたしてそれは、本当に正解なのか。そして、朝井リョウは、「天才」なのか「奇才」なのか? いずれにせよ、面白い作品だ!!

    (本の王国 南安城店 莨谷俊幸さん)

  49. 言葉が矢のような速さで心にどんどん刺さってきて、途中放心状態になってしまいました……!!! 社会で生きていくため、本当の気持ちと行動の矛盾に自分も重なり、ぎゅうぎゅうと押し潰されるようでした……!!! ただ、それでも明日も生きていたいという、人の本能や欲求の威力を目の当たりにして、人間の本質について深く考えさせられました……!! この作品は間違いなく私達1人1人の感情のかたまりであると感じました!!!

    (紀伊國屋書店 福岡本店 宗岡敦子さん)

  50. 作品を読んで私が一番共感できたのは、終盤八重子が大也の自宅前で語っていた言葉でした。とにかくとてもリアルで生々しくて、目を背けたくなってしまうけれど、“繋がり”を求めてあがく気持ちが痛いほど伝わってきて、この結末がバッドエンドなのかは正直よく分かりません。けれど、朝井リョウさんの『正欲』を通じて、今生きているこの世界を深く考えることができたのは確かです。折りに触れて読み返したいと思います。

    (丸善 広島店 坂根伊代さん)

  51. 以前「血液型占いの本なんてバカが読むんですよ」と言い放つ店長がいた。「4種類の人間しかいない訳ないでしょ?!」と。確かにそうだ。正しい。しかし人は自分をどこかに所属させる事で安心を得てしまう弱い生き物なのだと思う。
    この本を一言であらわすならば、「凄い爆弾を投下された気持ち」。正しい欲とは何でしょうね。誰にとっての正しさなのか、そもそも正しいとは何なのか考えさせられました。

    (文真堂書店 ビバモール本庄店 山本智子さん)

  52. 自分の中の幸せの形、常識、価値観の枠をこえた内容でどううけとめてよいのか読後感情が迷子になりました。まさに困惑と共感のないまぜ状態でしたが、どちらかというと困惑ですね。新しいヒューマニズムを与えられ、思考力、価値観が拡がりました。すべての人が穏やかに暮らせたらいいのにと切に願います。

    (BOOKSえみたす ピアゴ植田店 清野里美さん)

  53. “既成概念に捉われるな”と意識することを繰り返してきました。が、人間の欲さえ、もはや人類共通の揺るぎないものではないという私の中の前提が天動説から地動説レベルにひっくり返されるものすごい作品を書かれたと受け止めました。読み終わってタイトルの持つ重さを感じ、“正欲”という言葉が今後ものごとを見たり考えたりするときのキーワードに加わりました。

    (水嶋書房 くずはモール店 和田章子さん)

  54. “逸脱者”の視点に寄り添うかと思いきや、それすら両断していく皮肉に為す術なく翻弄されました。各立場の主張や言動に必ずノイズを混ぜて、完全には肩入れできないようにしてくるのが読んでいて苦しかったです。どんな感想もむなしく空を切っていくような気がしたからです。ただ、主人公は読者だと思いました。それぞれの痛みと恍惚、愚かさを見せつけられたうえで、これを読んだ「私」がどちらに歩みを進めるのかが、この物語の真のスタートなのかもしれないと思うからです。強制的“人間”愛体制に反旗を翻す、21世紀の性の文学。

    (未来屋書店 ナゴヤドーム前店 中原美紀さん)

  55. 正しさとは何なのか、考えさせられました。今まで自分が考えてきたと思っていたあさはかさを突きつけられながら。

    (宮脇書店 松本店 月元健伍さん)

  56. 人間の生き方の「多様性」について考えさせられる作品でした。今を生きる全ての世代の日本人に読んでほしいと思いました!!

    (ブックファースト 野田アプラ店 成田英人さん)

  57. 今の時代、多様性が認められてきていると思っていましたが、とても受け入れられない性の対象やフェチの多さに、正直気持ちが悪いと思ってしまいました。しかし、生まれながらのもので、自分ではどうにもできないことが分かり、社会の中で生きていくことがこんなにも辛い毎日を送らなければいけないことを知りました。物語では分かりあえるパートナー、そして仲間ができて明るい兆しが見えた矢先に最悪の結末。少しでも光がないか探しましたが見つけられませんでした。どのように受け止めればいいのか、今でも考え中です。

    (ジュンク堂書店 郡山店 郡司めぐみさん)

  58. この本は、誰かにおすすめしたい本ではない。そう思いました。書店の店頭でふいに手に取って、噛みしめてほしい。この本を読んでも、「多様性」は理解できないし、答えも見つからない。「わかったつもりになって終わる」未来が見えるだけだと思いました。それでも今回、その中で、多数も少数も相対評価でしかないことを心に留めておこうと思いました。
    最後に、「パーティ」の意味の使い分け、素晴らしいと思いました。はっとしましたし、少しだけ、泣きそうになりました。

    (中目黒 蔦屋書店 津端美咲さん)

  59. 夏月の休憩時間のシーン、イオンモールのバックヤードの描写がとてもリアルでした。朝井先生はイオンモールで働いた経験がおありですね(私の所属する未来屋書店はイオン系列です)。
    それぞれの気持ちが少しずつ分かるような、でも全部は理解しきれないようなとても複雑な気持ちで読み終わりました。正直、私は困惑です。知らず知らず受け入れてあげる側になってたのかなあと多様性の時代とか言って物分かりのいい奴でいた自分をなぐってやりたいです。何が正しくて、何がまちがっているかなんて結局誰にも分からないし、みんな悩んで生きてるんだと思いました。でも、田吉、おまえだけはダメだ!! 人間のクズってこういう人を指すんだと思います。読んでるだけで嫌悪でいっぱいになりました(笑)。

    (未来屋書店 名取店 高橋あづささん)

  60. はじめて読む作品では、登場人物の名前や関係性を書き出していくのですが、どこがどうつながっていくのか、しばらくわからず不安なまま読みました。関係性がつながりはじめて、読むとっかかりを見つけると、夢中で読みすすめました。でも、その衝撃は、あとからあとから増えていくようで、“性欲”じゃなくて“正欲”だった理由とか、わかるともう普通も多様性も怖い。白版と同じ作家さんですか?

    (文信堂書店 長岡店 實山美穂さん)

  61. 読んでいる間中ゾワゾワゾワゾワ、自分に当てはまるわけではないのに居心地が悪く、“多様性”という言葉だけで片付けてしまっている自分が嫌になったり、それも違うと思ったり……。支離滅裂な感情が渦巻いていました。それでいて誰もひとりでありませんようにと願ってしまう、ああもうメチャクチャ。

    (明林堂書店 大分本店 多田由美子さん)

  62. 何が正しいのか分からなくなる。自分の価値観、倫理観が音を立てて崩れて行く。昏き闇に吸い込まれる様でありながら、相反して、解き放された心地良さがある。問題作と言われるかも知れないが、きっと語り継がれる物語。

    (大垣書店 豊中緑丘店 井上哲也さん)

  63. 正しい欲って一体何なんでしょう? 読みながら何度もそう思った。最初の「たとえば、街を歩くとします。」の文から心を掴まれた。こんな風に考えたこと、私はなかった。でも、確かにと納得する。その後、視点を変えながら進む物語がどう繋がり、どこに行き着くのか、時に苛立ち、時にハッとさせられ、時に共感しながら読み進めた。とにかく色々考えさせられた。そして、考え続けたい。

    (東京旭屋書店 新越谷店 猪股宏美さん)

  64. 多様性を認める、価値観をアップデートする。耳触りの良い言葉にのっかって、自分も理解あるつもりでいた。多数派のおごりだ。これを読んだら、簡単にマイノリティに理解があるなんて言えなくなってしまう。一方で、何かを隠しながら、自分は普通です、正常ですと、周囲に確認しながら生きることしかできない窮屈さをヒリヒリと感じた。

    (岩瀬書店 八木田店 プラスゲオ 樋口ゆかりさん)

  65. 水フェチという、人ではないものに欲情するという性癖に殴られたような衝撃を受けました。なんというテーマなのだろうかと驚愕しましたが、特殊性癖でなくとも教室の中などの集団で盛り上がっているときに、自分はそうは思えないと急にさめてしまう私も「地球に留学しているみたいな感覚」を感じていたので、夏月や佳道にとても共感しながら読みました。物語が幕を閉じたこれから先でも、夏月と佳道が支え合って安心できる集合体でいられたら良いと願わずにいられません。とても面白かったです!

    (ジュンク堂書店 名古屋栄店 西田有里さん)

  66. 本当にすごい小説でした。自分の“おめでたさ”を痛感しました。ストーリーはともかくぐいぐい読ませる! どの登場人物も性格や役割が物語にぴったりはまり、誰からも目がはなせない。ぐいぐい読ませておいて、頭の中は理解と疑問、心の中は共感と反感がうずまき、感想なんてうまくまとまらない。多くの人に読んでほしい。この小説は劇薬なのか良薬なのか、どのような作用がでるのか読んでみないとわからない。だから、売りたい。読んでもらいたい!

    (喜久屋書店 帯広店 礒野あかねさん)

  67. 読了後、何とも言えない不安が止まらない。この本を肯定してしまうと、現代社会の一員として今まで通り当たり前に在り続けていくことが難しくなりそうだ。

    (ジュンク堂書店 松山店 木崎麻梨子さん)

  68. 時代が変わり多様性が認められる社会になった、と思っていた自分の浅はかさや、想像すらできなかったことの一部を見せつけられて頭をガツーン! と殴られた気分。衝撃的でした。人間の表と裏を巧みにあぶり出すような筆致を究めた作品。読後、凄すぎて何も手につかないし、この気持ちをどう飲みこめばいいのか分かりませんが、同じ地球の上で生きていこうと思います。

    (水嶋書房 くずはモール店 井上恵さん)

  69. 読んでいる間ずっとモヤモヤした違和感が渦巻き、読み終わったらスッキリするかな? と期待しましたが読み終わってもモヤモヤしたまま……。いや言いたいことは分かる、確かにその通りかも、でもなんか違う気もする……。何がどうひっかかるのか上手く説明できないことがめちゃくちゃ悔しい。ただ、ここまで価値観ひっかき回して読み終わった後もずっとずっと考えさせる朝井リョウさんはただただスゴい。ああ、今この本をいろんな人に読んでほしい。そして「あなたはどう思った?」と聞いて回りたい衝動でいっぱいです!!

    (喜久屋書店 豊岡店 中村美穂さん)

  70. キレッキレの朝井リョウが今ここに!! 呼び名がない感情、関係を形にして、まとも側だと思っている読み手をブンブンゆさぶってしまいます!

    (ブックスキヨスク 尼崎店 奥田勝さん)

  71. 読んでいるあいだじゅう、それぞれの登場人物への共感や嫌悪、わかる! と思ったり、そこは相容れない、と思ったり、とにかく感情が大忙しでした。何か踏みこんだ感情を書こうとすれば、自分がどんどん抉りだされ晒されていく。恐ろしく、すごい小説です。これ以上は怖くて何も言えません。それなのに今、ひとりでも多くの人にこの作品と出会ってみてほしい、と思ってしまっています。

    (福岡金文堂 行橋店 富山未都さん)

  72. 自分のものさしがいかに不確かだったかを浮き彫りにされ、打ちのめされました。苦しみのカタチを、深さを、ここまで正確に計る作者はいただろうか。ましてや、心の奥の奥に閉じ込めているものを、だ。容赦なく自分があぶり出され、意識が朦朧とする感覚。一気に足元がぐらつきます。本書を語るすべての言葉が陳腐に感じてしまうほどの圧倒的唯一無二の作品。これほどの作品を創りあげた朝井リョウは一体何者? と思わずにはいられませんでした。

    (柏の葉 蔦屋書店 高松祐似さん)

  73. 読みながらずっとぐさぐさと刺されているような気持ちになる小説でした。私たちが、より生きやすくなる為、価値観は多様性を深めていくけれど、なにをどうやったって全ての価値観が共存することはできない。けれど、相容れない、と悟りながらも社会の中で生きていくことを選択し、自分たちで始めた試みは失敗してしまうけれど、お互いに「いなくならない」と相手に伝えようとすることは、とても美しいとおもいました。

    (改造社書店 松本駅店 山村奈緒美さん)

  74. 心底笑ってしまいそうなほど愉快で気持ちいいのに、同時に嘔吐しそうなほどに、不快で気持ち悪い。ページを捲る度に「わかったふりをするな」と頬をぶたれているような居心地の悪い気分になりました。代弁だなんて生易しいものじゃない。これはきっと私たち自身の可視化された叫びなのだと思います。「多様性」という言葉が至る所に並ぶ今の世の中だからこそ、この本がどう世界に受け入れられるのか。そういう意味でも沢山の人に読んで頂きたいです。

    (宮脇書店 ロイネット和歌山店 下地亜季さん)

  75. モノローグのような書きはじめの文も、突然、配信される事件も、私の想像した内容を見事に裏切られ、いかに自分が、平凡な想像の中にいるのか、わかったふりして生きているのか、心がざわついた。私にはわからない想像できない世界は、すぐとなりにあり、誰かの現実は、多数の中にうもれているふりをする。
    正しい欲って何だ! 正しければいいのか! 君のことはわからない。では私のことはわかるのか!? 誰か、誰か、わかってほしい。誰か誰か、の先につないだ手が、はなれなければいいのにと強く思った。

    (未来屋書店 高の原店 元尾和世さん)

  76. 止まることなく、一気に読み終えると、しばらく呆然としていました。それ位のパワーがこの本に宿っている。この感情を表現する日本語は存在しない、だから私は「朝井る」そう名付けます。

    (こまつ書店 寿町本店 五十嵐祥子さん)

  77. ずっと鈍痛を感じるような読み心地。そして、自分の中にある「多様性」という言葉の薄っぺらさが、羞恥を煽り、彼らを残酷にもしてしまう。ラストの一行まで、救済のない物語であると同時に、これを読むことで救われる人がいたらいいな、と思う。

    (宮脇書店 韮崎店 谷戸美奈さん)

  78. より多様性が尊重されるようになった現代。その現代においても受け入れられない“少数派”の人間が実際にいる。そんな可能性を考えたこともなかった自分を恥じました。

    (文苑堂書店 富山豊田店 菓子涼子さん)

  79. 想像力、判断力、善悪、好悪、いろんな思考、感情を揺さぶられました。最後まで読み終わってから、冒頭の事件記事を読み直すと、全く受ける印象、感情が異なりました。今後ニュースを見る眼が変わりそうです。

    (未来屋書店 各務原店 山田克宏さん)

  80. 読み始めてから終わるまで、ずっと目の前にナイフの切っ先を突きつけられてるような感じがしました。何を言っても刺されそうで何も言えない。でも(だからこそ?)たくさんの人に読んでみて欲しいと思いました。「いなくならないで」という言葉が頭から離れません。

    (宮脇書店 徳山店 岩枝泉さん)

  81. 差別はいけないとか、みんな違っていいとか言うけれど、結局自分にとっても常識の範囲外のものはその人にとって受け入れられるものではないし、普通ではないと切り捨てる。そんな人間の醜い部分を突きつけられぐさっときました。近頃よく耳にする多様性という言葉をその言葉通りに実行できる人はいないのではという思いが確信に変わりました。

    (名古屋みなと 蔦屋書店 藤原彩香さん)

  82. おもしろかったです。エネルギーに満ちあふれた1冊でした。共感できない部分こそ、自分の内面や無意識な固定観念に向き合う部分なのだと思いました。

    (興文堂 平田店 奈良井和子さん)

  83. 読むのが苦しくてつらいのに、目が離せなくて一気に読み終えた。読み終えてからもずっと考えている。この作品を読んで、私は自分のこともよくわからなくなってしまった。作中に何度か登場する「正しい命の循環の中を生きる」という言葉。正しいって誰にとってなのだろう。考えれば考えるほどわからなくなってしまう。佐々木と夏月のお互いの「いなくならないからって伝えてください」に胸が締め付けられる。みんなただ生きたいだけなのにどうしてこんなに難しいのだろう。

    (興文堂 iCITY店 名和真理子さん)

  84. ただただ圧倒されました。読んでいてずっと底の見えないあきらめと孤独と絶望を感じていました。自分がこの世にたった一人であることの苦しみは理解できません。どんな言葉もうわっつらにしかならない気がします。でもそんな世界で主人公たちが出会ったことは奇跡であり、いつの日か幸せな暮らしを送ることができますようにと祈ることしかできません。ただただ、生きてほしい、と思います。

    (丸善 ヒルズウォーク徳重店 熊谷由佳さん)

  85. いつも裸にされるから、朝井リョウさんの魅力は悪魔のようだと思っていました。抗い難い魅力です。そうしたら『正欲』に裸にされて転がされ蹴り倒されてぶん殴られる……魔王なのか……と思わされました。もうひれ伏すばかりの私は血まみれですが、どうにかこの『正欲』を握りしめてぶん殴りかえして生きていく、と思いました。できることなら自分だけで握りしめたいけれど、たったひとりとして生きるすべての人に届くことを願っています。

    (紀伊國屋書店 ゆめタウン徳島店 安倍香代さん)

  86. この作品をさらっと読み流せる人がいるのかどうか疑問だ。直視することを無意識に避けている自分の内面をいや~な感じで刺してくる。多様性を叫ぶ世の中に適応している、と思いこんでいる「理解ある自分」の化けの皮をはがされた。

    (大垣書店 イオンモールKYOTO店 辻香月さん)

  87. 感想は書きたいけど書きたくない。書いたら自分がはがれてしまいそうで、こわい本だと思いました。人の欲は、どんな時でも存在していて、隠しているものと表面に出しているものといつのまにか区別していて。家族や友人に自分の考える正しい欲をいつのまにかはりつけていてはがれたら汚く見えてくる。自分のことは棚にあげて……。明日も生きたいこの世界で自分の欲と子供を守りながら私は、今日も正しくいられているはず……。たぶん……きっと。

    (宮沢書店 TSUTAYA イオンタウン館山店 新藤幸代さん)

  88. 性欲ばっかり考えすぎでは……? と思ったのですが、結婚をしていないと、生きづらさがある現代日本。なら、性的嗜好は避けてはいられないな……とんでもない問題提起作になりそうです。上辺だけの多様性に風穴あきそうですね! 大変おもしろく読みました。

    (八重洲ブックセンター 宇都宮パセオ店 坂本知子さん)

  89. どうしても自分の尺度で物事を考えがちな日々。片方からしか見えていないことに改めて気づき考えさせられました。皆同じなはずはない。そして何が正しいのだろう。中でも佳道と夏月の物語に心震えました。お互いに「いなくならないから」と伝えあう姿が心に残ります。

    (旭屋書店 アトレヴィ大塚店 北川恭子さん)

  90. 「関係ない」なんてこと実はないのかもしれない。読み終えた後、これから先のなにげない出来事も「私には関係ないし」なんて言えなくなりました。人と人とのつながりって目に見えないところの部分が多いのに、ここにはそれが確かに文章になっていておどろきました。うまく説明できない気持ちや感情があったら朝井リョウさんに表現してもらいたいと思うくらいでした。

    (くまざわ書店 名古屋南店 長崎有紀さん)

  91. 明日、死なないかもしれないと思えるからこそ、様々な嗜好の人が集まり声を上げることで「多様性」が認められていく。その一方で、社会では認められないもの、声が届かないものは、その「多様性」の中に組み込まれることはなく、むしろ排除されるという矛盾はなぜ起こり、人々は何を望んでいるのか。そこについて深く知りたくなった。

    (正文館書店 本店 鶴田真さん)

  92. この作品を拝読したとき、真っ先に「業」という言葉を思い出しました。ヒトは必ず、他人には分かりあえない秘かな「欲」というものを隠しもっている。それが果たして“正しいのか悪なのか”は、自分の思うところとは程遠いところで自分達を取り囲む社会により判断され、万人に賞賛されない限り、残念ながら排除される。他人には決して共感されることのない「正欲」を死ぬまで抱えて生き続けていかねばならない苦しみをそこに見たとき、私にもわずかな光が見えた気がいたしました。

    (芳林堂書店 高田馬場店 江連聡美さん)

  93. 朝井リョウさんの作品は、普段、目を背けている部分が書かれており、そこから心をえぐられることが多いですが、今回の作品は、普段全く意識していない部分から心をえぐられました。この世は多数決で普通が決まっていて、自分は運良く多数派でいられているだけなんだと思い知らされました。正直、登場人物たちの地獄のような苦しみを見ていると、多数派でいられることにホッとしてしまう自分がいました。せめて、自分の考える普通を普通としては考えず、他人へ押しつけることをしないように生きていこうと思いました。

    (未来屋書店 福津店 加賀谷陽さん)

  94. フェティシズムといえば、異性の体や服などを思いうかべると思う、普通は。しかし、もっと広く、特殊なものがあるのだと考えさせられてしまう。人には言っていないだけで自分自身の心の中に留めてあるのかもしれないそのような人たちでも、“誰かとつながりたい”と思う。食欲、性欲、睡眠欲、ともう一つの人間の欲求なのかもしれない。

    (谷島屋 サンストリート浜北店 川島翔さん)

  95. 私がいつも感じていた、「多様性」というキラキラした言葉への違和感、押しつけがましい善意。でも、この本に出会い、キレイごとの下にある真実を目の前に突きつけられたら、結局、自分も「普通」の中にどっぷり浸かって、何も見ようとしていなかったんだと気づかされました。すごく痛かったです。

    (鹿島ブックセンター 八巻明日香さん)

  96. この本に取り込まれた。静かで、あたたかくもあり、時に心が冷えていくのが止まらない程、言葉がうねりを上げていた。わかってくれるはずがないと思うのに、人はどうして悲しい程、分かちあいたいと願い求めるのだろうか。

    (明文堂書店 金沢野々市店 瀬利典子さん)

  97. 自分が理解できないものをすべて一緒くたにして“悪”とすることの短絡的な醜悪さ。解った気になっているくだらなさと浅はかさ。読後、自分はどうやって生きていったらいいのか、何が正しいのかわからなくなった。今まで無意識の差別でどれだけの人を傷つけてきたんだろう。とにかく今後は知ったようなフリをしないこと、自分の言動の心のダブルチェックは必ずしていこうと思う。何て小説を読ませるんですか!! 生き方が変わってしまう!!

    (ジュンク堂書店 秋田店 進藤菜美子さん)

  98. 朝井リョウさん、私たちに何を仕掛けてきたのかとドキドキしました。価値観が揺さぶられ、心の奥底まで何かが捻じりこんできました。読み終わった後、戸惑ったまま今に至ります。
    余韻? そういうものとは違う何か。2021年、とんでもない物語に出会ってしまいました!

    (丸善 名古屋本店 竹腰香里さん)

  99. イライラしたり、涙が出たり、ホッとしたり、色んな感じ方がある。それこそがこの本にとって必要なことだ。そう強く感じました。

    (喜久屋書店 橿原店 谷川麻里花さん)

  100. この本を描いた朝井リョウという人間が恐ろしく、感想を述べるなどおこがましい。自分が想像できることがすべてだと信じ、理解したつもりになっていたことがどれだけ浅はかだったか……。読んでいる途中、「ごめんなさい」の嵐でした!!!

    (明屋書店 小郡店 村上紗季里さん)

  101. 普通って? 平凡って? 自分を構成している全ての当たり前を疑った。朝井リョウ作品の中で一番好き。

    (TSUTAYA WAYガーデンパーク和歌山 中江敬子さん)

  102. 冒頭から不穏さを感じさせるが、読むのを止められない。それぞれの登場人物はどうなるんだろうとラストの予想がつかず、モヤモヤドキドキしたのに清々しくも爽やかなラストはなんなのでしょう。これはやられました。

    (紀伊國屋書店 新潟店 片浜明子さん)

  103. 朝井リョウの小説には、胸を抉られる。自分の嫌なところを見つけられた感覚がつきまとう。素直に人に薦められないが、読んだ人がいたら、内容について話してみたい!

    (朗月堂 駒井伸さん)

  104. 朝井リョウが凄いとこついてきた。やるせない。

    (ジュンク堂書店 神戸住吉店 大橋加奈子さん)

  105. 普通ってなんだろう。誰かのあたり前が、他者には受け入れられない。正しいってなに? これは社会に対する挑戦状だ!

    (うさぎや 作新学院前店 丸山由美子さん)

  106. こういう“事件”というものは、小説という形で“犯人”の内面からずっと描かれているのであれば、多少なりとも共感し、感情移入し、だったりがあるけれど、ニュースの報道などのように外面だけでしか解らないと、正直どうしても嫌悪や、理解不能になってしまうと思います。私的には内面から書かれていても、まだ納得し切れていないところも多いです。とは言っても、世界や世間は、それをわかりやすいものとして“勝手に”変換してしまう。そこにメディアの恐ろしさをみた気がしました。

    (書泉ブックタワー 飯田和之さん)

  107. 色々ドキッとさせられました。登場人物たちがどうなっていくのか、全然予想ができないままどんどんラストに引き込まれていきました。主人公が入れ替わるたびに見え方が変わって、本当に共感と困惑が入り乱れる作品でした。さすが朝井先生だなと思いました。最後は温かく思える場面もあってよかったです。

    (紀伊國屋書店 熊本光の森店 富田智佳子さん)

  108. 何者』が単行本で出た際ちょうど就職活動をしており、人生の節目節目に朝井リョウさんはとんでもない作品を書いてくれるなあと勝手に思っております。読んでいると、「あ、この感情私も思うことあるな」と(主に八重子に)共感しそうになるのですが、「それは本当なのか?」と、その都度突き刺してくるような、全く安心して読書できない、ずっと思考回路を小突かれるような感覚でした。

    (横浜国立大学生協 永井温子さん)

  109. いや、もう正しい欲ってなんだ!? 共感できるところがたくさんあるのに急に突き放されて……。私は今、どちら側にいるんだ!? パニックです……めっちゃムカつく奴いるし……。でも本当におもしろかったです!!

    (三省堂書店 名古屋本店 田中佳歩さん)

  110. 自分には関係ない話として読んでいた。それでも、この物語は容赦なく、私の内側に迫ってきた。すべて読み終え呆然としながら序文を読んだ。私は自分を人より優しい人間だと思っていた。「理解してあげる」「受け入れてあげる」という傲慢さでたくさんの人を傷つけてきたのかもしれない。一冊の本が私達を変え、排除されてきた人達の心に寄り添い、世界を変えてゆくなんてことも充分にありえるのかもしれない。デビュー作から10年が経ち、厚みも深みも洞察力も増した。今後の活躍も楽しみです。

    (うつのみや 金沢工大前店 寺井里緒さん)

  111. どうせ人に言ってもわからない、ということは、まま、あると思います。けれど、そこでいわゆるコーフンする欲情するという方向になると、きっと誰も秘めていて言わないし、言えないですよね。新潮新書に『言ってはいけない』って本がありましたけど、あれを読んだ時のことを思い出しました。ただ、「ね、そんなの変だよね?」という同調圧力(無意識でも)にさらされると、どうでもよくなったり、共感できる人を求める気持ちはわかる気がします。「正しい」にとても敏感な今の世の中で、朝井さんは「言ってしまった」ように感じました。

    (紀伊國屋書店 広島店 藤井美樹さん)

  112. 多数派で居続けることこそが少数派なのだ……。検事の寺井啓喜は息子・泰希との接し方に悩んでいた。不登校になってしまった泰希の表情が能面のように感じられるのだ。父親として、人生の先輩として、社会秩序を安定させる検事として……。すっぱり安定した感想、思考が出てきません。皮肉の様に聞こえるかもしれませんが今流行りの多様性とおおっぴろげにはあまり話すことが憚られるような雰囲気のフェティシズム。「表」のテーマと「陰」のテーマが混ざりあい、なんとも言い表すことができない感情が生まれました。このままではいけないのか、このままでいいのか、の二択すら驕りなのでしょう。「いなくならないから」の言葉が突き刺さります。「多様性」の意義を問う衝撃作。

    (明林堂書店 南宮崎店 河野邦広さん)

  113. 何者』をはじめ数々の朝井リョウ作品を読んできましたが、冒頭たったの数ページでゾクゾクしたのは初めてかもしれません。おもしろい意味でのゾクゾク、恐怖のゾクゾク、興奮のゾクゾク……すべての意味がこもったものでした。そして最初に感じたゾクゾクは、読み終える最後の一字までひたすら続き、大きくふくれあがってしまいました。誰かと共有したい。でも話題にするには難しいテーマでもある……「繋がり」ってとても大切で、他人には理解されてなくとも、生きていくには大切なのだと強く思いました。

    (福岡金文堂 姪浜店 大山侑乃さん)

  114. 深く深く沈んで奥底にある重い蓋を開けると、水がある。意識しないよう細心の注意を払って生活をし、鍵をかけたことさえも忘れていたのに。朝井さん、あなたは私の奥底にある暗渠の存在を思い出させました。『正欲』は劇薬です。この本を読む以前の自分にはもう戻れません。

    (TSUTAYA 南古谷店 石木戸美穂子さん)

読む前の自分には戻れない

935円(税込)
新潮文庫 発売日:2023/05/29

  • Twitter
  • facebook
  • LINE