女による女のためのR-18文学賞

新潮社

第9回受賞作品
受賞の言葉

王冠ロゴ 読者賞受賞

彩瀬まる

「花に眩む」

彩瀬まる(あやせ・まる)

1986年1月25日生まれ、24歳。主婦。千葉県出身、埼玉県在住。 最近の習慣は近くの川辺に出没する野良ウサギを眺めること、深夜に唐揚げを揚げること。

受賞の言葉

 このたびは素晴らしい賞を授けて頂き、誠にありがとうございました。選考委員の先生方、関係者の皆様、そして、つたなく読みにくい作品を支持して下さった読者の方々に心よりお礼を申し上げます。
 ちいさい頃から、小説が好きでした。楽しい時もつらい時も、宝物のような本がいつも私に寄り添っていてくれました。物語を味わう喜び、他の人の思想に触れた瞬間の幸せを教えてくれた先人の偉大な先生方と出版社の方々には、いくら感謝を捧げても足りません。
 いつしか、この物語を作るという壮大な行為に、私もなんとか携われないものかと欲を持つようになりました。けれど道は険しく、初めて小説を書いた十年前から、私にとって小説を書くことは視界の悪い森の中をさまよい続けるような行為でした。こっちかな、あっちかな、と迷い、友人に褒めてもらっては調子に乗り、プロの先生方の力強い作品を読んでは叩きのめされ、でも結局懲りずにまた書いて、おそるおそる周りを見回してさらに書く。そんなあきらめの悪い迷子を、ずっと繰り返してきました。
 今回の受賞は、下手の横好きに等しい私のあきらめの悪さを、皆様がしょうがないなあと寛大なお心で受け止めてくださった結果だと思っています。土俵に上がる機会を与えて頂いた感謝を胸に刻み、これからも一歩一歩、おそらく永遠に続くだろう迷子を恐れず、深い森に立ち向かっていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。