読者賞受賞
「くたばれ地下アイドル」小林早代子

 
小林早代子(こばやし・さよこ)
1992年埼玉県生まれ。早稲田大学文化構想学部文芸・ジャーナリズム論系卒業。春から社会人になりました。

受賞者インタビュー
受賞の言葉
 二月半ばにゼミの友人の引越しを手伝った日のこと、ハイエースで環七に入った時、せっかくだからと言ってフジファブリックの環状七号線という曲を車内に流した。その次に流れた曲がなぜかレミオロメンの3月9日で、助手席に座った友人が「良い曲だよなー。俺はこういう小説を書きたい」と言った。もっと詳しい理由を言っていたような気もするけどそれは忘れた。私は運転席と助手席の間の何だかわくわくする狭い席に座らせてもらえてご機嫌だった。それにしても、文学ゼミに所属している人間の引っ越しというのは、蔵書量はやたら多いのに全員体力がなくてちょっとした地獄だった。
 その時、「私はJITTERIN'JINNの曲みたいな、あっけらかんとした切なさのある小説を書きたいんだよなあ」と思ったのだった。今のところまだ書けていない。
 本作「くたばれ地下アイドル」は、応募締め切り数日前に勢いにまかせて書いた。執筆中は何も考えずに書き進めていたんだけど、今となってはどうでもいいことがどうでもよくなかった時の、みっともない愛しさみたいなものを書きたかったんだろうなと思います。
 この賞の一次選考通過発表から受賞連絡までの間に、半ば諦めていた就職も決まった。寄る辺なさを逆手にとってふらふら遊び呆けていた日々が終わってちょっと淋しいけど、何だか人生が愉快なことになってきたなあという感じだ。就職留年するための学費に充てようと思っていたアルバイト代をつぎ込んで、フィンランドとロンドンに行ってきた。フィンランドには、大量の家具屋と鮭と、ちょびっとの人間があった。ロンドンは物価が高くて、ポンド死ねポンド死ねと唱えながら安スコーンをかじって飢えをしのいだ。旅行中、まだ見ぬ初任給に思いを馳せてクレジットカードを切りまくってしまったので、とりあえず毎日がんばろーという所存です。
 もうほんと、この度はみなさんのおかげでした! という感じです、今後ともどうぞよろしくお願いします。