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14年前の新書が2カ月で20万部増刷


 作家・眉村卓さんの『妻に捧げた1778話』(新潮新書)が刊行されたのは、2004年のことでした。余命1年を宣告された奥様に、眉村さんは毎日1話、短いお話を書くことを約束します。結局、奥様が他界されるまで5年間に渡って書かれた短編は1778話にも達しました。その中から選んだ短編と、ご夫妻の結婚生活や闘病生活をまとめた同書は発売直後から大きな反響を呼び、映画化もされました。
 この14年前の本が、昨年末から急激にまた売り上げを伸ばし、2カ月で20万部も増刷することになりました。きっかけは人気バラエティ番組『アメトーーク!』の「本屋で読書芸人」。カズレーザーさんが、「15年ぶりに泣いた本」として紹介すると、直後からネット書店での売り上げが急伸、品不足から一時期は古書価格までが暴騰するほどでした。
 ただ、この本のすごいところは放送から2カ月以上経っても売れ行きに陰りが見られない点です。通常、テレビの効果は数日、長くても数週間しか持続しないので、これはかなり稀なケースです。
 きっかけこそテレビでしたが、配偶者を亡くした喪失感や、大切な人のために何ができるか、といった身近で普遍的なテーマを扱っていることが、持続力につながっているのではないでしょうか。

波 2018年2月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

眉村卓マユムラ・タク

1934(昭和9)年大阪市生まれ。本名・村上卓児。大阪大学経済学部卒業。会社員を経て、小説家に。大阪芸術大学教授。作品に、『なぞの転校生』『ねらわれた学園』『消滅の光輪』(泉鏡花文学賞・星雲賞受賞)『時空の旅人』などがある。2002年5月、悦子夫人を癌で失う。

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