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30回目の山本周五郎賞は青春小説の傑作が受賞!

 第30回山本周五郎賞は、佐藤多佳子さんの『明るい夜に出かけて』が受賞しました。佐藤さんの愛読者にはおなじみの、生きる上ではあまり役に立たない〈才能〉という厄介なものを持った若者たちの物語です。大学をある理由で休学中の富山の才能は〈面白いことを思いつく〉ことで、深夜ラジオの〈ハガキ職人〉です。ふとしたことで、同じ〈ハガキ職人〉である佐古田という女の子と出会ったことから、富山は人生に少しずつ積極的になっていき……。
 朝井リョウさんは「この小説の素晴らしさは、友情、恋心、若者たちの成長などだけでなく、この時代だからこそ生まれた新しい感情、人との繋がり方が描かれているところだろう」と書評に記し、小泉今日子さんはラジオ番組で「この一年で最も印象に残った本」として本書を紹介。その放送を聴いて爆笑問題の太田光さんは即購入したと自身の番組で語るなど、共感の輪が広がっています。
 アルコ&ピースの実際の深夜番組が重要な要素として登場するなど、2014年春から一年間の物語の描かれ方はドキュメンタリー・タッチの匂いもあって、それが登場人物たちの真情をより切実に読者へ伝えます。初夏の夜の清爽な風のようなこの傑作、ぜひこの季節にお読み下さい。

波 2017年6月号「新潮社の新刊案内」より

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著者紹介

佐藤多佳子サトウ・タカコ

1962(昭和37)年、東京生れ。青山学院大学文学部卒業。1989(平成元)年「サマータイム」で月刊MOE童話大賞受賞。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で1998年度日本児童文学者協会賞、路傍の石文学賞を受賞。『一瞬の風になれ』で2007年に本屋大賞、吉川英治文学新人賞、『明るい夜に出かけて』で2017年に山本周五郎賞を受賞した。著書に『しゃべれども しゃべれども』『神様がくれた指』『ハンサム・ガール』『夏から夏へ』『第二音楽室』『聖夜』など。

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