お知らせ

創作の熱を描き、第22回中山義秀文学賞受賞!

〈ところで、言い忘れたことがひとつだけある。傑作です。〉
 2016年本誌4月号で葉室麟さんがこう評した朝井まかてさんの『』が、日本の歴史を素材とした最も優れた文学作品に与えられる第22回中山義秀文学賞を受賞しました。
 葛飾北斎の娘で自らも絵師であった葛飾応為を描いたこの作品、選考委員から「偉大な父親の背中を追い、西洋画の遠近法や光と影の描写にも果敢に挑戦しておのれの道を突き進む懸命さ、葛藤と苦悩に真正面から取り組んだ姿勢がいい」と高く評価され、すでに7刷まで版を重ねています。
 朝井さんは美術館で本書のカバー装画でもある応為作「吉原格子先之図」を見て、浮世絵離れしたモダンな表現方法と美しさに息を呑み、その場で彼女を描くことを決意したと言います。完全な一目惚れでしたが、どうやら応為の方も朝井さんを見初めたよう。「わたしだけの表現をする、わたし自身になりたい」と願って画業一途の生涯を送る女絵師の姿が、朝井さんのそれとぴたり重なるのです。
 日常から離れた年末年始のひととき、相思相愛ふたりの創作者が放つ甘美な熱に触れ、思うさま「くらっ」としてみませんか?

波 2017年1月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

朝井まかてアサイ・マカテ

1959(昭和34)年大阪府生れ。甲南女子大学文学部卒。2008(平成20)年小説現代長編新人賞奨励賞を受賞して作家デビュー。2013年に発表した『恋歌』で本屋が選ぶ時代小説大賞、翌2014年に直木賞を受賞。続けて同年『阿蘭陀西鶴』で織田作之助賞を受賞した。2015年『すかたん』が大阪ほんま本大賞に選出。2016年『眩(くらら)』で中山義秀文学賞、2017年『福袋』で舟橋聖一文学賞、2018年『雲上雲下』で中央公論文芸賞、『悪玉伝』で司馬遼太郎賞、大阪文化賞(個人に贈呈)をそれぞれ受賞。2020(令和2)年『グッドバイ』で親鸞賞、2021年『類』で芸術選奨文部科学大臣賞、柴田錬三郎賞をそれぞれ受賞。その他の著書に、『輪舞曲(ロンド)』『白光』『ボタニカ』などがある。

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