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祝・山本七平賞受賞! 現役大使が書いた傑作評伝。

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 第28回山本七平賞を受賞した冨田浩司さんの『マーガレット・サッチャー―政治を変えた「鉄の女」―』。例年の受賞作と一味違う注目が集まった理由は、一つには著者が現役の外交官であり、しかも現在難しい舵取りが求められる駐韓国日本大使という要職にあること。もう一つは、著者があの三島由紀夫の義理の息子だということです。韓国メディアでは、新しい日本大使は「極右作家の娘婿」などと騒がれたりもしました。
 しかし、本書を読み始めれば、そのような事実は「雑音」に過ぎないと気付くはずです。冒頭のエピソード、すなわち英国の日本大使館で公使をしていた著者が高級ホテルのレストランでサッチャーと邂逅する場面は、まさに映画のワンシーンのような鮮やかさで、一気に作品世界に引き込まれます。読書家なら、直ちにその卓越した筆力を認めることでしょう。
 賞の選考委員たちが注目したのは、次の一節です。「サッチャーは人間としての器においてチャーチルには遠く及ばない。しかし……彼女が成し遂げたことの高みは――「良きにつけ、悪しきにつけ」という注釈付きであったとしても――チャーチルを確実に凌駕する」。なぜ第二次大戦の英雄よりも、嫌われ者だった女性宰相の評価が高いのか。ベテラン外交官の真意を、ぜひ本書でご確認下さい。

波 2020年1月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

冨田浩司トミタ・コウジ

1957年、兵庫県生まれ。東京大学法学部卒。1981年に外務省に入省し、総合外交政策局総務課長、在英国日本大使館公使、在米国日本大使館次席公使、北米局長、在イスラエル日本大使を経て、2018年8月からG20サミット担当大使。英国には、研修留学(オックスフォード大学)と2回の大使館勤務で、計7年間滞在。著書に『危機の指導者 チャーチル』(新潮選書)。

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