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いま注目の1冊!

第160回芥川賞受賞作! 新感覚ボクシング小説。


 第160回芥川賞を受賞した町屋良平さんの『1R1分34秒』、タイトルにぴんと来た方もいらっしゃるかもしれませんが、そう、ボクシング小説です。タイトルの由来は最後に明かされるのでここでは伏せますが、ボクシングを題材にした小説や漫画、映画の名作が数多くあるなかで、本作がとても現代的である、と言われる理由は主人公のボクサー像にあるのではないでしょうか。
 デビュー戦を初回KOで飾ってから二敗一分と振るわない21歳プロボクサーの「ぼく」はさらなる敗戦を重ね、「当たったかもしれなかったパンチ」「耐えられたかもしれなかったダメージ」「これをしておけば勝てたかもしれない練習」を自問自答しつづける日々を送っています。
 なんでボクシングをやっているのか? それさえも見失いかけていたところに新しいトレーナーと出会い、自らのなかに眠る勝利への渇望をよみがえらせていく……。その過程を思考と身体感覚の両面から見事に描き出した本作を読んで、プロボクサーの村田諒太選手は、「僕は、いつしか作品世界に自分の姿を見ているような感覚になった」と書評に記しています。ボクシングの体感を直に伝える、ことばの力に身をゆだねてお楽しみいただけたら、と思います。

波 2019年4月号「新潮社の新刊案内」より

著者紹介

町屋良平マチヤ・リョウヘイ

1983(昭和58)年、東京都生れ。2016(平成28)年「青が破れる」で文藝賞を受賞。2019年「1R1分34秒」で芥川賞受賞。他の著書に『ショパンゾンビ・コンテスタント』『しき』『ぼくはきっとやさしい』『愛が嫌い』『ふたりでちょうど200%』『ほんのこども』などがある。

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