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今月の表紙の筆蹟/イラストは、西加奈子さん。

波 2021年11月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2021/10/27

発売日 2021/10/27
JANコード 4910068231116
定価 100円(税込)
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赤坂憲雄/「国家」に抗する「海の民」

結城真一郎『救国ゲーム』
千街晶之/最新のテクノロジーと偉大な遺産

本城雅人『黙約のメス』
縄田一男/「きれいな体」への祈りと約束
【新潮文庫「重松清の本」フェア記念エッセイ】
重松 清/「最泣」って、「さいなき」でいいのかもね。
【短篇小説】
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【私の好きな新潮文庫】
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 中村文則『悪意の手記
 太宰 治『人間失格
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【今月の新潮文庫】
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【コラム】
[とんぼの本]編集室だより

譚 ろ美『中国「国恥地図」の謎を解く』(新潮新書)
譚 ろ美/「国恥地図」を知れば、中国人の頭の中が分かる

三枝昴之・小澤 實/掌のうた
【新連載】
春画ール/春画の穴
【連載】
ジェーン・スー/マイ・フェア・ダディ! 介護未満の父に娘ができること 第14回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第23回
大木 毅/指揮官たちの第二次世界大戦 将星の横顔をみる 第5回
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二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第12回
川本三郎/荷風の昭和 第42回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟/イラストは、西加奈子さん。

◎Eテレ「遠藤周作 封印された原稿」は、昨年発見された小説『影に対して』をめぐる刺激的なドキュメンタリー。就中なかんずく、作中の母親が息子に宛てた、〈アスファルトの道は安全だけど振り返っても足跡が残っていない。砂浜は歩き難いけれど足跡が残る〉旨の手紙が印象的でした。小説は未発表でしたが、後年このフレーズを遠藤さんが自分の息子へ語っていたことも明かされます。
◎子息・龍之介さんはテレビ局に就職する際、父から「俺は砂浜を歩いてきたが、お前はサラリーマンというアスファルトの道を歩くのか。足跡が残らないぞ」。入社後、今度は「アスファルトの歩き心地はどうだ」と訊かれたので、「歩き心地はいいんですが、お父様の嗅いだことのない排気ガスの匂いも嗅いでおります」と答えた由。いかにもマスコミの人間らしい減らず口が楽しい。
◎龍之介さんは父を回想しながら、「生きていると必ず、弱き者や恵まれない者と出会う。その時、どういう感慨を持つか、持たないかにかかっている」とも洩らします。実に遠藤周作らしい教えで、『沈黙』のキチジロー、『人生の踏絵』の無力な男イエス・キリスト、「影に対して」の父母などを思い起させて感動的。
◎砂浜を歩き、弱き者を思う生き方とは? 昔、僕が長崎で鮨屋の主人(遠藤さんの劇団の一員)に聞いた話。「毎回、最初の稽古で先生が『今日から公演が終わる迄は人生を愉しみたい。生活も大事だけど、生活を忘れて人生を大いに愉しんで下さい』と挨拶された。この言葉を自分の人生に活してきたつもりです。生活の安定第一だった私が、生活より人生を優先すべきなんだ、例えば死ぬ時にどれだけ豊かな心で死ねるかだなあ、と思うようになりました」
▽次号の刊行は十一月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。