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今月の表紙の筆蹟は、筒井康隆さん。

波 2021年3月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2021/02/27

発売日 2021/02/27
JANコード 4910068230317
定価 100円(税込)
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【筒井康隆掌篇小説館】
筒井康隆/官邸前
阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第42回
筒井康隆『ジャックポット
松浦寿輝『わたしが行ったさびしい町
[往復書簡]筒井康隆×松浦寿輝/「大当たりの年」の手紙

【松尾 潔『永遠の仮眠』刊行記念】
[対談]松尾 潔×岩田剛典/仄暗い間接照明の下で
山田詠美『血も涙もある』
長嶋 有/比喩通り

酒井順子『処女の道程』
北村紗衣/昔から、処女であり続けることに価値は全くなかった

黒川 創『ウィーン近郊』
堀江敏幸/近郊にひろがる神話としての現在

岸 政彦『リリアン』
浅生 鴨/僕たちは綻びを抱えたまま

佐藤賢一『日蓮』
横内謙介/「熱狂の宗教家」日蓮の素顔

彩瀬まる『草原のサーカス』
彩瀬まる/間違う人を書くということ

小島一志『純情―梶原一騎正伝―』
今田耕司/まるでマンガのような“純”な人生

アンデシュ・ハンセン、久山葉子 訳『スマホ脳』(新潮新書)
池上 彰/「やっぱり」と「なんだ、なんだ」

稲泉 連『廃炉―「敗北の現場」で働く誇り―』
永瀬隼介/未曾有の困難に立ち向かう人々の記録

岩波 明『発達障害はなぜ誤診されるのか』(新潮選書)
岩波 明/医師の主観に左右される疾患

【早野龍五『「科学的」は武器になる―世界を生き抜くための思考法―』】
[対談]早野龍五×新井紀子/原発事故10年、コロナ禍に語る「ビジネスと教育と科学的思考」
【国分 拓『ガリンペイロ』刊行記念特集】
国分 拓/彼は最年少のガリンペイロだった
ヤマザキマリ/男たちが金塊に託した夢
城山三郎『少しだけ、無理をして生きる』
[講演再録]城山三郎/城山三郎、NHK大河ドラマ「青天を衝け」主人公渋沢栄一を語る

【愛酒エッセイ】
佐藤隆介/ある名無し酒の話

【特別エッセイ】
朝井リョウ/『正欲』執筆日記(2)

【私の好きな新潮文庫】
たられば/「それでも変わらないもの」を伝える三冊
 白洲正子『私の百人一首
 阿刀田高『源氏物語を知っていますか
 田辺聖子『文車日記
【今月の新潮文庫】
南 綾子『結婚のためなら死んでもいい』
石神賢介/シングルをこじらせて
【コラム】
[とんぼの本]
とんぼの本編集室だより

緑 慎也『認知症の新しい常識』(新潮新書)
緑 慎也/認知症克服への実践的ノウハウ

三枝昂之・小澤 實/掌のうた
【連載】
ジェーン・スー/マイ・フェア・ダディ! 介護未満の父に娘ができること 第6回
永田和宏/あなたと出会って、それから…… 第15回
南沢奈央 イラスト・黒田硫黄/今日も寄席に行きたくなって 第15回
二宮敦人/ぼくらは人間修行中 第4回
小松 貴/にっぽん怪虫記 第15回
川本三郎/荷風の昭和 第34回
編輯後記 いま話題の本 新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、筒井康隆さん。

川本三郎さんの『『細雪』とその時代』が出ました。著者は本誌「荷風の昭和」、『荷風と東京』など荷風論、東京論の第一人者。それが谷崎、しかも阪神間が舞台の大長篇小説を論じる。面白そう。この本の前にと慌てて関西移住後の谷崎を数冊読みました。
◎流石に何れも名品、早速『細雪』の妙子の赤痢の便を受けるの話から、『少将滋幹の母』のさる侍従の御虎子を盗む疑似食糞譚、さらに『少将〜』冒頭の嘘泣き(落語「お茶汲み」そっくり)と末尾の涙などをご紹介したかったのですが、別の話を。
◎『細雪』を回顧して、作者は「本当は上方の上流の人々の不道徳や不倫も描きたかったが当局の目があるので筆が憚られた」旨を述べています。戦争中あの豪奢な小説が当局からさんざん睨まれてきたのはご存じの通り。その谷崎が戦後になって、改めて上方上流階級の醜聞へと踏み込んだのが「週刊新潮」創刊号から連載した『おうとう綺譚』でした。勿論、尊敬する荷風の『ぼく東綺譚』の向うを張った題名。片や隅田川の東、此方京都鴨川の東側での奇妙な話の意。
◎「週刊新潮」は文豪の話題作として創刊号の表紙に大きく謳います。しかしモデルのQ夫人の猛抗議に遭って(編集部へも乗り込んだ由)第六回で中断。このへんカポーティの『叶えられた祈り』(川本三郎訳)みたいな成り行きですが、しぶとい谷崎はこの後Q夫人の詩集に歌を寄せ、さらに傑作『瘋癲老人日記』等を書き続けました。
◎右の顛末は、京都生れの編集者伊吹和子さんの名著『われよりほかに』に詳しいです。小社が契約をしていた京都のホテルになぜか伊吹本が飾られており、出張中の僕がフロントで理由を訊くと……ああ紙幅がない。
▽次号の刊行は三月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。