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今月の表紙の筆蹟は、村上春樹さん。

波 2020年9月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2020/08/27

発売日 2020/08/27
JANコード 4910068230904
定価 100円(税込)
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編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、村上春樹さん。

◎映画やTVを見ていて、机上の本や本棚が写ると反射的に目が行きますよね。渡邉恒雄主筆のインタビュー番組でも、新海誠監督のアニメ映画でも同じ。覗き見趣味?
◎言い訳をすれば、登場人物がどんな本を読むかは、喋り方や服装同様、彼らの性格に大きな意味を持つはずです。逆に言うと、作り手は画面に写る本に神経を使っているわけで、例えば森田芳光監督の「間宮兄弟」には、人物への興味や理解をぐっと深める印象的な本棚が出てきたのを覚えています。
◎写真の中の本だと、水着姿(二種類)のマリリン・モンローがジョイス『ユリシーズ』を読んでいる1952年の写真が有名。取合せの妙から神話化されて、三〇年後、モンロー好きの学者が撮影したイヴ・アーノルドへ問合せをするまでになりました。イヴ曰く、モンローは『ユリシーズ』を車に乗せて、ずっと愛読していた。理解を深めようと声に出して読んだ時期もある。頭から順を追って読むのではなく、その都度パッと開いた箇所から読んでいった由。
◎スタアは大変で、モンローが本棚に遺した四三〇冊も公表されています。そのリストは実に幅広く、ジョイス、プルーストキャロルロレンスマン、ロシアの文豪達、ベケット、『資本論』、フロイト等々、さらには多くのアメリカ文学。興味深いのは、彼女の親友かつ理解者を任じていたカポーティの本がないこと。彼がライバル視し、あるいは罵ったT・ウィリアムズやメイラーやケルアックなどはあるのに。女優は作家(『ティファニーで朝食を』の主役はモンローが演るべきだったと主張し続けた)をどう思っていたのかを想像しながら、あの名品『うつくしい子供』を読み返してみます。
▽次号の刊行は九月二十八日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。