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今月の表紙の筆蹟は、山田章博さん。

波 2020年7月号

(毎月27日発売)

100円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2020/06/27

発売日 2020/06/27
JANコード 4910068230706
定価 100円(税込)
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[新潮新書]
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小松 貴/にっぽん怪虫記 第7回
永田和宏/あなたと出会って、それから…… 第7回
川本三郎/荷風の昭和 第26回
編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙の筆蹟は、山田章博さん。

佐藤優さんのオンライン 新潮講座〈コロナ後の民主主義〉に参加しました。テキストはホブズボーム『20世紀の歴史』とカミュペスト』。講義中にふと(つい別のことも考える)、『ペスト』のエピグラフには他の本で見覚えがあるのに気づきました。
大岡昇平さんの『俘虜記』のエピグラフが、『ペスト』から孫引きした、「或る監禁状態を別の監禁状態で表わしてもいいわけだ デフォー」でした。カミュが例えば〈戦時下の状況〉を疫病が蔓延する封鎖都市に仮託したように、収容所の生活を描くことで〈GHQ占領下の日本〉を諷刺する意図を作者はほのめかしているわけですね。
◎大岡さんはこのエピグラフという西洋小説の匂いのする形式が好きで、『武蔵野夫人』には「ドルジェル伯爵夫人のような心の動きは時代おくれであろうか ラディゲ」、『花影』に原語で記されているのを訳すと「覚えていて下さい、私の名はピア。シエナで生れ、マレンマで死にました ダンテ」、『野火』は「たとひわれ死のかげの谷を歩むとも ダビデ」(これは中村真一郎『死の影の下に』への対抗意識からつけられた)。決まってますよねえ。内容を暗示し、華やかで、意味深長に読者を誘惑してくる。
◎もう一つ、巻頭を飾るものに〈献辞〉があります。J・アーヴィングの『ガープの世界』で、作家のガープは新作を書き上げたのに「この本を献げる人間が見つからない」と悩みます。「だれにも献げてないのはみたいですからね」。アメリカの作家はそんなことで悩むのかと吃驚しますが、大岡さんには献辞にも胸をうつ名作(?)があって、『レイテ戦記』の扉裏に曰く――「死んだ兵士たちに」。
▽次号の刊行は七月二十八日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。