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今月の表紙は、横山秀夫さん。

波 2019年3月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2019/02/27

発売日 2019/02/27
JANコード 4910068230393
定価 102円(税込)
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阿川佐和子/やっぱり残るは食欲 第18回
【横山秀夫『ノースライト』刊行記念特集】
[インタビュー]横山秀夫/川の流れに戻っていく
池上冬樹/円熟味をました熱き激しい物語
【村上春樹『騎士団長殺し』文庫化記念特集】
高橋一生/「騎士団長殺し」に出会う
矢部太郎/「騎士団長殺し」と僕
トルーマン・カポーティ/著 、小川高義/訳『ここから世界が始まる―トルーマン・カポーティ初期短篇集―』
小野正嗣/作家をより深く知ることへの欲望と怖れ

ジェイ・ルービン/編 、村上春樹/序文『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29』
ジェイ・ルービン(由尾 瞳/訳)/とにかく良い作品を集めたかった

宮川サトシ『母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。(新装版)』
佐藤 優/母に見守られながら仕事をする

NHK「クローズアップ現代+」取材班『アラフォー・クライシス―「不遇の世代」に迫る危機―』
渡辺隆文/希望なき人生の中盤戦

ケイトリン・ドーティ/著 、池田真紀子/訳『世界のすごいお葬式』
井上理津子/清々しい葬送紀行

加藤 廣『家康に訊け』
紫野京作/加藤廣さん最後の小説構想

北迫 薫『夜間飛行』
芳地隆之/郷愁だけではない語りの魅力

阿川せんり『ウチらは悪くないのです。』
阿川せんり/ウチらは波にのるのです。

辻 惟雄/著 、山下裕二/著『血と笑いとエロスの絵師 岩佐又兵衛』(とんぼの本)
ミヤケマイ/花は紅 柳は緑 岩佐又兵衛
山下洋輔『猛老猫の逆襲』
[インタビュー]山下洋輔/初めて出会うものに、いまだにワクワクします

松田雄馬『人工知能はなぜ椅子に座れないのか―情報化社会における「知」と「生命」―』(新潮選書)
[対談]松田雄馬×楠木 建/そのAI、本当に必要?

【特別企画】
[対談]五木寛之×泉 麻人/トリローがいた時代

【短編小説】
北村 薫/つき 前篇
【今月の新潮文庫】
武田砂鉄『紋切型社会』
山田ルイ53世/感染恐れ封印、読んで後悔!?
【コラム】
三枝昂之・小澤 實/掌のうた
とんぼの本編集室だより

倉本 聰/著 、碓井広義/著『ドラマへの遺言』(新潮新書)
碓井広義/巨匠の「ドラマ渡世」をぜんぶ聞く
【連載】
ブレイディみかこ/ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 第15回
古市憲寿/ニッポン全史 最終回
保阪正康/昭和史の陰影 第3回
土井善晴/おいしく、生きる。 第5回
大塚ひかり/女系図でみる日本争乱史 第8回
伊藤比呂美/URASHIMA 第10回
はらだみずき/やがて訪れる春のために 第3回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第108回
川本三郎/荷風の昭和 第10回
曽野綾子/人間の義務について 第2回
編輯後記 新潮社の新刊案内 編集長から

立ち読み

編集長から

今月の表紙は、横山秀夫さん。

◎ご存じのように村上春樹さんの『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』では、「僕」のいる世界と「私」の世界が交互に語られます。村上さんのことだから、この作品も当然英語に訳されているのですが、原文だと一目瞭然のこの違いを(一人称の違いで、そこで語られる世界のカラーの差異だって日本の読者は敏感に感じ取れる)、「I」という一人称しか持たない言語への翻訳者はどう訳し分けたか?
ジェイ・ルービンさんのエッセイで知ったのですが、ルービン氏同様村上文学の翻訳者として知られるアルフレッド・バーンバウムさんは、「僕」の章の地の文を現在形で、「私」の方は過去形で訳した!
◎大学の初等フランス語の講義で「小説は基本的に単純過去か前過去で書かれる」と習い、仏語はまるで物にならなかったのに、この一点だけは記憶しています。しかしやはり授業で読んだヘミングウェイは現在形を多用していて、その効果に(場面や心理が不安定になり、時の超越や死の雰囲気が立ち込めてくる)へええと唸りました。
◎その後『海辺のカフカ』に出会います。これは現在形の「僕」と、過去形の「ナカタさん&星野君」の章が交互に出てくる長篇小説。まさに「僕」の思春期らしい不安定、濛々たる死の気配、超越性などの面で現在形は抜群の効果を挙げています。
◎今月刊のルービン編『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短篇29』を読んで、右のようなことを思い返していました(村上春樹さんが収録作を軸に日本文学を深く論じた序文も必読)。原著(英語版)に収められた訳文のエコーとして、新しい日本文学が生み出されるかもしれないと考えながら。
▽次号の刊行は三月二十七日です。

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。