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今月の表紙の筆蹟は佐藤多佳子さん。そしてニッポン放送第3スタジオです。
[佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』刊行記念座談会]

波 2016年10月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2016/09/27

発売日 2016/09/27
JANコード 4910068231062
定価 102円(税込)


【新連載】平岩弓枝/なつかしい面影

[佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』刊行記念座談会]
佐藤多佳子×アルコ&ピース(平子祐希&酒井健太)/深夜ラジオの流れる青春小説

[綿矢りさ『手のひらの京』刊行記念インタビュー]
綿矢りさ/こういう小説をずっと書きたかった

くるり+宇野維正『くるりのこと』
松任谷由実/くるりへの伝言

辻原 登『籠の鸚鵡』
中条省平/途方もないクライム・ノヴェル

トンミ・キンヌネン、古市真由美/訳『四人の交差点』(新潮クレスト・ブックス)
青山七恵/迷い子たちの家

原田マハ『デトロイト美術館の奇跡』
鈴木京香/胸の鼓動が高まる出会い

[井上 都『ごはんの時間―井上ひさしがいた風景―』刊行記念インタビュー]
井上 都/確かにそこにあった家族の思い出

村上春樹『職業としての小説家』(新潮文庫)
中島京子/個人的な見解を正直に述べさせていただければ

花房観音『花びらめくり』(新潮文庫)自著解説
花房観音/私の仕事はセックスを書くことです

小川 忠『インドネシア イスラーム大国の変貌―躍進がもたらす新たな危機―』
小川 忠/米中が注目するインドネシアの「イスラーム化」

彩瀬まる『朝が来るまでそばにいる』
住野よる/異なるものに手を伸ばす

七河迦南『わたしの隣の王国』
千街晶之/本格ファン必読、“夢の国”のミステリ

詠坂雄二『人ノ町』
村上貴史/とにかく“当たり前じゃない”ミステリ

梶よう子『五弁の秋花―みとや・お瑛仕入帖―』
北上次郎/橋を渡れないからこそ舟を漕ぐ

更科 功『爆発的進化論―1%の奇跡がヒトを作った―』
更科 功/生と死と生物と無生物

[没後20年企画 遠藤周作]
【講演】遠藤周作/ある小説が出来あがるまで――『沈黙』から『侍』へ

[原武史/監修、日本鉄道旅行地図帳編集部/編『昭和天皇 御召列車全記録』刊行記念対談]
原 武史×保阪正康/全貌が明らかになった「天皇の旅路」

一青 妙『わたしの台湾・東海岸―「もう一つの台湾」をめぐる旅―』
一青 妙/びっくりの出会いがたくさん!

二宮敦人『最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常―』
高野秀行/東京藝大は日本のアマゾンだ!

[竹宮惠子、原田マハ、石田美紀、寺山偏陸、さいとうちほ、勝谷誠彦『竹宮惠子カレイドスコープ』刊行記念インタビュー]
竹宮惠子/伝えたいことが強いほど描くことに熱心になれる

[浅生 鴨『アグニオン』刊行記念トーク]
浅生 鴨×吉田尚記/なぜ〈中の人〉は小説を書きはじめたのか

【コラム】
とんぼの本編集室だより

伊丹十三『女たちよ!』
原 幹恵/映画になった新潮文庫
小林秀雄賞・新潮ドキュメント賞 決定発表

【連載】
ジェーン・スー/生きるとか死ぬとか父親とか 第8回
山下洋輔/猛老猫の逆襲 山下洋輔旅日記 第7回
堀本裕樹、穂村弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第38回
津村記久子/やりなおし世界文学 第29回
荒山 徹/歴史の極意・小説の奥儀 第19回
森 功/暗黒事件史 日本を変えた犯罪者たち 第9回
大澤真幸/山崎豊子の〈男〉 第8回
木皿 泉/カゲロボ日記 第30回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第79回
佐藤賢一/遺訓 第10回
ミランダ・ジュライ(岸本佐知子訳)/最初の悪い男 第7回

編集室だより  新潮社の新刊案内  編集長から  カット 水上多摩江

立ち読み

編集長から

今月の表紙は佐藤多佳子さん

◇表紙は佐藤多佳子さんの筆跡、そしてニッポン放送第3スタジオです。ここは佐藤さんの書下し長篇小説『明るい夜に出かけて』(表紙の印象的な二行は作中からの引用)に重要な役割で登場する深夜番組「アルコ&ピースのオールナイトニッポン」で使われていたラジオブース。「日中と深夜ではブースに流れている空気が違いますから」と局の方に教えられ、本番直前に撮影しました。小説は二〇一四年の春から始まる物語ですが、一四年春はこの番組が二部(午前三時からの放送)から一部(午前一時から)へ昇格した時でもあります。サイコなリスナーからのネタに溢れ、幾たびも神回を繰り返し、熱狂的ファンを生みながら、今年三月に終了。最終回の放送を終えた早朝、三百人以上のリスナーがアルピーにひと目会おうと放送局前へ駆けつける大騒ぎになりました。もはや伝説となったラジオ番組です。むろん、佐藤さんはヘビーリスナーでした(作中にはさらに伊集院光や爆笑問題、くりぃむしちゅー、おぎやはぎ等々のラジオ番組が出てきます)。
◇『明るい夜に出かけて』は、佐藤さんの小説らしい、才能という厄介なものを持った若者の物語です。それを持ったからといって、人生を楽に生きられるわけではない自分の才能と向き合いながら、他者と心を通わせることで世界と微妙な折り合いをつけていきます。二十歳になる大学休学中・コンビニでバイト中の主人公富山くんの才能とは〈面白いネタを思いつけること〉で、大学ではお笑いサークルに入っていたし、深夜ラジオのハガキ職人でもあります。彼は、出会うはずのなかった仲間たちと出会い、さまざまな思いを抱えて夜の町(金沢八景のあたり)を歩いていきます。アルコ&ピースのお二人と作者との対談で、この傑作の魅力の一端を感じて下さい。
◇今月から平岩弓枝さんの連載エッセイ「なつかしい面影」が巻頭を飾ります。食べものや異性との関係や読書体験で人生を辿り直す型の自伝があるように、これもまた平岩さんが出会ってきた師友を回想する形式での自伝と呼べるかもしれません。

◇新潮社ホームページ、リニューアル!
http://www.shinchosha.co.jp/
◎新シリーズ「村上柴田翻訳堂」刊行中。
http://www.shinchosha.co.jp/murakamishibata/

バックナンバー

雑誌バックナンバーの販売は「発売号」と「その前の号」のみとなります。ご了承ください。

雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。