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[佐野洋子『私の息子はサルだった』刊行記念特集]

波 2015年6月号

(毎月27日発売)

102円(税込)

雑誌の仕様

発売日:2015/05/27

発売日 2015/05/27
JANコード 4910068230652
定価 102円(税込)


[佐野洋子『私の息子はサルだった』刊行記念特集]
角田光代/母の時間、子の時間

内田春菊/読めて幸せ

舞城王太郎『淵の王』
藤田貴大/闇、黒、光。

山田詠美『時計じかけの熱血ポンちゃん』
平松洋子/「熱血」の核にあるもの

[新潮文庫『日本文学100年の名作』完結記念座談会]
池内 紀×川本三郎×松田哲夫/100年の文学宇宙

田牧大和『八万遠』
村上貴史/今すぐ続篇を切望したくなる一冊

西原理恵子、佐藤優『とりあたま大学―世界一ブラックな授業!編―』
先崎 学/お互いよく生き残ったなあ

[『鬼忘島―金融捜査官・伊地知耕介―』刊行記念インタビュー]
江上 剛/人を再生させる島

松尾佑一『彼女を愛した遺伝子』
今野 浩/ポスドクの危うい研究生活

石田 千『唄めぐり』
河内家菊水丸/歌い継がれた歴史の記録

マルセル・プルースト、角田光代、芳川泰久/編訳『失われた時を求めて 全一冊』
太田 光ほか/世界文学最大・最強の長篇小説の画期的縮約版刊行!

ジェームズ・D・ワトソン他『二重螺旋 完全版』
青木 薫/生命の本質に肉薄するドラマ

高野 潤『アマゾン 森の貌』
木村秀雄/密林の闇のエネルギー

平井理央『楽しく、走る。』
平井理央/「友ラン」×「旅ラン」

[『ますます! 東京ひよっ子3人暮らし ~イヤイヤ大魔王降臨!試練の2さいくん編~』刊行記念インタビュー]
たかはしみき/子育てに、ムダなことなんてなかった!

[追悼・船戸与一さん]
高野秀行/ゼロ度の男

[追悼・白川道さん]
中瀬ゆかり/心を焦がした流星

伊東ひとみ『キラキラネームの大研究』
伊東ひとみ/キラキラネームの謎を追う“旅”

[訳し下ろし短篇]
テジュ・コール(木原善彦訳)/シルバーベルク変奏曲

【新潮選書フェア】
新潮選書 「戦後70年」を考える 私のこの一冊

長勢了治『シベリア抑留―日本人はどんな目に遭ったのか―』
保阪正康/シベリア抑留の全体図を示す

中嶋猪久生『石油と日本―苦難と挫折の資源外交史―』
太田 博/国際政治に翻弄される資源外交

大平 徹『「ゆらぎ」と「遅れ」―不確実さの数理学―』
西成活裕/不確かなものとの付き合い方

茂木健一郎『生命と偶有性』
南 直哉/ありえるはずのニルヴァーナ

芳川泰久『謎とき『失われた時を求めて』』
芳川泰久/私をヴェネツィアに連れ出した「私」のたくらみ

新潮選書ベスト・セレクション2015

第28回三島由紀夫賞・山本周五郎賞決定発表

【コラム】
とんぼの本 編集室だより

井上ひさし『父と暮せば』
原 幹恵/映画になった新潮文庫

三橋曉の海外エンタ三つ巴

【連載】
堀本裕樹、穂村 弘/俳句と短歌の待ち合わせ 第22回
荒山 徹/歴史の極意・小説の奥儀 第3回
橘 玲/残酷すぎる真実 第4回
津村記久子/やりなおし世界文学 第13回
ドリアン助川/ニューヨーク・サン・ソウル 第7回
石原千秋/漱石と日本の近代 第24回
瀧井朝世/サイン、コサイン、偏愛レビュー 第63回
森 まゆみ/子規の音 第17回
A・A・ミルン作、阿川佐和子訳/ウィニー・ザ・プーと魔法の冒険 第3回
末盛千枝子/父と母の娘 第15回
木皿 泉/カゲロボ日記 第14回
津村節子/時のなごり 第45回

編集室だより 新潮社の新刊案内 編集長から

編集長から

今月の表紙の筆蹟は佐野洋子さんです。

◇今月の表紙の筆蹟は佐野洋子さんです。逝去されて四年余、仕事場の遺品の中から未発表原稿の束が発見され、このほど新刊『私の息子はサルだった』として刊行されました。タイトルはご遺族と編集部が相談の上、決めたものですが、原稿用紙に綴られていたのはまさにご子息・広瀬弦さんの成長の記ともいうべき内容の作品でした。かつてエッセイで「私はみっともない母親であった」と吐露し、子供は親が育てるのではなく、親を育ててくれるものだと書き記した佐野さん。この本には、ケンと名付けた息子の幼少期から思春期までの姿が、友情、恋などを素材に瑞々しく描き出されています。巻末の「あとがきのかわり」で、広瀬さんは佐野さんの作品に登場することへの複雑な思いを率直に語っていますが、「私はうたがいもなく子供を愛している」という佐野さんの文章は童話のような味わいで読者を愉しませてくれます。
 写真は、現在は事務所になった佐野さんのご自宅で撮影しました。原稿の横に写っているのは束見本(書籍の仕上がり確認用に作る中身は白紙の見本)に描かれていたデッサンで、一部が本文中に収録されています。愛くるしい目線を送ってくれた猫は、ご子息の愛猫アーケロン。七月には「『100万回生きたねこ』から『シズコさん』まで」の軌跡をたどる「まるごと佐野洋子展」が神奈川近代文学館で開催されます。
◇四月は悲報が相次いだ月でした。エンターテインメント界の名匠二人、船戸与一さんと白川道さんは小社で新刊を上梓されたばかりなだけに、まさかの訃報に打ちのめされました。そして、『ウォークライ』『茶色い戦争』などの名品を遺された笠原淳さん。「杢二の世界」で芥川賞を受賞した直後に、小誌で高樹のぶ子さんと対談していただいています。読み返すと「小説っていうのは、書いていけばいくほど面白くなるものですね」「人間を恋うる心がなかったら、作家じゃないですよ」と熱っぽい語りが目に飛び込んできました。お三方のご冥福を心よりお祈りしたいと思います。

バックナンバー

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雑誌から生まれた本

波とは?

 1967(昭和42)年1月、わずか24ページ、定価10円の季刊誌として「波」は誕生しました。新潮社の毎月の単行本の刊行数が10冊に満たず、新潮文庫の刊行も5冊前後という時代でした。こののち1969年に隔月刊に、1972年3月号からは月刊誌となりました。現在も続く「表紙の筆蹟」は、第5号にあたる1968年春季号の川端康成氏の書「風雨」からスタートしています。

 創刊号の目次を覗いてみると、巻頭がインタビュー「作家の秘密」で、新作『白きたおやかな峰』を刊行したばかりの北杜夫氏。そして福田恆存氏のエッセイがあって、続く「最近の一冊」では小林秀雄、福原麟太郎、円地文子、野間宏、中島河太郎、吉田秀和、原卓也といった顔触れが執筆しています。次は大江健三郎氏のエッセイで、続いての「ブックガイド」欄では、江藤淳氏がカポーティの『冷血』を、小松伸六氏が有吉佐和子氏の『華岡青洲の妻』を論評しています。

 創刊から55年を越え、2023(令和5)年4月号で通巻640号を迎えました。〈本好き〉のためのブックガイド誌としての情報発信はもちろんのことですが、「波」連載からは数々のベストセラーが誕生しています。安部公房『笑う月』、遠藤周作『イエスの生涯』、三浦哲郎『木馬の騎手』、山口瞳『居酒屋兆治』、藤沢周平『本所しぐれ町物語』、井上ひさし『私家版 日本語文法』、大江健三郎『小説のたくらみ、知の楽しみ』、池波正太郎『原っぱ』、小林信彦『おかしな男 渥美清』、阿川弘之『食味風々録』、櫻井よしこ『何があっても大丈夫』、椎名誠『ぼくがいま、死について思うこと』、橘玲『言ってはいけない』、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』、土井善晴『一汁一菜でよいと至るまで』などなど。

 現在ではページ数も増えて128ページ(時には144ページ)、定価は100円(税込)となりました。お得な定期購読も用意しております。
 これからも、ひとところにとどまらず、新しい試みを続けながら、読書界・文学界の最新の「波」を読者の方々にご紹介していきたいと思っています。