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新海誠さん

山本文緒の小説は、人の心をのぞく窓だ。 誰かの心の秘密も、自分の心の謎も、僕は山本文緒から多くを学んだ。

窪美澄さん

悩んでもいい、立ち止まってもいい、回り道をしてもいい。 圧倒的包容力を持った傑作長編。

 

横澤夏子さん

すぐ周りの幸せを見てしまう私のような女性に読んで欲しい!

南沢奈央さん

30歳になる今、読めて良かった。めまいがする程ぐるぐる思考を巡らせた先に、一筋の希望を見せてもらいました。

 

浅野真澄さん

迷ったり、泣いたり、遠回りしながら、自分の気持ちに気づいていく。 主人公は私だ、と思った。

枡野浩一さん

最後の章を読み終えたとき喉を詰まらせて泣く自分自身に驚いた。 恋愛結婚小説であり、仕事小説でもあり、親子問題小説でも、高齢化社会問題小説でもある本作は、 エピローグでまた別のジャンル小説であることが判明し、さらに驚く。

story

32歳の与野都は、2年前まで東京でアパレルの正社員として働いていたが、更年期障害を抱える母親の看病のため、茨城県の実家に戻ってきた。今は牛久大仏を望むアウトレットモールのショップで店員として契約で働いている。地元の友だちは次々結婚したり彼氏ができたりする中で、都もモール内の回転寿司店で働く貫一と出会いつき合い始めた。でも料理が上手で優しいけれど経済的に不安定な彼と結婚したいかどうか、都は自分の気持ちがわからない。実家では両親共に体調を崩し、気づいたら経済状態が悪化していた。さらに職場ではセクハラ、パワハラいろいろ起きて――。恋愛をして、家族の世話もしつつ、仕事も全開でがんばるなんて、そんな器用なことできそうもない。ぐるぐる悩む都に貫一の放った言葉は、「そうか、自転しながら公転してるんだな」。

character

 みやこ

32歳。アパレル勤務。使えるお金はほとんど服飾代に注ぎ込む。東京で正社員として働いていた時は森ガールファッションだったが、家族の事情で茨城県牛久市の実家に戻り、近くのアウトレットモールで綺麗目系ショップの店員として契約で働いている。実家は三階建ての一軒家、五十代の父親と専業主婦の母親と同居。友人達からは不思議ちゃんと言われがち。意外に卓球が上手い。

羽島はしま 貫一かんいち

30歳。都と同じモールの回転寿司店で働く。実家は寿司屋。趣味は読書で、元ヤンキーだが蘊蓄好き。クイズ番組を見る時は回答者より先に正解を言いたいタイプ。温泉が好きで長風呂。

ニャン

貫一と同じ回転寿司店のアルバイト店員。ベトナム出身。器用貧乏という日本語を知った時、自分のことだと驚いた。髪型を変えがち。日本に来たら毛皮を着てみたいと憧れていた。

絵里

都の高校での同級生。2年前に結婚、共働き。姉御肌。婚活については一家言あり。

そよか

都の幼なじみ。同じ団地で育つ。文具メーカーの営業職。都と同時期に彼氏ができて、お互い恋の相談にのる。真面目で優しいが、やや理屈っぽい。

亀沢

都の働くショップの店長。社内結婚して二人の娘がいる。噂好き。良くも悪くも細かいことに気が回らない。好きなラーメンは家系。

東馬

都の働くショップのMD。無駄にイケメン。出世欲はあるが人望はない。

message

七年ぶりの新刊です。

私の頭の中のワーキングメモリーは低く、
日常で起こる様々な出来事に気が散りがちで、何をするにも時間がかかってしまいます。
自分以外の人はみんな器用で、ジャグリングをしながら軽やかに踊っているように見えます。
もっと集中力があったなら、もっと同時並行的に沢山のことをこなせたら、
もう少し早く原稿が書けるのでは、としばしば落ち込んでいました。

でも最近、それは勝手な思い込みなのかもしれないなと感じはじめました。
ジタバタしているところを見せないようにしているだけで、
誰もが多かれ少なかれ、毎日のように起こるイレギュラーな出来事に気を取られつつ、
落ち着かない心持で暮らしているんじゃないか。
そして自分も、出来ない出来ないと言いつつ、
振り返ると案外いろんなことをこなしてきたのではないか。

人は毎日、沢山のことを選択しています。
パートナー選び、仕事選び、住居選び。
朝起きたらその日に何を着るか、傘は持つのか持たないのか、お昼に何を食べるのか。
誰が好意を寄せてくれていて、誰に嫌われているのかを察して
角が立たないように次の行動を選ぶことも無意識にやっていたり。
そうやって立ち止まる間もなく、目まぐるしく動き、
混乱の日々を送っているのはみんな同じなのかもしれません。
そして頭も体も忙しいのに、心は意外と退屈だったりもして。
そんなふうなことを小説にできたらと思って書きました。

楽しんで読んで頂けましたら幸いです。

山本文緒さん直筆署名
book

『自転しながら公転する』

2022/11/01発売
1,045円(税込) 新潮文庫

ISBN:978-4-10-136063-8

山本文緒

幸せって一体何? お金? 結婚? 安定した仕事? 子供? 家を持つこと? ぐるぐる思い惑いながらも、ひたむきに幸せを追い求める姿に、胸が熱くなる! 答えのない問いを生きる私たちをやさしく包む、7年ぶりの新作長編。

profile
山本文緒さん

山本文緒

(1962-2021)神奈川県生れ。OL生活を経て作家デビュー。1999(平成11)年『恋愛中毒』で吉川英治文学新人賞、2001年『プラナリア』で直木賞、2021(令和3)年、『自転しながら公転する』で島清恋愛文学賞、中央公論文芸賞を受賞した。著書に『絶対泣かない』『群青の夜の羽毛布』『落花流水』『そして私は一人になった』『ファースト・プライオリティー』『再婚生活』『アカペラ』『なぎさ』『ばにらさま』『残されたつぶやき』『無人島のふたり』など多数。

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sns

“家族”をめぐる三つの物語 新装版

『アカペラ』

2020/9/28配本

祖父のため健気に生きる中学生。二十年ぶりに故郷に帰ったダメ男。共に暮らす中年の姉弟の絆。奇妙で温かい関係を描く三つの物語。


新海誠さんのコメント

こういう作品を作りたいのだと、読むたびに思う。