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この作品は、歴史小説を変えた! あの革新的エンタテインメント巨編がついに文庫化。

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 応仁の乱前夜、幕府が弱体化し混迷を極める京の町。天涯孤独の少年、才蔵は、二人のならず者に出会い、彼らから生きる術を学んでいく――。

 本作『室町無頼』は、これまで歴史時代小説であまり描かれることのなかった「室町時代」を舞台に描かれた画期的な作品です。

 ヒーロー無き世の中だからこそ、民衆が主役になれ、秩序無き時代だからこそ、何が起こるかわからないエキサイティングさがある。著者の垣根涼介氏は、呉座勇一氏の『応仁の乱』がブームになる以前からこの時代に目をつけ、徹底的に調べた史実を下敷きに、極上の歴史エンタテインメントを書き上げました。

 史実にも登場する二人の魅力的なはぐれ者、骨皮道賢と蓮田兵衛の奇妙な友情、才蔵が棒術の達人になるために経験する過酷な修業、民衆の思いがひとつになる血湧き肉躍る蜂起など、娯楽小説としての読みどころが満載の本作。しかしながら根底に流れるテーマは「混迷の世に、人はどう生きるか」という、現代人の悩みに通じるものです。

 それは、垣根さんが手がけたリストラ請負人の活躍を描く「君たちに明日はない」シリーズにも通じるものがあります。主人公の村上は、さまざまな企業のリストラに立ち会い、サラリーマンが会社という拠り所を失った時の選択を目にしてきました。

 室町という時代もまた、主君という拠り所を失った牢人たちが、自らの選択と自らの能力でサバイブすることを求められた時代でした。生きぬくために自分の能力を磨く才蔵、幕府の手下ながら自分で選択する道賢、組織に属さず常識を信じない兵衛。私たち読者にこの三人の無頼がとてもまぶしく感じられるのは、彼らが現代人にとっても理想的な生き方を見せてくれているからなのでは、と感じてしまいます。

 エンタメでありながら自らの人生を鑑みるきっかけをくれる傑作です。垣根さんご本人がつづる本作への思いも、ぜひお読みくださいませ。

[→]垣根涼介ホームページ

定時で帰る? とんでもない! とお怒りの人にこそ読んで欲しい!!
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朱野帰子/著 『わたし、定時で帰ります。』
 とある理由から"絶対に定時で帰る"ことをモットーにウェブ会社で働く会社員・東山結衣。彼女の前に立ちはだかるのは、無茶な仕事を振って部下を潰すブラック上司。チームとなった同僚達もくせ者揃いで「子どもの頃から学校を休んだことがなかった」というのが自慢の皆勤賞女、双子を出産後一ヶ月半で職場復帰した勝ち気なスーパーワーキングマザー、すぐに仕事を辞めたがる新人、会社に住み着いている非効率男、そして超ワーカホリックで、案件が燃えれば燃えるほどやる気が出てしまう元婚約者という顔ぶれだ。
 定時に帰る=仕事をしない人間と決めつけられるこの状況で、結衣は今まで通り定時退社を貫けるのか?

 仕事が忙しくない時は定時に帰れるかもしれないけれど、忙しい時は帰れない。というのが全ての社会人にとっての「あるある」だろう。けれど、そこで「仕方ない」と諦めないのがこの物語の主人公の良さだ。
 確かに、仕事が忙しすぎる時はある。けれど、人は忙しさに身を晒しすぎると、ある瞬間から「忙しくしていない自分は仕事をしていないのではないか」「もっと働かなくては」という恐ろしいスパイラルに嵌まっていき、やがて、体を壊すほど自分で自分を追い込んでしまう。
 そのヤバい一線を超えてしまう瞬間は、誰にとっても起こりうるのだ。
 そんな「過重労働」の怖さと逃げ方のヒントを本書は描いている。どうやって主人公が仕事の修羅場をくぐり抜けるかは、ぜひ本書を読んで確かめて欲しい。

「上司にこんなタイトルの本読んでるのバレたら、左遷されるよ」と、半ば諦めたように言った女性、「やりがいのことを考えたら、定時とか言ってられない」とタイトルを見ただけで怒った真面目な人、「定時に帰りたいとかいうヤツが嫌いだ」と反射的に口にした男性。 
 朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』は、そういう人たちにこそ読んでもらいたい小説だ。

 本書は4月からはTBS系で吉高由里子主演の火曜ドラマとして放送される。ぜひ、こちらも「定時で帰」って、楽しんで観ていただきたい。

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2019年02月15日   お知らせ / 今月の1冊
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