ホーム > 書籍詳細:決定版 三島由紀夫全集 第35巻

決定版 三島由紀夫全集 第35巻

三島由紀夫/著

6,380円(税込)

発売日:2003/10/10

  • 書籍

新発見、未発表作品を完全収録する決定版全集!

日本文化の一体性を保障する唯一の根拠を“文化概念としての天皇”に求めた「文化防衛論」、従来の文学史に対する果敢な挑戦「日本文学小史」等、昭和43~44年にかけての評論・エッセイ144編。

目次


文化防衛論
若きサムラヒのための精神講話
こひのぼり
ヴォリュプテの文学
古い春
デカダンス美術
編集後記 (「批評」)
「黒蜥蜴」について (「『黒蜥蜴』の舞台稽古……」)
序 (矢頭保写真集「裸祭り」)
源田実――こんな候補こんな人柄
フィルターのすす払ひ――日本文化会議発足に寄せて
妥協のない編集に脱帽する (「現代日本文学大系」推薦文)
書痴への贈物 (「名著複刻全集」推薦文)
第十一回空手道大会に寄せる……
五月革命
タイヤの片方
バレエ「憂国」について
ダリの葡萄酒
推薦のことば (「名作歌舞伎全集」)
クールな日本人 (桜井・ローズ戦観戦記)
可能性はまだまだ――現代の女形―丸山明宏
「聖女」と「煙草の害について」
解説 (「日本の文学40林房雄・武田麟太郎・島木健作」)
拳と剣この孤独なる自己との戦ひ
わが「自主防衛」――体験からの出発
無題 (ヘルマン・ラウシュニング著船戸満之訳「永遠なるヒトラー」推薦文)
「花ざかりの森・憂国」解説
電灯のイデア――わが文学の揺籃期
序 (丸山明宏著「紫の履歴書」)
日沼氏と死
機能と美
栄誉の絆でつなげ菊と刀
一つの苦い観点――芥川賞選評
無題 (「原色世界の美術」推薦文)
自衛隊と私
橋川文三氏への公開状
「蛇姫様」とその作者
秩序の方が大切か――学生問題私見
長寿の芸術の花を――川端氏の受賞によせて
偉大な私の先生
不満と自己満足
自衛隊生活のリズム
私の自主防衛論
世阿弥に思ふ――鼎談に参加して
「双頭の鷲」について
岸田国士氏の思ひ出
バレエ「ミランダ」について
本物の写真家
篠山紀信論
蕗谷虹児氏の少女像
自由と権力の状況
波多野爽波・人と作品
ALL Japanese are perverse
怪獣の私生活
光芒を放つ三作――谷崎賞選後評
わが愛する人妻――高木典子さん
私の近況――「春の雪」と「奔馬」の出版
無題週刊新潮掲示板 (「浪曼劇場……」)
軍服を着る男の条件
「道成寺」私見
マイリビング
日本の歴史と文化と伝統に立つて
作品の背景――「わが友ヒットラー」
無題 (「古沢岩美作品展」推薦文)
無題 (「われわれ……」)
解説 (「日本の文学4尾崎紅葉・泉鏡花」)
「戦塵録」について
月々の心
東大を動物園にしろ
現代青年論
維新の若者
私の読書術
北欧の町と海と――「永遠の旅人」川端さん
美を探究する非情な天才――三島由紀夫さんの魅力の周辺
「新千夜一夜物語」をすすめる (桃源社広告文)
民青の力こそ恐るべきものだ
「微細なるものの巨匠」
「わが友ヒットラー」覚書
反革命宣言
野性味秘めた駿馬 (西城・ゴメス戦観戦記)
楯の会の決意
「豊饒の海」について
鶴田浩二論――「総長賭博」と「飛車角と吉良常」のなかの
文学精神の低さ――芥川賞選評
高山辰雄の作画

壮麗なる“虚構”の展開
あとがき (「文化防衛論」)
自衛隊二分論
「豊饒の海」について……
川端文学の美――冷艶
「占領憲法下の日本」に寄せる
一貫不惑
あとがき (「不道徳教育講座」新装版)
男らしさの美学
生と芸術の真相日本文学大賞選評
「癩王のテラス」梗概
わたしがこんどの帝劇でやりたいこと…… (「癩王のテラス」広告文)
ホテル
一対の作品――「サド侯爵夫人」と「わが友ヒットラー」
砂漠の住民への論理的弔辞――討論を終へて (「討論三島由紀夫vs.東大全共闘」)
あとがき (「癩王のテラス」)
無題 (西尾幹二著「ヨーロッパ像の転換」推薦文)
無題 (「第十二回全国空手道選手権大会」推薦文)
感想 (広域重要人物きき込み捜査「エッ!三島由紀夫??」)
あとがき (「若きサムラヒのために」)
北一輝論――「日本改造法案大綱」を中心として
三島氏にズバリ10問
「人斬り」田中新兵衛にふんして
「癩王のテラス」について
「春の雪」について (「『春の雪』は、……」)
青春の渦中の人に推めたい
「人斬り」出演の記
ぼくは文学を水晶のお城だと考へる――一人だけの記者会見
日本文学小史
名誉ある懲戒を誇りに闘へ――発起人代表挨拶
大野明男氏の新著にふれて――情緒の底にあるもの
再び大野明男氏に――制度と「文化的」伝統
行動学入門
才気と的確さ――芥川賞選評
「春の雪」について (「プルウストは……」)
日本文化の深淵について
稲垣足穂頌
若さは一つの困惑なのだ
無題 (「椿説弓張月」)
三島由紀夫のファクト・メガロポリス
日本とは何か
宗谷真爾著「アンコール文明論」
空手の秘義
「皇女フェドラ」について
レコード化に当つて
谷崎賞にふさはしい作品――谷崎賞選後評
「国を守る」とは何か
「楯の会」のこと
「弓張月」の劇化と演出
「椿説弓張月」の演出
歌舞伎の脚本と現代語「椿説弓張月」を制作して
「楯の会」批判の二氏に答へる
STAGE-LEFT IS RIGHT FROM AUDIENCE
垂直のエロティシズム
著者・石原慎太郎氏のこと
解説 (「日本の文学52尾崎一雄・外村繁・上林暁」)
美食について
美しい殺人者のための聖書 (「日本の名著17葉隠」広告文)

 解題・校訂

書誌情報

読み仮名 ケッテイバンミシマユキオゼンシュウ35
シリーズ名 全集・著作集
全集双書名 決定版 三島由紀夫全集
発行形態 書籍
判型 四六判
頁数 810ページ
ISBN 978-4-10-642575-2
C-CODE 0395
ジャンル 全集・選書
定価 6,380円

書評

波 2003年12月号より 三島由紀夫全集の現在  決定版 三島由紀夫全集

田中美代子

 さしも広大な三島由紀夫の世界も、この十一月に、第三十六巻(評論十一)までまとめられて、一段落。平成十二年十一月の刊行開始からまる三年、私たちは山坂を越え、息もつかずにここまで登りつめた、という感慨が深い。
 今回の決定版全集は、没後の第一回全集を経て三十年、山中湖村に開設された三島由紀夫文学館の協力を得て、少年時代の習作、草稿、創作ノートなど、久しく待たれていた未公開資料が収録できたのは、何よりもうれしいことである。
 当時に比べて研究が充実深化するのは当然としても、三島文学には、これを取り巻く一種魔的な磁界があって、絶えずマニヤックな研究家、コレクターをひきよせるかのようであり、佐藤秀明、井上隆史、山中剛史氏をはじめ、編集協力の諸氏は、いずれも“考古学者の執念をもつ”資料発掘の鬼であり、時には古代文字解読のアクロバット的努力をも要して、全体像は雲間から徐々にその威容を現しつつある。
「全集には断簡零墨まで収録すべし」というのが、そもそも旧全集からの著者の遺言だが、無論これは“三島由紀夫ならでは”の自負の言と読める。四方に飛び散った飛沫の一粒々々が、ことごとく小さな光を宿して燦めくように、呪術にかかった言葉たちは読者の魂を痺れさせ、誰しも一滴まで、その醍醐味を追求せずにはいられないのだ。
 さて因縁の十一月、無事「檄」までを収め終って一息いれ、次の巻からはいよいよ第二段階に入る。
 詩歌(第三十七巻)、書簡(第三十八巻)、対談・鼎談・座談(第三十九・四十巻)、音声(CD)(第四十一巻)、作品年表、著書目録、被翻訳作品目録、上演・上映・放送目録、年譜(第四十二巻)、さらに、当初の予定にはなかった補巻を追加する予定で、補遺(小説、戯曲、評論、翻訳、創作ノートなど、刊行途中で発見されたもの)、参考文献一覧、索引などが収録される。いずれも新しい収録編纂で、完璧を期するため、今後は、原則として隔月刊の予定である(旧全集では不可能だったCDによる自作朗読なども、時満ちての収録である)。
 第三十七巻の詩歌では、今回初収録のものが四八六篇(旧全集一七二篇)で、これは主に幼・少年時代に書かれたものであり、手づくりの詩集やノート十六冊から収録された(三島由紀夫文学館蔵の二冊以外は、あとで三島家から発見されたもの)。
 これらは、あの短篇小説「詩を書く少年」の背景をなすもので、作中の「一週間詩集」なども実際に存在したことが確認される。十代後半には殆ど終息してしまうその旺盛な詩作活動は、たしかに三島文学形成期の秘密の鍵であることはまちがいがない。
 第三十八巻の書簡。戦時中、勤労動員先の工場から両親宛に出された二十七通、「花ざかりの森」刊行時、世話になった富士正晴宛の十九通、戦中戦後の文学活動の一端が知られる中河与一宛八通、中村光夫宛二十八通は、心安い先輩への打あけ話。眷恋の「サロメ」上演のため、台本の使用許可依頼から公演まで一連の経過がわかる日夏耿之介宛の六通。幸福な同時代者・澁澤龍彦宛三十六通、だが友情にヒビの入りそうなモデル問題(「暁の寺」の独文学者)にはいち早く弁解の一通。神風連取材にまつわる荒木精之宛九通など、大半は未公開の書簡であり、その時々の生活や執筆の背景があざやかに浮かびあがってくる。
 北杜夫宛十通の内の一通などはいかにも微笑ましく、公表すれば悪口となるべき書評が、雑誌にはあえて別のものと差し替え、そのまま友情溢れる私信に化けてしまうという経緯が分かる。
 第三十九・四十巻。対談・鼎談・座談は、全体で三百篇以上もある。大方は評論と遜色のない充実したもので、旧版では割愛せざるをえなかった単行本、たとえば林房雄との「対話・日本人論」、中村光夫との「対談・人間と文学」、伝説の「討論 三島由紀夫vs.東大全共闘」、さらに、対談集「尚武のこころ」「源泉の感情」。また文壇のみならず、演劇界、映画界、政財界などにわたる、当時の華やかな交友関係が偲ばれる。
 補巻は拾遺集で、三島由紀夫の潤色・NLT公演「リュイ・ブラス」台本、また三島由紀夫文学館蔵の新発見の作品では、中等科四年時代の作文「神官」「冬山」、さらに「梅枝」「菊薫る環物語」「二令嬢」、幻の作「模倣の恋」創作ノートなど解読すべき作品が山積しており、当分資料探索の旅が続きそうである。「僕は鯨と同じで、骨も筋も皮も無駄に捨てられるものは何もないんだ」という三島由紀夫の言葉を噛みしめている現場である。

(たなか・みよこ 文芸評論家・本全集編集委員)

著者プロフィール

三島由紀夫

ミシマ・ユキオ

(1925-1970)東京生れ。本名、平岡公威(きみたけ)。1947(昭和22)年東大法学部を卒業後、大蔵省に勤務するも9ヶ月で退職、執筆生活に入る。1949年、最初の書き下ろし長編『仮面の告白』を刊行、作家としての地位を確立。主な著書に、1954年『潮騒』(新潮社文学賞)、1956年『金閣寺』(読売文学賞)、1965年『サド侯爵夫人』(芸術祭賞)等。1970年11月25日、『豊饒の海』第四巻「天人五衰」の最終回原稿を書き上げた後、自衛隊市ヶ谷駐屯地で自決。ミシマ文学は諸外国語に翻訳され、全世界で愛読される。

初めて出会う 新・三島由紀夫

関連書籍

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

感想を送る

新刊お知らせメール

三島由紀夫
登録
全集・選書
登録

書籍の分類