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不倫と正義

中野信子/著 、三浦瑠麗/著

924円(税込)

発売日:2022/04/18

書誌情報

読み仮名 フリントセイギ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 254ページ
ISBN 978-4-10-610949-2
C-CODE 0230
整理番号 949
ジャンル ノンフィクション
定価 924円
電子書籍 価格 924円
電子書籍 配信開始日 2022/04/18

愛なら許されるのか。理が勝つべきなのか。脳科学者と国際政治学者が語り尽くす!

世に不倫は数多い。2020年のある調査によれば、恋人や結婚相手以外の人とセックスをしている性交経験者の割合は男性が4割強、女性が3割強。とりわけ「働く既婚女性」の不倫が増加中だ。ではなぜ有名人の不倫ばかりがバッシングされるのか。「愛のある」不倫も許されないのか。そもそも結婚制度とは、人間の本能とは――。脳科学者と国際政治学者、異分野の知性が語り尽くす男と女、メディア、国家、結婚の真実。

目次
はじめに 中野信子
第1部 不倫とバッシング
増える不倫/バッシングの過激化/性行動を分ける2つの脳のタイプ/仕事ができる男ほど浮気する?/「稼ぐ人」は「ばらまく人」か/脳も違えば制度も違う/不倫の「定義」/どこからが不倫か/ねたみと嫉妬の違い/脳が感じる愛着の場所/嫉妬の個体差/不倫のメリット/「寝取られ」のロジック/複数愛は可能か/妥協としての「一夫一妻」/不倫の「罪」/バッシングの土台は「道徳感情」/社会的制裁と報道/「愛の終わり」への恐怖
第2部 男と女の性と権力
よい恋愛に必要なもの/家では男尊女卑、外ではリベラル/家庭環境による反復/権力欲と性/性的同意と紅茶/女が性的に奔放になる理由/格差は残る、家族は変わる/男の「殺気」/女としての防御の仕方/愛とセックスは切り離せる/パートナーは「帰る場所」か
第3部 結婚の罪
結婚の4階建て構造/家族のかたちと社会の意識/日本の結婚制度、うまくいってる?/遺伝子プールが「家を守る」/姦通罪に驚く今の子/社会の「あるべき論」/結婚制度で守られているのは誰か/遺伝子を残せた男の数/結婚の「お得さ」/夫婦長続きの法則/フェムテックのもたらすもの/結婚と老後/なぜ結婚するのか?/男が人妻に言いがちなこと/グレートリセット/日本人の一般的信頼/「脱出可能」な女と「脱出不能」な男/夫婦別姓の問題点/男の「逃げ場」
第4部 不倫の「倫」
「倫」とはなにか/価値観調査に見る日本/恣意的な「倫」/モラルの基準/「倫」は必要か/もし中野信子と三浦瑠麗が不倫したら/一夫一妻制は女も守る/一度の結婚で人生足りるのか/想像もダメなのか/倫理の網の目
おわりに 三浦瑠麗

書評

男にとって、女の「恋バナ」は永遠の謎である

橘玲

 アカデミー賞国際長編映画賞を受賞した村上春樹原作の映画「ドライブ・マイ・カー」は、愛する妻に先立たれた舞台俳優兼演出家の男が、妻が生前、複数の男と性的関係をもっていたというこころの傷を、無口な女性ドライバーにはじめて打ち明ける物語だ。
 この作品が海外でも高く評価されたのは、国や文化のちがいを超えて、男が個人的なことを語るのが苦手だからだろう。だからこそ、さまざまな小さな出来事が積み重なって、最後の告白に至るまでがドラマになるのだ。
『不倫と正義』では、才女二人が、芸能人の不倫にひとびとがなぜこれほど夢中になり、バッシングするのかを語り合う。この企画は、女同士でなければ成り立たない。いい年をした男が不倫について論じる本を、誰も読みたいとは思わないだろう。
 ここには明らかな性差があり、それは社会的・文化的に構築されたものだろうが、その背景には男と女の生物学的なちがいがあるはずだ。
 これは私だけではないと思うが、男の友人・知人から性愛について相談された経験はほとんどない。数少ない例外も、子どもの親権をめぐってもめているという類の話で、ひととおり事情を聴き、知り合いの弁護士を紹介して用件は終わる。
 それに比べて、若い女性のライター・編集者から、恋愛や結婚について相談を受けたことは数えきれない。私に気の利いたアドバイスができるわけもなく、彼女たちもたいして期待していないだろうが、いつも「そんなふうに考えているのか」という驚きがある。
 女性は私的なことを話題にするハードルが低く、日常的にそのような会話をしているので話が面白い。打ち合わせの時間の大半が彼女の恋愛の話になって、「じゃあ、仕事の件はメールで」となることも珍しくない。
 男にとって、女の「恋バナ」は永遠の謎だ。逆に女にとっては、男はいつもこころを閉ざしているように感じられるのではないだろうか。本書のテーマは不倫だが、そんな女同士の内輪話を覗き込むような面白さがある。
 脳科学者の中野さんは、「(不倫という)人間の自然な感情を、非合理的な社会通念で不必要に縛るのはナンセンスではないだろうか」と冷静に語る。一方、国際政治学者の三浦さんは、「人間の歴史は愛の不可能性を指し示しているが、それを知りつつも愛するという行為は無意味ではないのである」と熱く論じる。その微妙な温度差が、二人の会話に精彩を与えている。
 中野さんが指摘するように、有名人の不倫を夢中になってバッシングするのは、それによって快感を覚えるように進化の過程で脳が「設計」されているからだろう。メディアにとって、「正義」は最大のエンターテインメントなのだ。
 また三浦さんがいうように、リベラルな社会では恋愛は自由意思によって完結しなければならないとされているが、そもそもこの前提は不可能ではないだろうか。自分も相手も完全に「自由」なら、相手が自分の思い通りになるなどという都合のいいことが起きるわけがない。
 過激化する不倫バッシングの背景には、結婚という制度がもはや自分を守ってくれないという不安がある。それと同時に、自由意思が強調されると、「性的同意」の有無が法的な問題になる。恋愛もセックスも結婚も、どんどんややこしくなっているのだ。
 日本も世界も「自分らしく生きたい」という価値観の巨大な潮流のなかにあり、それを私は「リベラル化」と呼んでいる。リベラル化する社会では、男も女もばらばらな個人として「自由に」生きるようになり、それを拘束する制度は捨てられていくだろう。
 本書にも出てくるが、フランスはその最先端で、事実婚で子どもをつくり、愛が冷めたと思えば同居を解消し、連れ子のいる男女が再婚したり、再々婚したりするのが当たり前になっているらしい。リベラル化の潮流は不可逆なので、日本も10年後、20年後には、結婚制度も戸籍制度もなくなっている(有名無実になっている)かもしれない。
 #MeToo運動以来、一部では「毒々しい男らしさ(トキシック・マスキュリニティ)」が諸悪の根源とされ、男性異性愛者は肩身の狭い思いをしている。幸いなことに中野さんも三浦さんも、男性性を「悪」とするような極端な立場からは距離を置いているので、男の読者でも安心して読める。
 とはいえしばしば、背筋が冷たくなるような言葉が出てくるのであるが。

(たちばな・あきら 作家)
波 2022年5月号より

薀蓄倉庫

結婚は「4階建て」?

 中野信子さんと三浦瑠麗さんの『不倫と正義』には「結婚の4階建て構造」という語が出てきます。これは三浦さんがご夫婦で考えた構造なのだそうですが、かいつまんで言えば1階は「経済と生活の安全保障」。「一人が贅沢なものを食べ、もう一人が飢えているということがあってはならない。家族は皆が同じ生活レベルを享受するのが基本」。ここがまず夫婦の基礎になるというわけです。子供がいる場合は2階が「親としての責任」。子育てや子供の行事には協力が必要です。その上、3階に到って「夫婦間の信頼関係」がある、つまり1階、2階があって初めて3階も建つのだというわけです。では4階は? 夫婦の恋愛感情や性的な意味合いでの関係性はここなのだと三浦さんは喝破します。子持ち担当男性編集者も深く頷いたのですが、中野さんは別の構造を唱えます。その内容は本書でお読みいただくとして、忌憚なく意見を述べ合うお二人の対話はとても刺激的でスリリング。どうかご一読を。

掲載:2022年4月25日

担当編集者のひとこと

「不倫騒動」のコメントから

 本書の著者、脳科学者の中野信子さんも国際政治学者の三浦瑠麗さんも、テレビの情報番組などによく出演されます。「不倫騒動」が番組で取り上げられるたびにコメントを求められるのだそうですが、中野さんは2022年4月現在、「大下容子ワイド!スクランブル」(テレビ朝日系)の、三浦さんは「めざまし8」(フジテレビ系)のレギュラーですからそれも無理のないこと。ただ、お二人とも、コメントするたびに「中野は/三浦は、不倫を“擁護”している」等とネットなどで言われるのが不思議でならないそうです。
 そう言われる理由やお二人の考えは実際にお読みいただければと思いますが、そんなお二人の「なぜ?」が集まって生まれたのが本書です。分野は違えど学者であるお二人が、「善悪」といった基準はひとまず措き、色眼鏡抜きに「不倫」というものに向き合うと何が見えてくるのか。お二人の知性がさまざまな角度から分析した「不倫」から見えてくる「男女」、「国家」や「結婚」がどのような姿であるのかは、「色眼鏡抜き」でお確かめください。

2022/04/25

著者プロフィール

中野信子

ナカノ・ノブコ

1975(昭和50)年生まれ。脳科学者。医学博士。東日本国際大学教授。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。著書に『不倫』『毒親』など。

三浦瑠麗

ミウラ・ルリ

1980年、神奈川県生まれ。国際政治学者。幼少期を茅ヶ崎、平塚で過ごし、県立湘南高校に進学。東京大学農学部を卒業後、同公共政策大学院及び同大学院法学政治学研究科を修了。博士(法学)。東京大学政策ビジョン研究センター講師を経て、山猫総合研究所代表取締役。博士論文を元にした『シビリアンの戦争――デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)でデビュー。近著に『21世紀の戦争と平和――徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)。「朝まで生テレビ!」、「ワイドナショー」などテレビでも活躍する一方、旺盛な執筆、言論活動を続ける。第18回正論新風賞受賞。『孤独の意味も、女であることの味わいも』は初の自伝的著作である。

ブログ:山猫日記 (外部リンク)

メールマガジン:三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」 (外部リンク)

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