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甲子園は通過点です―勝利至上主義と決別した男たち―

氏原英明/著

792円(税込)

発売日:2021/08/18

書誌情報

読み仮名 コウシエンハツウカテンデスショウリシジョウシュギトケツベツシタオトコタチ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 190ページ
ISBN 978-4-10-610920-1
C-CODE 0275
整理番号 920
ジャンル スポーツ・アウトドア
定価 792円
電子書籍 価格 792円
電子書籍 配信開始日 2021/08/18

「目指しているのは、メジャーなんで」。高校野球の地殻変動が始まった。

2019年夏、岩手県大会の決勝で大船渡高校のエース、佐々木朗希が登板を回避したことは、賛否の論議を呼んだ。それは突き詰めると、「甲子園にすべてを捧げる」か「将来の可能性を取る」かの選択に他ならない。「負けたら終わり」のトーナメント方式の中で、どう選手を守り、成長させていくのか。球数制限、丸坊主の廃止、科学的なトレーニングの導入など、新たな取り組みを始めた当事者たちの姿を追う。

目次
はじめに
第1章 新潟県高野連はなぜ、球数制限導入を決断したのか
日本高野連の反対も織り込み済みで、独自の「球数制限」導入に踏み切った新潟県高野連。その決断は、県が独自に進めてきた野球界改革の延長線上にあった。
第2章 「甲子園」に取り憑かれた鬼軍曹の改心
“伊丹一のワル”坂本勇人を育て上げ、プロに送り込んだ金沢成奉監督。厳しい指導で知られた彼が、コロナ禍で甲子園を失い、悩んだ果てに見出した新たな指導法とは。
第3章 「プロでは大成しない」甲子園強豪校の代替わり
前監督が甲子園の史上最多勝利記録を持つ智弁和歌山は、ひそかに「選手がプロで大成しない学校」と言われてきた。後を引き継いだ元ドラ一プロ、中谷仁監督の挑戦。
第4章 メジャー帰りのトレーナーと進学校がタッグを組んだ理由
一日わずか五十分。広島の武田高校は、短い練習時間に「考える時間」をプラスすることで、チーム力を向上させている。それを支えるのは、プロも一目置くトレーナーのノウハウだ。
第5章 激戦区の公立校からはじまった「球数制限」と「リーグ戦」
「複数投手制」の徹底で成績を上昇させた神奈川の県立高。私立優勢の大阪で、公立高が組んで立ち上げた「リーグ戦」。出発点にはどちらも、ある中南米帰りの男の姿があった。
第6章 丸坊主を廃止した二つの私立強豪校
菊池雄星と大谷翔平を生んだ花巻東。甲子園八度出場を誇る新潟明訓。両校は、ほぼ時を同じくして「丸坊主」をやめた。その決断に至るまでの、それぞれのロジック。
第7章 サッカー界「育成のカリスマ」の試みから見えるもの
時に真逆に見えるほど文化が違うサッカーと野球。本格的な設備を擁する民間クラブを立ち上げたサッカー界「育成のカリスマ」の言葉が、野球界の課題を照射する。
第8章 テクノロジーが、選手を強くする
データの活用なくして、選手の成長はありえない。その流れはプロのみならず、高校野球界にも及んでいる。テクノロジーを味方につけて進化を続ける高校生投手の「異次元の言葉」。
おわりに

薀蓄倉庫

「球数制限を導入すると公立が不利になる」は本当か

 高校野球での球数制限導入に対しては、「公立が不利になる」という反対論がありますが、神奈川の県立市ヶ尾高校では、独自の球数制限を導入しています。一番のメリットはエースの酷使を回避することですが、二番手以下の投手も成長し、モチベーションも向上したそうです。監督のゲームプランに対する思考力も上がり、毎年のように人材が輩出するようにもなりました。やりかた次第では、球数制限はプラスの循環を生み出すこともできるわけです。

掲載:2021年8月25日

担当編集者のひとこと

変わりつつある甲子園の“今”

 高校野球はもともと「部活」。成長途上にある高校生たちを健全に成長させていくのが本来のあり方です。しかし、甲子園大会が商業的価値を持ちすぎ、「負けたら終わり」のトーナメント方式というドラマ性のある仕組みで運営されているため、選手の成長を待つというより「使える選手を使い潰す」傾向になりがちなのが実情です。

 そんな条件の中で、将来のある選手達をどう守り、成長させていくのか。本書では、従来の甲子園の常識とは異なる取り組みをしている当事者たちの姿を追いました。

 独自の球数制限を導入し、複数投手制を確立させて成績を上げた神奈川の県立高校。メジャー帰りのトレーナーと組み、「一日の練習時間50分」の中で科学的トレーニングを重ねる広島の進学校。ほぼ時を同じくして「丸坊主廃止」に踏み切った、二つの野球名門校。いずれも、読んでみれば納得の理由があることが分かります。

 また、今年のドラフト一位候補である天理高校の達孝太投手の取り組みを紹介している箇所は、とても印象的です。達投手は、個人で野球のデータ解析装置(ラプソード)を購入して活用しているだけでなく、将来を見据えた明確な成長プロセスをイメージしています。彼の考え方には、甲子園で燃え尽きることをよしとする「美学」は微塵もありません。この夏の大会は惜しくも県大会で負けてしまいましたが、その負けを引きずっているようなことは恐らくないでしょう。

 著者は2003年の独立以降、甲子園大会をずっと現場で取材してきたスポーツジャーナリスト。プロからアマチュアまでを対象に、育成法についても取材を深めてきました。ぜひご一読頂ければ幸いです。

2021/08/25

著者プロフィール

氏原英明

ウジハラ・ヒデアキ

1977(昭和52)年ブラジル・サンパウロ生まれ。スポーツジャーナリスト。奈良新聞勤務を経て2003年に独立。2003年の夏以降、甲子園大会はすべて現場で取材している。著書に『甲子園という病』、執筆協力に菊池雄星著『メジャーをかなえた雄星ノート』がある。

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