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ロシアを決して信じるな

中村逸郎/著

814円(税込)

発売日:2021/02/17

書誌情報

読み仮名 ロシアヲケッシテシンジルナ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 204ページ
ISBN 978-4-10-610896-9
C-CODE 0225
整理番号 896
定価 814円
電子書籍 価格 814円
電子書籍 配信開始日 2021/02/17

「日本人は北方領土が返ると思っているの?」「暗殺なんてあたりまえ!」政治家から庶民まで、第一人者が肉声を拾って描く新しいロシア論。

北方領土は返ってこない。ロシア人は狡猾(こうかつ)で、約束は禁物だ――著者はこう語る。長年、かの国に渡り、多くの知己(ちき)をもつ研究者にそこまで思わせるロシアとは、一体、どんな国なのか。誤作動で発射をまぬがれた核ミサイル。日常の出来事となった反体制者の暗殺。世界最悪の飲酒大国。悪魔への奇妙な共感。消えない「プーチン偽者」説。さもしい都市モスクワ……現地を旅し、不条理に絶望し、怒り、戸惑い、ときに嗤(わら)いつつ描く、新しいロシア論。

目次
序章◆核ボタンはついに押されたのか!?
人類は滅亡の日を迎えていたのか/大統領補佐官の証言/核バッグは故障していたのか/ロシア外務省の怠慢/平和時こそ危ない/バトゥーリン氏との出会い
第一章◆暗殺社会ロシア
毒を盛られた/毒裁国家ロシア/毒殺の歴史/災難への誘惑
第二章◆「ひたすら祈る」――魔窟からの脱出
古いロシアが生き続ける/最悪の事態、スーツケースの紛失/摩訶不思議の国/一つの手荷物を発見できた/最後は祈るのみ
第三章◆倒錯する日常生活
空回りのロシア/数字が無意味でめちゃくちゃ/ロシア人のいないところが「いいところ」
第四章◆決して信じるな――ロシア人は嘘八百
騙されやすい人を狙え/嘘に嘘を重ねるのがロシア流/領土問題という悲劇/四島一括返還が本筋/返還が可能なタイミングはあったのか/プーチンへの「接待外交」/思いつき外交の弊害/ロシアが本音を吐いた/北方領土の現実を見よ/領土返還交渉は終わった
第五章◆「偽プーチン」説の真相
悪魔に魅了されるロシア人/プーチン元夫人の証言の真贋/本当のプーチンは死んだのか/プーチン政治の急変/偽プーチン説の流布/「打倒、プーチン」
第六章◆飲まずにはいられない――世界最悪の飲酒大国
シベリアとは/「シベリアのパリ」/大平原のなかの虚しさ/極上ウオッカの出番/ウオッカの飲み方/ビンから絞り出すほどに/警察官は「伝説の人」/オイルとウオッカ/ロシアはヨーロッパなのか
第七章◆祖国を愛せないロシア人の悲哀
ロシア人の根本的な不幸/おんぼろバスでの喧騒/噛み合わないロシア人同士の会話/再起不能のロシア/それでも「ロシアは偉大」なのか/政敵の暗殺事件/プーチン氏は終身大統領
第八章◆ロシアの二枚舌外交――ウラジオストクの北朝鮮労働者
一本の電話からはじまった/北朝鮮労働者の働き方とは/ウラジオストクと朝鮮人の結びつき/ロシアと北朝鮮の関係史/朝鮮人の住処に潜入/人道支援する朝鮮系ロシア人/国連による北朝鮮への制裁強化/朝鮮半島ビジネスを狙え
第九章◆モスクワのわるいやつら――さもしさがあふれる都市
すぐに破棄される約束/約束するにはその条件を確定すること/善意につけ込むロシア人/賛美される他力本願の生き方
第一〇章◆暴走する親切心
おせっかいな親切心/欧米スタイルを崩すロシア流の親切心/注意はするけど、お好きなように
終章◆絶望のロシア
不条理の国/状況を突破せよ
あとがき
参考文献一覧

薀蓄倉庫

神か? 悪魔か?

「モスクワ市内の狭い通りを、ロシア人の男性が運転するロシア製の無骨なデザインの車が走っていました。前方を2台の自動車が快走しており、それぞれの車の運転手は神と悪魔だったらしいのです。その道の先は、行き止まりになっていました。
 神は急に右折して大きな通りに向かいましたが、悪魔はその手前を左折し、路地に迷い込みました。あとを追うロシア人は2台の自動車の動きを見定めてから、どちらに曲がるべきか、迷うことはありませんでした。神を追うかのように右方向のウインカーを出しておいて、実際には悪魔の方に左折したのです。
 神に敬意を払う素ぶりを見せておきながら、本音では、悪魔に魅了されているからです」
==========
 上記は、モスクワで中村逸郎氏がロシア人の友人から披露された小話です。
 初めて聴いたときには、ロシア事情に通じている中村氏でも、外見は誠実そうに見えて、実は、悪魔に愛着するロシア人の本性に触れたように思え、驚嘆したそうです。
 一般的にはロシア人は信仰が篤く、全人口の7割ほどがロシア正教会の信者といわれています。残りの人びともイスラム教、仏教、さらには土着のシャーマニズムを信仰しています。
 しかし、ロシアでは、ことばでは神や仏の恵みに感謝するのに、心底では悪魔が大好きという人や、悪を自国の特産物のように自慢する人もいて、「本当に不可解……」と中村氏も驚愕しています。

掲載:2021年2月25日

担当編集者のひとこと

「現地発の秘話」と「驚愕のリアル」

 本書の著者、中村逸郎氏は、筑波大学人文社会系教授であり、反プーチン政権デモ、連続する反体制派の暗殺や暗殺未遂、北方領土交渉など、メディアでのニュース解説にいつも登場するロシア研究の第一人者です。著作や論文も数多く発表されています。
 中村氏とはとても長いお付き合いになりますが、いつもスリリングな逸話を聴かせていただいています。
 研究生活の傍ら、毎日、5kmのランニングを続けているストイックな生活を送られており、お話は興奮をさそい、おもしろく、人懐こい方で、大学の学生たちにも人気があります。
 毎年、現地でのフィールドワークを欠かさない中村氏が、昨今のロシア事情の集大成として書下ろされたのが本書です。
 他国からの軍事攻撃と誤認し、ロシアは核ミサイルを発射しそうになっていたという元ロシア高官の現代史のスクープ証言をはじめ、度重なる暗殺工作の舞台裏、なかなか進展しない北方領土交渉などでのロシアの二枚舌外交、全土で消えない「偽プーチン」説の真相、倒錯する国民の日常生活、世界最悪の飲酒大国という現実、さもしい大都市モスクワの実情など、謎多き隣国のリアルを、政治家から庶民まで、多くの肉声から浮かび上がらせています。
 知られざる国情や国民性についても、現地発の豊富な秘話が次々と明かされています。
 中村氏が現地を歩き、不条理に絶望し、憤り、戸惑い、ときには嗤いつつ、遭遇した「驚愕のリアル」を、紀行風の柔らかい筆致で、スリリングに描いているのです。
 最新のロシアを知悉するには、最適な1冊です。
 ぜひ、ご一読ください。

2021/02/25

著者プロフィール

中村逸郎

ナカムラ・イツロウ

1956年生まれ。筑波大学人文社会系教授。学習院大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。モスクワ大学、ソ連科学アカデミーに留学。2017年、『シベリア最深紀行』で梅棹忠夫・山と探検文学賞受賞。『ロシア市民』『ろくでなしのロシア』などの著作がある。

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