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心臓によい運動、悪い運動

古川哲史/著

836円(税込)

発売日:2020/02/15

  • 新書
  • 電子書籍あり

■筋トレは2〜3日に1回がよい■安易な糖質制限は危険■腎臓病も運動で改善できる。STOP突然死! 医者が教える新常識60。

そのエクササイズが死を招く――心臓病をはじめ、生活習慣病には適度な運動が効果的というものの、間違ったやり方では突然死の可能性も。「筋トレは毎日ではなく2〜3日に1回がよい」「日常生活がエクササイズになる?」「糖質制限ダイエットって大丈夫?」等々、最新の研究結果を踏まえた本当に体によい運動、食事を、医師である著者がわかりやすく解説。科学的に正しいやり方で、病気を予防するための必読書。

目次
はじめに
第1章 なぜヒトは運動しないとメタボになるのか
1 ヒトは進化したことで運動が必要になった
2 脳は大量のカロリーを消費する
3 脳はエクササイズに対してご褒美を与える
第2章 エクササイズで脂肪を燃やす
4 体の中の脂肪には2種類ある
5 中性脂肪とは何か
6 内臓脂肪が生活習慣病を引き起こすメカニズム
7 脂肪細胞が脂肪を燃焼させる
8 新たに発見されたベージュ脂肪
9 運動しないのに太らない人の脂肪には秘密がある
10 寒冷刺激は脂肪のベージュ化をもたらす
11 脂肪のベージュ化をもたらす食事
12 エクササイズで脂肪のベージュ化を起こせる
13 有酸素運動かどうかの簡単な見分け方
14 「脂肪の燃焼には20分以上の運動が必要」は間違い!
第3章 心拍数エクササイズ
15 自分に適した心拍数エクササイズの選び方
16 有酸素運動は寿命も長くする
17 乳酸は疲労のもとではなかった
第4章 筋トレがダイエットに必要な理由
18 有酸素運動+筋トレがメタボを防ぐ
19 最適の筋トレを知るにはRMを理解しよう
20 筋肉痛が2日後にでるのは加齢のせいではない
21 筋トレは毎日ではなく週2〜3回がいい
22 腕立て伏せが心臓病リスクを下げる
23 積極的休養(アクティブレスト)の効能
第5章 日常生活でできるエクササイズ
24 自分の消費エネルギーを知っておく
25 日常生活をエクササイズとして捉えなおす
26 階段は1段ずつの方がカロリーを消費できる
27 「運動したらお腹が空いて食べ過ぎる」のウソ
第6章 心臓病の人のエクササイズ
28 体にいいエクササイズ、悪いエクササイズ
29 心臓リハビリの要点
30 心不全でもやっていい運動、絶対ダメな運動
31 心不全では水泳は慎重に!
32 運動は心筋梗塞・狭心症の予後を改善する
33 心筋梗塞・狭心症患者が気をつけるべきこと
34 突然死を起こしやすい運動
35 運動が誘発する不整脈もある
36 心房細動ではハードな運動はダメ!
37 解離性大動脈瘤では血圧が大事
38 腎臓と心臓病の密接な関係
39 最新の研究では腎臓病も運動で改善できる
第7章 エクササイズと栄養・食事
40 3種類の栄養素
41 マラソン選手が35kmで失速する理由
42 グリコーゲン超回復はどうして起こる?
43 限られたグリコーゲンから大きなエネルギーを作るために
44 運動後の糖質補充はロッカールームで!
45 糖質制限食・低炭水化物ダイエットには要注意
46 脂質が大食いをつくる
47 良い脂肪と悪い脂肪
48 魚が健康にいい理由
49 マーガリンは体に悪い?
50 よいタンパク質って何?――アミノ酸スコア
51 タンパク質の過剰摂取に注意!
52 水分摂取と排出
53 運動時の体温上昇
54 熱中症と外気温
55 水分と一緒に塩分をとらなくてはいけないワケ
56 やはり減塩はどうしても必要
57 飲酒と心臓病の本当の関係
58 ポリフェノールをどうとるか
59 地中海食は和食よりも心臓にいい?
60 日本人には地中海式和食
おわりに
参考文献

書誌情報

読み仮名 シンゾウニヨイウンドウワルイウンドウ 
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610849-5
C-CODE 0247
整理番号 849
ジャンル 暮らし・健康・料理
定価 836円
電子書籍 価格 836円
電子書籍 配信開始日 2020/02/21

インタビュー/対談/エッセイ

なぜゴリラはメタボにならないのか

古川哲史

 現代の日本の病院制度は、1721年、江戸時代八代将軍徳川吉宗公が目安箱を設置したことに始まります。目安箱に一通の投書があり、1722年に病人を一か所に集めて治療する小石川養生所が設置されました。投書したのは、のちに山本周五郎の「赤ひげ先生」のモデルとなった小川笙船という医師です。これが病気になると病院にかかって治療するというシステムの先駆けで、その後この制度が約三百年続いています。
 この現代の病院制度にも限界が見えてきました。
 米国では、死亡原因の第一位は心臓病、第二位はがんですが、第三位は医療過誤です。また、高齢者が病院に入院すると、二人に一人がかえって具合が悪くなって退院するという統計もあります。
 そこで、病気になってからの治療(キュア[cure])から、病気にならないための予防(ケア[care])が大切という考えが広まってきました。
 病気予防の柱は、「運動」「食事」「睡眠」の三つです。本書では、主に心臓に「よい運動」「悪い運動」について説明します。
 実は、チンパンジーやゴリラなどの大型の霊長類は、一日ほとんど運動しません。それでも、メタボや動脈硬化、高血圧にはなりません。ヒトは、狩りをして栄養価の高い肉を食べることを覚えたことで、これら大型霊長類から、より進化したのですが、狩りのためには長時間走ることが必要になります。そのため、何万年という年月をかけて脂肪をエネルギーとして体にため込む能力を手に入れたのです。この苦労して手に入れた能力がかえってあだとなってしまいました。現代は、狩りをしなくても角のコンビニに行けば二十四時間栄養価の高い食べ物を手に入れることができます。そこで、ヒトはメタボにならないため、ため込んだ脂肪を燃焼させるべく、長時間狩りをする代わりの運動を余儀なくされました。
 でも、むやみに運動をしてもメタボを予防できません。かえって心臓病になりやすくなることさえあります。本書では、脂肪を燃焼させるため、心臓病にならないための「よい運動」「悪い運動」とは何かを説明します。また、運動をして脂肪を燃焼させても、それ以上に脂肪をとっては元の木阿弥です。また、しっかりと食事でエネルギーをとらないと運動もできません。本書では、どんな「食事」をすると、脂肪の燃焼を助けて、心臓病になりにくくなるかも説明します。
 運動は、メタボや心臓病に良いだけではありません。認知症の予防になることも証明されています。今夏、東京2020オリンピック・パラリンピックを控えて、今まで無縁だった運動を始めてみよう、と思っている方も少なくないのではないでしょうか? 本書が、病院のお世話にならない日常生活を送るためのお役に立てば幸いです。

(ふるか・わてつし 東京医科歯科大学難治疾患研究所教授)
波 2020年3月号より

薀蓄倉庫

ダイエットにも、体の健康にも、心の健康にも?

 ダイエットにも筋トレが効果的です。基礎代謝を上げられるからです。自宅で出来る筋トレといえば、「腹筋」「腕立て伏せ」「スクワット」の3つに代表される、自分の重さを利用して行う筋トレです。
 そして有酸素運動、軽く息がはずむ程度のエクササイズの方が、ハードな運動よりも、脂肪の燃焼には適しているのだとか。
 自分にあった筋トレと、有酸素運動でメタボを防ぎ、心臓病などの病気のリスクを減らすことで、体の健康を守ることが、実は心の健康にもきくことが分かっています。
 一定のリズムで同じ動作を繰り返すと、脳内物質の「セロトニン」が増えます。セロトニンは感情や気分のコントロール、精神の安定にかかわっていますので、メンタル面でも元気になるのです。
 長生きしたって辛いだけ、そんな暗い気持ちでため息をつく時間があるのなら、晴れたらウォーキング、雨の日は腹筋でもしてみよう、そう思えるようになりました。

掲載:2020年2月25日

担当編集者のひとこと

腕立て伏せ、始めました。

 学生時代は運動部、体力にも酒にも自信あり、でも最近、体動かしてないなあ……健康診断でメタボって指摘されちゃったし、酒の席は減らせないから、ランニングでも始めるか! 
 40代で突然亡くなった学生時代の先輩が、まさにこのケースでした。お世話になっていただけに、本当にショックでした。
「適度な運動」が体にいいとはいうものの、その「適度」が難しい。年齢や持病、それまでの運動量、酒量に食事、あらゆる面が影響するだろうし、仕事と家庭の両立に忙しくて、ジムに行く時間なんて、とてもとても……としり込みしていた私の背中を、ぐっと後押ししてくれたのが、この本の原稿でした。
「筋トレは2〜3日に1回がよい」「エクササイズになる日常生活の動作は?」「年代別、突然死を起こしやすい運動」「日本人の体にあう地中海式和食とは?」等々、医師であり研究者でもある専門家が、最新の研究結果をもとに60の健康の新常識を、丁寧に解説してくれます。
 とりあえず私は、腕立て伏せを、始めました。毎日ではなく、出来る範囲で、ですが。だって死亡率が……そして最初は1回も出来なかったのに、今では30回出来るようになり……健康に、長生きを目指す方、詳しくは本書をご覧ください。

2020/02/25

著者プロフィール

古川哲史

フルカワ・テツシ

1957(昭和32)年、東京都生まれ。医学博士。1989年東京医科歯科大学大学院医学研究科博士課程修了。同大学副学長。著書に『血圧と心臓が気になる人のための本』『心房細動のすべて――脳梗塞、認知症、心不全を招かないための12章』『心臓によい運動、悪い運動』等。

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