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「面白い」のつくりかた

佐々木健一/著

836円(税込)

発売日:2019/09/14

  • 新書
  • 電子書籍あり

斬新なアイデアはこう生み出す――画期的アウトプット術! この本は信頼出来る。マキタスポーツさん絶賛。

ウケるプレゼンをしたい。斬新な企画を考えたい。人の心をつかみたい。誰もがそう思うけれども、そう簡単にはいかないもの。どうすれば「面白い」と思ってもらえるのか。ポイントはどこにあるのか。「安易な共感を狙うな」「アイデアは蓄積から生まれる」「人と会う前に学習せよ」──長年、ひたすら「面白い」を追求してきた著者がそのノウハウ、発想法を惜しげもなく披露した全く新しいアウトプット論。

目次
第一章 そもそも「面白い」って何?
「面白い」とは“差異”と“共感”の両輪である/人の心を動かすのは“差異”である/人々の関心を呼ぶ=差異を感じている/「後追い」では大ヒットは生めない/安易な“共感”ではなく深い“共感”を/衰退した「名画座」に人が集まる謎
[コラム1]差異と共感の両輪が際立つドキュメンタリー
第二章 アイデアは思いつきの産物ではない
企画は“組み合わせ”で生まれる/アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである/「クリエイティブ」を支えるのは「記憶」である/余裕や遊びがクリエイティブを生む/社内会議で“斬新なアイデア”は生まれない/企画会議の常套句「なぜ、今か?」が愚問なワケ/“今”に向かって石を投げ込む/良いアイデアは「制約」と「必然性」から生まれる
[コラム2]「ゾンビ」×「ワンカット」の組み合わせ『カメラを止めるな!』
第三章 学び(取材)からすべてが始まる
取材の基本「合わせ鏡の法則」とは?/問われているのは常に“自分”である/「取材=話を聞く」ではない/できる仕事人に共通する「地味にスゴイ取材力」/「まずは人と会ってみる」が正解ではない/取材なくして物事の“本質”はつかめない/“独学”こそが成長を育む/根無し草の日々こそ、その後に活きる
[コラム3]学んでなければ分からないスピルバーグの“継承”
第四章 「演出」なくして「面白い」は生まれない
純然たる“ありのまま”を伝えることはできない/演出と“状況設定”である/周到な準備で確率を高めるプロの「演出」/「密着すれば人間が描ける」は本当か?/“前倒し”が演出のカギを握る/「他者との関係性」は刻々と変化する
[コラム4]関係性の変化を描く傑作ドキュメンタリー『イカロス』
第五章 「分かりそうで、分からない」の強烈な吸引力
「分かりやすさ」は万能ではない/「分かりそうで、分からない」の威力/大相撲報道と『モナ・リザ』の共通点
第六章 「構成」で面白さは一変する
「ディレクター」とは「構成」する仕事である/「何をどういう順番で配置するか」が根幹/アナログ的手法「ペタペタ」の絶大な威力/「ペタペタ」でプレゼンも魅力的になる/事前に構成を練るのは“悪”なのか?/現実が台本通りになることはない/名作に共通する物語の基本構造「三幕構成」/「問題提起」の設定が最も重要/コンテンツの本質は「人間とは何か?」の探求
第七章 「クオリティー」は受け取る情報量で決まる
作品の「質」の高さは情報量が支えている/ボケ足映像を「美しい」と感じるワケ/なぜ、CGキャラに感情移入するのか/ノーナレが世界で評価される理由/作り手が勝手に情報を限定しない
第八章 現場力を最大限に発揮させる「マネジメント」
知られていない「ディレクター」と「プロデューサー」の違い/署名性がモチベーションを高める/人を動かすのはお金よりも面白さ/“目利きパトロン”の重要性/放任主義が生んだ“世紀の技術革新”/現場を前のめりにさせる「マネジメント」の妙
第九章 妄執こそがクリエイティブの源である
アメリカのドラマがハイクオリティーな理由/作り手の権利が確立されることの意味/“オワコン”テレビは、なぜ終わらない?/“負荷”の少なさは強みである/“検索社会”で失うもの/“偶然の出会い”を演出するテレビ/作り手の妄執が心に刺さる作品を生む
[コラム5]コンテンツが歴史を変えた? 『チャック・ノリスVS.共産主義』
あとがき
参考文献

書誌情報

読み仮名 オモシロイノツクリカタ
シリーズ名 新潮新書
装幀 新潮社装幀室/デザイン
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 224ページ
ISBN 978-4-10-610830-3
C-CODE 0276
整理番号 830
ジャンル ノンフィクション
定価 836円
電子書籍 価格 836円
電子書籍 配信開始日 2019/09/27

インタビュー/対談/エッセイ

「面白い」には理由がある

佐々木健一

 誰もが「面白い」ものを欲している。面白い本や映画、番組、体験、小話など。ビジネスの世界でも、企画やアイデア、プレゼンなどあらゆる場面で面白さは求められる。にもかかわらず、
「そもそも“面白い”って何?」
 という根本的な問いについて語られることはない。考えてみれば実に不思議な現象だ。
 私の本業はテレビ番組制作だが、会議や打ち合わせで皆口々に「もっと面白くならないかな~」などと言う。だが実は、面白いとは何なのか、よく分からないまま、それぞれが感覚的に、闇雲に面白さを追い求めている。
「そりゃ、面白いって人それぞれだから……」と、貴方は思うかもしれない。確かに、個人の好みや主観による。故に「定義できない」と考える。
 しかし、世の中には歴として「面白いもの」と「面白くないもの」が存在する。例えば、すぐに忘れてしまう作品もあれば、何年経っても心に残る作品もある。いつも退屈な話をする上司もいれば、大観衆を前に魅力的なプレゼンを披露するCEOもいる。その違いは一体、何なのか。
 私は、様々な番組制作や執筆活動を続けながら、「面白いとは何なのか?」について考えを巡らせ、一つの結論にたどり着いた。それは、
「面白いとは“差異”と“共感”の両輪である」
 という一文にまとめられる。共感はよく耳にする言葉だろう。では、差異とは何か。辞書には「違い」とあるが、私の場合はもう少し広い概念を指す言葉として用いている。
 まさに“盲点”の命題「面白いとは何か?」をきっかけに、企画やアイデア、リサーチ、演出、構成、マネジメントについて根本から見つめ直した本書。改めてその疑問に立つと、「面白い」を生む方法論も見えてくる。
 例えば、面白い企画やアイデアは、ある日突然、天から何かが下りてくるように思いつくものだと捉えてはいないだろうか。だが、実際には「アイデアは組み合わせによって生まれるもの」なのだ。
 演出とは何か。実はエンタメ業界に限らず、一般の人も日常的に演出している。「演出とは状況設定である」と捉えれば、あらゆる人に関係する。
 構成(ストーリーテリング)は、物事を効果的に伝える根幹だ。構成の良し悪しによって、面白さも一変する。「物語をつむぐ」というと大袈裟に聞こえるが、構成の本質は「何をどういう順番で語るか」。そう捉えれば、効果的に構成を練るやり方も自ずと導き出せるのだ。
 巷では、すぐに役立ちそうなノウハウを列記したビジネス書が人気だ。しかし、最も着実で成果が期待できる思考や技術は、物事を根本から見つめ直し、本質を捉える方法以外にない。そして、それこそが「面白い」を生む近道となるのだ。

(ささき・けんいち TVディレクター/ノンフィクション作家)
波 2019年10月号より

蘊蓄倉庫

 著者の佐々木さんはNHKエデュケーショナルで、主にドキュメント番組を制作してきた人です。硬派な番組を作ってきたからこそ、どうしたら「面白い」と思って見てもらえるかを考えてきました。テレビの場合、面白くなければすぐにチャンネルを変えられてしまう。だからこそ、より「真剣」に面白いを追求されてきた。紹介されているのは「こうすれば面白いと思ってもらえる」といった小手先の技術ではなく、仕事の姿勢や仕事への考え方を抜本的に見直していく方法。だからこそ、ビジネスに携わる人であれば、誰でも参考になるヒントがちりばめられています。

掲載:2019年9月25日

担当編集者のひとこと

「面白い」のつくりかた

 書籍を読んだ小社営業部の人間が「営業部の人間、全員に読んでもらいたい」と話していました。
 テレビのディレクターである佐々木さんが「面白い」について書いている本なのに、なぜ「営業部の人が関心を持つのか……」と思われるかもしれません。
 それは、この本が単に「何が面白いのか」「どうすれば面白くなるのか」といったテクニックではなく、仕事に向き合う姿勢を抜本的に問い直しているからです。

 一般的には、「そうそう、そうなんだよね~」と人々から共感を呼ぶものが「面白いものだ」と思われがちです。
 著者はそこに疑問に投げかけます。共感もさることながら、差異(違い)が大切なのではないのかと。
 人は「驚き」や「ギャップ」、「意外性」、「落差」といった“差異”にこそ、関心を持つのではないかと注目するのです。

 たとえば、こんな例をあげています。アップル社がiPodを世に出した時、この製品は後発機でしかなく、機能面では特に新しいものはなかった。ただ、明らかに差異が二つあり、それはシンプルさとデザイン性だった。これがユーザーの心を動かし、大ヒットへと導いたのだと。
 つまり、作り手がいかに差異を設定するかで、人の心を動かせるか、「面白い」と思ってもらえるかが変わってくると著者の佐々木さんは喝破します。

「面白い」とは共感できるもの、自分が関心があるものだと漠然と思っていた自分にとっても、この佐々木さんの分析は「なるほど、そうか」と衝撃的でした。

 このように、ふだん何気なく仕事をしていている中で、それが当たり前のやり方だと思ってスルーしてしまうようなことに、佐々木さんは「それでいいのか、それで面白くなるのか」と疑問をつきつけてきます。
 営業部の人間が関心を持ったのも、そんな佐々木さんの仕事への姿勢に共感して、仕事のやり方に違い(差異)に驚いたからに違いありません。

 テレビのディレクターが書いた本なので、クリエイティブ系以外のビジネスマンには無縁の本かといえば、決してそんなことはありません。「そうそう、俺の業界でもこういうことある」「こういうところで、自分は仕事を流しているのかもしれない」と、多くのビジネスマンに共感と差異を感じてもらえる本になっていると考えています。

2019/09/25

著者プロフィール

佐々木健一

ササキ・ケンイチ

1977(昭和52)年、札幌市生まれ。早大卒業後、NHKエデュケーショナル入社。ディレクターとしてドキュメンタリー番組などを企画・制作し、国内外で多数受賞するかたわら、ノンフィクション作品を執筆。主な番組は『ケンボー先生と山田先生 辞書に人生を捧げた二人の男』、『哲子の部屋』、『Dr.MITSUYA 世界初のエイズ治療薬を発見した男』、『ブレイブ 勇敢なる者』シリーズ「Mr.トルネード」「えん罪弁護士」「硬骨エンジニア」、『ボクの自学ノート』など。主な著書に『辞書になった男』(日本エッセイスト・クラブ賞)、『神は背番号に宿る』(ミズノスポーツライター賞優秀賞)、『雪ぐ人』、『「面白い」のつくりかた』がある。

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