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茶―利休と今をつなぐ―

千宗屋/著

858円(税込)

発売日:2010/11/17

  • 新書

茶の湯の怖さを、あなたはまだ知らない。利休の末裔、武者小路千家の若き異能茶人が語る。《内田樹氏感嘆!》

茶を「礼儀作法を学ぶもの」「花嫁修業のため」で片付けるのはもったいない。本来の茶の湯は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の全領域を駆使する生活文化の総合芸術なのだ。なぜ戦国武将たちが茶に熱狂したのか。なぜ千利休は豊臣秀吉に睨まれたのか。なぜ茶碗を回さなくてはいけないのか。死屍累々の歴史、作法のロジック、道具の愉しみ――利休の末裔、武者小路千家の若き異才の茶人が語る、新しい茶の湯論がここに。

目次
まえがき
第一章 誤解される茶の湯
茶の湯はなんのためのもの?/茶の湯は禅か?/人を招く悦び/数奇者と茶人/茶人の「本番」
第二章 茶の湯の歴史を駆け足で
社会の変革期にこそ/長い長いお茶の歴史/お茶の始まり/「ハイになる」クスリ?/お茶はギャンブルだ/わび茶誕生/都市文化としての茶の湯/利休、天下一宗匠へ/多様な花を咲かせた江戸時代の茶の湯/明治政財界での大ブレイク/三千家とはなにか/三つの千家に、三つの個性
第三章 茶家に生まれて
茶室から遠ざけられた子供時代/天台座主に恋をして/それは道具から始まった/お茶まみれの思春期/茶碗オールスターズとの邂逅/世襲の意味/セントラルパークでお茶会を
第四章 利休とは何ものか
ステレオタイプとしての利休/利休神話の誕生/利休は「侘び」とは言わなかった/黄金の茶室は「侘び」か?/侘びと寂びの違い/利休デザイン/四百年前のコンセプチュアル・アート/フィクションの中の利休
第五章 茶席に呼ばれたら
茶碗を回すことの意味/型にははまってみよ/点前は変化する/エゴを型に収める/点前に表れる亭主の心/利休以前の「マニュアル」
第六章 茶道具エッセンシャル
遠い道具、近い道具/茶会を催す時、まず最初に選ぶ道具は?/何はなくともまず茶碗から/茶杓は茶人の「刀」/格が高いとされる茶入と棗/花が仏か、仏が花か/名物の条件/箱のマトリョーシカ/ファイナルアンサーは利休道具/茶道具は「美術品」か?
第七章 深遠なる茶室
メディテーションルーム/なぜ茶室は狭いのか/茶室の基本のかたち/茶室の構造を見る[露地]/茶室[素材/構造/床/炉/畳/出入口/窓]
第八章 茶事はコミュニケーション
敬称付き、特別の「御茶」を差し上げる/茶事プログラム/無言の必要性/晴れやかで緊張感のあるメインステージへ/季節感のとらえ方/五感の洗練を問う、身体文化の体系/革命的な平等主義/人類史を反芻する茶事の極意/いい茶事とは何か?/高校卒業のデビュー茶事/フィクションを作る装置/「客組み」はつらいよ/もてなしの焦点を一人に合わせる/歴史上の名茶会/油を絶やさず、燈を伝える
あとがき

付録I 三千家の系譜
付録II 茶を学びたいあなたへ

書誌情報

読み仮名 チャリキュウトイマヲツナグ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書
判型 新潮新書
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-610392-6
C-CODE 0276
整理番号 392
ジャンル 茶道
定価 858円

蘊蓄倉庫

ほんとうの「茶」をあなたは知っていますか――?

 茶は「闘茶」というギャンブルだった/社会の変革期にこそ流行るのが茶の湯/酒と茶のどちらが「ハイ」になるかの議論もあった/明治財界人のソサエティでは茶は必須の趣味/表千家、裏千家、武者小路千家の三千家の関係/利休は「侘び」とは言わなかった/秀吉の黄金の茶室の評価はいかに/漫画の『へうげもの』は案外事実に近い/茶を通して、普段話せない人とつながることができる →さあ、詳細は本書で!
掲載:2010年11月25日

担当編集者のひとこと

「茶」を知らずにいるなんて、もったいない。

 とある雑誌の企画で、著者の千宗屋さんの茶事の末席を汚すことになりました。基本的な茶事は、炭手前、懐石、濃茶、薄茶、で構成され、四畳半の茶室に亭主一人、客五人ほどで行なわれるのですが、時間も手間もかかるため、部分的に行なわれる場合も多いようです。私が参加した際の茶事は、なんと5時間弱に及んだフルバージョン。大勢が濃茶や薄茶を順番にいただく、大茶会にしか参加したことがなかった私にとっては、驚きの連続でした。
 何がいちばんの驚きだったか。それは、その道の方々には申し訳ない事ですが、茶事が「楽しかった」ことです。ずっと正座で、足が痛いのを我慢して、順番を間違えると睨まれそう……そんなイメージだったのに!?
 答えはシンプルでした。本来の茶事の目的は、形式にはなく、参加者同士の距離を縮めるためのコミュニケーションだったのです。だから、「楽しい」。全員で炭の中の火を見つめ、美味しい懐石料理を共に食しつつお酒を楽しみ、凛とした空気の張りつめる場で濃茶をいただき、最後に薄茶で緊張を弛緩させていく――このメリハリを経ると、いつしか参加者同士が打ち解けていました。
「こんな面白いものを知らないのはもったいない」。そこから本書は始まりました。初心者の私の感想は、多くの方に通じるものだと思います。そうは言っても「順番を間違えると睨まれそう」? いやいや、そんな方にこそ「いいからだまされたと思って」と言葉を添えて、差し出したい一冊です。

2010/11/25

著者プロフィール

千宗屋

セン・ソウオク

1975(昭和50)年京都生まれ。本名は千方可(まさよし)。茶道三千家の一つ、武者小路千家15代次期家元として2003年、後嗣号「宗屋」を襲名。慶應義塾大学大学院修士課程修了(中世日本絵画史)。2008年、文化庁文化交流使に。茶道具のみならず古美術、現代アートにも造詣が深い。

武者小路千家・官休庵 (外部リンク)

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