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ポスト・モバイル―ITとヒトの未来図―

岡嶋裕史/著

748円(税込)

発売日:2010/07/16

  • 新書
  • 電子書籍あり

携帯電話が消える日。次に現れるデバイスは? 人間はどう変わるのか?

iPad、キンドル、スレートPC、ツイッター、クラウド……ITの潮流は私たちをどこへ運んでいくのか? 将来、携帯電話は、衣服や眼鏡といった、より日常的なモノに変化し、消えていく。ネット婚、電脳ペットや仮想旅行も既に本格的なビジネス化が進んでいる。実用化寸前のデバイスやシステムの最新情報を通し、コンピュータの胎内に人間や社会制度が取り込まれる未来を、あなたはもう迎えようとしている。

目次
まえがき
第1章 ネットがなくては生きられない
「ラブプラス」/ゲームではなく、環境/交際は現実なのか?/ネットワークに触れる時間/インターネットの商用解禁/最初のアクセス回線/興奮と失望/ラスト・ワン・マイルの高速化/ADSLは「コロンブスの卵」/定額料金化/次のステージは生活への浸透/変調/セットトップボックスの挫折/携帯電話の優位性/進む「属人化」/現実と仮想の接点
第2章 キーボード、マウス、ディスプレイからの解放
現代に至る軛/出力装置の試み/曲げられるディスプレイ/霧のディスプレイ/HMDとは?/開放式眼鏡型ディスプレイ/現実と仮想が融合した世界/3D市場の活性化/嗅覚ディスプレイ/触覚ディスプレイ/音声による機器操作/脳波コントロールは実用化できるか?/すぐに体験できる仮想現実/Tech48とは?
第3章 環境化するコンピュータ、贅沢品になる移動
ガジェットは力を持たない/別のシナリオ/コンピュータは環境化するか?/身体が常時接続にさらされる/「移動」が変わる/激化する電子書籍戦争/恋愛や結婚は?/実現の可能性
第4章 ネットと権力
監視社会はあり得るのか?/安全と利便性の名の下に/監視を感じさせない監視網/大衆という監視網/ライフログ/連携・接続する情報/国民総背番号制
第5章 ネットの海の向こうへ
「コンピュータ」がなくなる/サービスの窓口としての携帯電話/クラウドと演算能力の普遍化/サービスは包まれるものに/携帯の次
あとがき
[ブックガイド]

書誌情報

読み仮名 ポストモバイルアイティートヒトノミライズ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610377-3
C-CODE 0236
整理番号 377
ジャンル IT、モバイル・タブレット
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/10/28

蘊蓄倉庫

「クラウド」を試してみました

 本書にも登場する「クラウド・コンピューティング」についてですが、以前は何か難しい概念のように思い込んでいました。もはや多くの人が使っているグーグルの「Gmail」も、クラウドのひとつです。
 ほかにもスケジュールやカレンダー機能もある「Yahoo!メール」や映像管理やオンラインのアルバムが作れる「Yahoo!フォト」もなかなか面白いです。
 最近、注目されるクラウドのひとつ、「エバーノート」を試してみました……資料、写真、音源なども情報管理がたやすく、簡単に見やすい形で整理でき、かなり便利です。
 http://www.evernote.com/about/intl/jp/
 月40メガまでの情報なら無料で保存できます。外出先でも端末からメモ代わりに使い、あとで情報管理できるので、重宝しています。クラウドを頭で理解するより、実際使ってみると、そう難しくなく、すぐにその利便性を感じました。
 なお、本書では、モバイル隆盛の次に到来する未来への証左として、多くの新アイテムが紹介されています。その一部を挙げてみます。

サングラス型のモバイル(開放式眼鏡型ディスプレイ)、ヘッド・マウント・ディスプレイ(HMD、ゴーグル型ディスプレイ)、曲げられるディスプレイ(フレキシブル・ディスプレイ)、霧のディスプレイ(へリオディスプレイ:空間投影される)、嗅覚ディスプレイ(料理などの香りが漂う)、触覚ディスプレイ(ロボット・アーム型で研究中)、3D映像が撮影できるカメラ、セカイカメラ、脳波で動く電動車いす、現実的なフィギィアやラブドール……など。

 どれも試してみたい思いに駆られますが……。こうした進化の先にいったい何が起きるのでしょうか?
掲載:2010年7月23日

担当編集者のひとこと

どこまで実現できているのか?

 以前ブームになったFOXのTVドラマ「24」で、テロ対策ユニット(CTU)が出てきます。アメリカ国内での未曾有のテロを防ぐために、CTUのスタッフたちは、コンピュータを駆使して、高速道路や繁華街で監視網から不審人物をチェックしたり、航空機や地下鉄の運行を簡単に操作したり、大衆の顔写真から要注意人物のプロファイリングにかけたり……。ストーリーもさることながら、机上から操作するだけで社会をどうにでも動かしてしまう万能システムが、ちょっと現実離れしているように思っていました。
(そんな万能システムが機能しているなら、なぜテロリストの入国や周到な準備が勃発寸前まで見逃されているのか……)
 しかし、『ポスト・モバイル―ITとヒトの未来図―』には、その万能システムが実現されつつあることが示されています。
 商品のバーコードから客の情報を得る「RFIDタグ」、とカードやポイントでの購入履歴から、人物の嗜好と経済力を読み取り、GPSにより数センチ単位で人間の位置を特定し、体温をヒートセンサーで感知して、血圧や脳波などからその人物を特定する。しかも、端末から誰でもできる……。
 本書では、人びとがネットというロープに実は緊縛された管理社会に近い将来進むことを暗示しています。
 とはいえ、そんな心配とは別に、新デバイスの登場にはネットユーザーなら誰しも関心が湧きます。iPhone、iPad、キンドル、スレートPC……次には何が登場するのでしょうか?
 もはや端末を意識的に「携帯」せずに、衣服やメガネのような日常の中のものが、端末の機能を有していくというのです。そうした具体的な事例を本書で紹介しています。
 また、既に市民権を得ているといっても過言ではない仮想恋愛や電脳ペット。
 なんと仮想旅行までもがビジネス化されつつあり、近い将来、物理的移動や所有は贅沢な行為になるというのです。
 今や1人に1台は所有される携帯電話。15年前ここまで普及するとはだれが予測したでしょうか?
 予想外の変化が進み、いずれクラウドがさらに普及し(「蘊蓄倉庫」参照)、コンピュータが空気のように、ヒトの周囲に漂うようになる時、もはやモバイルを使うという意識さえなくなっていく……そんな「衝撃の未来」を、本書は具体的に見通しています。

2010/07/23

著者プロフィール

岡嶋裕史

オカジマ・ユウシ

1972年東京都生まれ。中央大学大学院総合政策研究科博士後期課程修了。富士総合研究所勤務を経て、現在、関東学院大学経済学部准教授、同大学情報科学センター所長。著書に『構造化するウェブ』(講談社ブルーバックス)、『実験でわかるインターネット』(岩波ジュニア新書)、『アップル、グーグル、マイクロソフト』(光文社新書)、『ポスト・モバイル』(新潮新書)、『ネット炎上 職場の防火対策』(日経プレミアシリーズ)など。

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