ホーム > 書籍詳細:どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門―

どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門―

大内伸哉/著

858円(税込)

発売日:2008/08/13

  • 新書
  • 電子書籍あり

副業、社内不倫、経費流用、ブログ、転勤拒否、内部告発、セクハラ……。身近な実例で学ぶ、我が身の守り方。

ブログで社内事情を書くのはOKか? 社内不倫を理由にクビになることはあるか? 経費の流用がバレたらどうなるのか? 副業はどこまで認められるのか? サラリーマンにとって身近な疑問を、実際の裁判例を参照しつつ、法律の観点から検証。法のルールを知れば、社内の不条理の正し方も、我が身の守り方も見えてくる。組織で働くすべての人のための、超実践的労働法入門。

目次
まえがき
1講 ブログ
ブログで社内事情を書いている社員がいてヒヤヒヤしています。あの社員はクビにならないのでしょうか?
2講 副業
会社に秘密で風俗産業でアルバイトをしている女性社員がいます。法的に問題はないのでしょうか?
3講 社内不倫
社内不倫しています。これを理由にクビになる可能性はありますか?
4講 経費流用
私用の飲食代を経費として精算したのがバレてしまいました。どれぐらいの額だとクビになりますか?
5講 転勤
会社から転勤を命じられました。どういう事情があれば拒否できますか?
6講 給料泥棒
まったく働かない給料ドロボーがいます。会社はこういう人を辞めさせることはできないのでしょうか?
7講 内部告発
会社がひどい法令違反をしています。内部告発をした時に自分の身を守る方法はありますか?
8講 合併
会社が他の会社と合併することになりました。合併後は給料が下がりそうなのですが、そんなことは認められるのでしょうか?
9講 残業手当
上司に言われていた仕事が勤務時間内に終わらずに残業しました。こういうときでも残業手当をもらえますか?
10講 新人採用
半年の試用期間で「採用失敗」が明らかになった新入社員がいます。会社は彼を本採用することを拒否してよいのでしょうか?
11講 セクハラ
「仕事の話」を口実に上司から夕食にしつこく誘われています。これってセクハラではないですか?
12講 過労死
過労自殺した同僚がいます。遺族に最大の金銭的補償をしたいのですが、会社に要求できるのはどんなことですか?
13講 労災認定
自分のうっかりミスで仕事中に大ケガをしました。労災保険は適用されますか?
14講 定年
会社の定年は65歳なのですが、70歳まで働きたいと思っています。定年制の廃止を会社に要求することはできますか?
15講 喫煙問題
職場がいまだに禁煙になっていません。これって法的な問題はないのでしょうか?
16講 痴漢
痴漢で捕まってしまいました。会社にバレたらクビになりますか?
17講 妊娠出産
妊娠を報告したところ、上司が冷たくなりました。妊娠中の社員の権利について教えてください。
18講 経歴詐称
経歴を低く偽っていたことがバレてクビになった公務員がいました。経歴を低く偽ることの何が問題なのでしょうか?
補講
勤務時間中のネット遊びは危険/副業の法律問題/恋愛禁止の職場/会社が社員を訴えることはできるのか?/人事異動/労働組合から脱退すればクビ?/内部告発に対する報復的な処分が問題となった裁判例/事業譲渡/残業手当が支払われない人/内定を取り消すとどうなる?/職場のイジメ/過労死/「労働者」性の判断/さまざまな定年/イタリアの禁煙法/懲戒解雇と退職金/男性が育児休業をとらない理由/懲戒処分の種類

書誌情報

読み仮名 ドコマデヤッタラクビニナルカサラリーマンノタメノロウドウホウニュウモン
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610277-6
C-CODE 0234
整理番号 277
ジャンル ビジネスの法律、法律、社会学
定価 858円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2011/11/25

インタビュー/対談/エッセイ

波 2008年9月号より 労働法を知ることの効用

大内伸哉

法律というと世間では、どうも取っつきにくいイメージがあるようです。できたら関わり合いたくないもの、と思われているのかも知れません。確かに法律には、国家が国民を取り締まる手段という面があることは否定できません。人を殺したり物を盗んだりすれば、法律により処罰されてしまいます。借金が返せなくなれば、法律が発動されて、財産を差し押さえられて、売り払われてしまいます。生活保護の申請に行くと、行政の窓口は、法律を厳格に解釈・適用して、なかなか受理してくれないことがあります。法律は時に、庶民の味方ではなく、むしろ敵のようにみえます。
しかし、雇用社会のルールを定める労働法(そのなかには、労働基準法、労働契約法、最低賃金法、労働安全衛生法等さまざまな法律が含まれます)を見ると、法律も少し違った様相で見えてくるかもしれません。労働法は、会社と社員のうちの会社のほうを取り締まることを目的とするものだからです。つまり、社員にとっては自分たちの利益を守ってくれるものなのです。
ただ、このことには、少しだけ留保が必要です。たとえば、労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。要するに、会社が社員をクビにするには正当な理由が必要ということです。このことには、実は二つの意味があります。一つは、会社が正当な理由なしに社員をクビにしても、それは法的には無効ということです。もう一つは、会社が正当な理由をもって社員をクビにすれば、それは法的には有効ということです。
このように見ると、労働法というのは、正確に言うならば、社員の利益だけを守るのではなく、社員の利益と会社の利益のそれぞれがどこまで守られるのかということについての線引きをするルールを定めたものといえるのです。
本書は、社員の利益はどの範囲まで守られているのか、逆に言うと、社員がどこまでやれば会社からクビにされたり懲戒処分を受けたりするのかということを、事例をあげながらできるだけわかりやすく説明しようとしたものです。労働法は、いつでも社員の味方というわけではないからこそ、どこまでなら自分たちの味方でいてくれるのかを、本書を通して知ってほしいのです。
タイトルの『どこまでやったらクビになるか』には、まさにそのような意味が込められています。誤解のないように述べておくと、これは、「クビにならない範囲なら何をしてもよい」という意味ではありません。法は「最低限の道徳」です。法が許していたとしても、道徳の縛りはなお残るのです。社員と会社の双方が法のルールを守りながら、節度をもって相互に信頼関係を築いていくというのが理想的な雇用関係といえるでしょう。

(おおうち・しんや 神戸大学大学院法学研究科教授)

蘊蓄倉庫

労災認定のグレーゾーン

 ある災害が労災と認められるには、その災害に「業務起因性」があることが条件となります。例えば、出張中にホテルが火事になって逃げる時にケガをしたというケースなら、事故が職場で起こったわけではなくても「業務起因性」が認められるでしょう。これが夜中に勝手に飲みに行って、その飲み屋でケガをしたというなら「業務起因性」は認められないはずです。
 ただ、日本の会社では私的とも仕事ともつかない飲み会が頻繁に開かれますから、そこで何らかのトラブルがあった時に、「業務起因性」が認定されるかどうかはケースバイケースになります。実際の裁判でも、一審と二審で判断が分かれたケースがあります。
掲載:2008年08月25日

著者プロフィール

大内伸哉

オオウチ・シンヤ

1963(昭和38)年神戸市生まれ。東京大学法学部卒、同大学院法学政治学研究科博士課程修了。神戸大学大学院法学研究科教授。法学博士。労働法を専攻。著書に『労働条件変更法理の再構成』『イタリアの労働と法』『労働法実務講義』『雇用社会の25の疑問』ほか多数。

この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

感想を送る

新刊お知らせメール

大内伸哉
登録
ビジネスの法律
登録
法律
登録
社会学
登録

書籍の分類