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オタクはすでに死んでいる

岡田斗司夫/著

748円(税込)

発売日:2008/04/16

  • 新書

脂肪の次は思考を整理。一億総コドモ社会はなぜ生まれたのか。

テレビの企画で、いまどきのオタクたちに対面した著者が覚えた奇妙な違和感。そこから導き出された結論は「オタクはすでに死んでいる」だった。小さな違和感から始まった思索の旅はやがて社会全体の病にまで辿り着く。日本人はなぜ皆、コドモになってしまったのか。自由自在に飛び跳ねる思考の離れ業のダイナミズムを堪能出来る一冊。

目次
はじめに
第1章 「オタク」がわからなくなってきた
アキバ王選手権/普通の兄ちゃんだった「アキバ王」/一番のファンでありたい/出来合いのお宝/真剣10代しゃべり場/終わりの予感
第2章 「萌え」はそんなに重要か
「萌え」がわからない/ミリタリーオタクと萌えオタクの差/差別する人たちのメンタリティ/アトランティスとバベルの塔/終焉への予感
第3章 オタクとは何者だったのか
オタクの定義/ネット上の定義/今の世間の定義
第4章 おたくとオタクの変遷
カタカナになった/オタク以前のおたく時代/М君の存在/オタク学入門/イメージの好転/オタクの拡大/オタク原人と第一世代/第一世代はテレビっ子/第二世代と世間/純粋培養の第三世代/アカデミズムによる定義/東京だけが日本ではない
第5章 萌えの起源
日本社会の特殊性/少年マガジンの変遷と日本人の変化/変化はすべての男性誌に/水着は無敵/アニメファンの変容/アニメファンの断絶/「萌え」の誕生/「萌え」の浸透/多民族国家としてのオタク/女オタクの問題/女子という生き物/男オタクの女性化/オタク評論の限界
第6章 SFは死んだ
先例としてのSF/移民が増える/SFファンの変容とSFの死/死の実情/少年ファンの時代/世代間論争のはじまり/世代間闘争へ/運動と闘争の果て/SFの崩壊
第7章 貴族主義とエリート主義
映像がSFを滅ぼした/「萌え」はオタクを滅ぼすのか?/オタク貴族主義/オタクエリート主義/貴族とエリートの反目/第三世代はセンシティブ/中心概念の不在/それぞれの壁/民族のアイデンティティー/努力が消えた/魂の本音
第8章 オタクの死、そして転生
オタクからマニアへ/自分の気持ち至上主義/日本とオタク/平成型不況の影響/個人の時代に/大人は損を引き受ける/大人の仕事
あとがきに代えて――「オタクたちへ」

書誌情報

読み仮名 オタクハスデニシンデイル
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書
判型 新潮新書
頁数 192ページ
ISBN 978-4-10-610258-5
C-CODE 0236
整理番号 258
ジャンル 社会学
定価 748円

インタビュー/対談/エッセイ

波 2008年5月号より 一億総コドモ社会とオタク

岡田斗司夫

オタクは死んだ。
僕がそんなふうに言い切ると、こんな怒りの声が飛んできそうだ。
「ケッ、ダイエットがうまくいって、脱デブに成功したからって、今度は脱オタクかよ。調子に乗るんじゃねえ」
確かに僕は一昨年からダイエットを始めて五〇キロの減量に成功した。その経験と自分で考案した「レコーディング・ダイエット」のノウハウをまとめた『いつまでもデブと思うなよ』を、昨年刊行したところ、おかげさまで予想以上に多くの方に読んでいただけた。
でも、それで調子に乗って「脱オタク」を宣言したわけではない。僕が「オタクの死」について最初に語ったのは二〇〇六年。「オタク・イズ・デッド」というタイトルで開いたトーク・イベントでのことだった。つまりデブ時代の話なのだ。
「だからどうだっていうんだ。大体、オタクなんて奴らが生きようが死のうが知ったことか」
今度はそんなふうに言われるかもしれない。
でも、実は死んだのはオタクだけではない。オタクの死は、「昭和の死」も意味しているのだ。もう少し詳しく言うと、戦後の日本に存在していた「高度消費社会」と「勤勉な国民性」の両方が失われたということだ、と僕は考えている。「失われた」というと否定的すぎるかもしれない。日本人は昭和の次のステージに入ってしまった、と言ってもいいだろう。これは世界中の誰も経験したことがないステージだ。
その結果、どんなことになっているか。日本人全体がコドモになってしまった。「大人になるのは損だ」と思う人だらけになってしまった。一億総コドモ化が進んでしまったのだ。
学校ですぐにキレる親、医者を吊し上げる患者。
店員を怒鳴る客、病的なクレーマー。
責任者に土下座させないと納得しないマスコミ。
これらが僕達自身、または、すぐ隣にいる「平均的日本人」の姿になったのである。
それゆえに「大人の見識」を学ぼうとする人がたくさんいるのだ。そう、身についていないから本で学ばざるを得ないのである。
だからといって「昔はよかった」式の話をするつもりはまったくない。ただ、日本中がこうなっている、ということは認識すべきだというだけである。
さて、今度はこんなふうに言われるかもしれない。
「日本人が変わってきたことには思い当たるけれども、そのことと、オタクと何の関係があるっていうんだよ」
なぜオタクの死が、昭和の死でもあり、一億総コドモ社会を生み出したのか。その詳細はこの行数にダイエットして書くことはとても無理だ。
本論については本書をお読みいただきたい。

(おかだ・としお 評論家)

蘊蓄倉庫

ロリコン国家日本

 来日した外国人が「日本人はみんなロリコンなのか?」と驚くことがあるそうです。その理由は、駅の売店で売っている雑誌のほとんどが美少女を表紙にしているから。考えてみれば大人向けの雑誌までそうというのは珍しいのでしょう。岡田斗司夫さんは、この起源は「少年マガジン」だといいます。そして、これが最近の「萌え」ブームにつながっているのだ、と。詳しくは本書で。
掲載:2008年04月25日

担当編集者のひとこと

クレーマーとオタク

 最近の若い人はおかしい。いや老人だって非常識だ。日本人全体がおかしい。劣化しているのだ。幼稚になっているのだ。
 ――こういう話をよく聞きます。統計的に証明できるわけではないですが、実感としてそんなふうに感じる場面はよくあるのではないでしょうか。
 誰かがちょっとしたミス、失言をしただけで、寄ってたかって叩きまくる。土下座をしても許さない。そんな風潮もあるようです。
 マスコミに大きな責任があるのはいうまでもありませんが、どうも日本中にクレーマー気分が蔓延しているかのような感じもします。
 なぜそんなことになったのか。
 岡田斗司夫さんは、「オタク」を切り口に、それを見事に読み解きます。 オタクの代表、オタキングとして知られる岡田さんは、あるときテレビ番組の企画で、若い「オタク」に会います。そして違和感を覚えます。
「どうもこれは自分の知っているオタクとは違う人たちが増えているようだ」
 そこから岡田さんの脳は高速回転を始めます。
 どこに違和感があったのか? じゃあオタクって何なのか? なぜオタクは変質したのか? この問題を考えていくうちに、思考は社会全体の変質に行き当たります。
 そして「なぜ日本中にクレーマー気分が蔓延したのか」「なぜ日本人が劣化したとされるのか」という問いへの答えが導き出されるのです。
 昨年50キロのダイエットで話題になった岡田さんが、「脂肪の次は思考の整理」とばかりに、大胆に日本という「一億総コドモ社会」を斬る社会評論です。

2008/04/25

著者プロフィール

岡田斗司夫

オカダ・トシオ

1958(昭和33)年大阪生れ。文明批評家。大阪芸術大学客員教授。1985年、アニメ・ゲームの制作会社ガイナックス設立、1992(平成4)年退社。1997年、講演・執筆活動のために株式会社オタキング設立。『オタクはすでに死んでいる』『いつまでもデブと思うなよ』『「世界征服」は可能か?』『フロン――結婚生活・19の絶対法則』など著書多数。

OTAKING SPACE PORT (外部リンク)

レコーディング・ダイエットのススメ (外部リンク)

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