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観光都市 江戸の誕生

安藤優一郎/著

748円(税込)

発売日:2005/06/17

  • 新書
  • 電子書籍あり

今日は浅草、明日は目黒。見どころいっぱい八百八町。

従来、観光地としてイメージされることがあまりなかった江戸。一〇〇万前後の人口を抱え、参勤交代などで絶えず住人が入れ替わった江戸は、一大観光都市だった。将軍吉宗は都市化に伴って減少した憩いの場を江戸市民に提供した。寺社は霊験よりも見世物で参拝客争奪戦を繰り広げ、大名はお国自慢の神仏を江戸屋敷に勧請し賽銭を集め、苦しい財政の足しにした。歌舞伎や落語、時代小説だけではわからない、大江戸観光事情をあきらかにする。

目次
プロローグ
第一章 日記が語る遊山の楽しみ
1 憧れの江戸単身赴任
将軍の帰城に出くわす
今日は両国、明日は目黒
定番の赤穂浪士墓所
生まれて初めてのおいらん道中
舶来動物は大人気
梅若伝説・隅田川に触れる
高級料亭を満喫する
王子で異国人に出会う
寺巡りより味巡り
2 江戸っ子も大忙し
隠居大名、悠々自適
町名主、年賀に江戸城へ
酒呑童子、天下祭に現れる
第二章 よりどりみどりの八百八町
1 吉宗の観光振興
誇りの証「江戸名所図会」
都市化が求めた気晴らし
寛永寺から飛鳥山へ
隅田川堤から桜餅
桜と紅葉の品川御殿山
犬小屋が桃園に
秘められた意図
緑あふれる庭園都市
下町に広がる水の都
振袖火事と両国橋
2 御利益より娯楽の神社仏閣
参詣客を増やしたい
門前は一等地
半径二キロの周遊観光
ガイドブックと専属案内人
参勤交代が生む潜在需要
第三章 ご開帳の集客力
1 なぜ開帳が頻繁にあったのか
寺社の多角経営
出開帳四天王
神仏のデパート浅草寺
何かと理由をつけて……
2 秘仏の力と信心だけには頼れない
六○日で一六○○万人
お金でランクが決まる開帳空間
アイドルお仙登場
関羽像で賽銭が倍に
隠居大名、見世物をはしご
ディズニーランドも真っ青
3 差別化がカギを握る経済効果
半年分の賽銭が二ケ月で
新旧商人対決は冥加金勝負
開帳大失敗で霊宝売却
不振続く江戸後期の開帳
客寄せは赤穂浪士の遺品
目立つ奉納物で宣伝目論む商人
薄れていく宗教性
第四章 成田ブランドを確立した戦略
1 佐倉藩主・稲葉正通の政治的意図
鉄道敷設の起源
宿寺・深川永代寺の利点
江戸城に入った成田不動
領民対策と老中の立場
2 知名度アップに貢献した市川團十郎
講中に支えられた不動信仰
開帳にあわせた舞台が大ヒット
街道も門前町も活性化
3 群を抜くマーケティング戦略
開帳までの長い道のり
立て札で町中に告知
華麗な江戸入り道中でさらに宣伝
メディア・ミックス
総額二○○○両の大事業
一五○年間の努力でトップブランドに
第五章 武士たちの新規参入
1 武家屋敷の神仏――非日常的空間の魅力
流行神、太郎稲荷
若殿平癒で参詣殺到
便乗商法でトラブル発生
2 大名家の貴重な副収入
国元の神仏を江戸に勧請
過熱を懸念する幕府
バカにできない賽銭額
インチキで客寄せする大名
お国自慢と実益と
エピローグ

あとがき

参考文献
索引

書誌情報

読み仮名 カンコウトシエドノタンジョウ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610122-9
C-CODE 0221
整理番号 122
ジャンル 日本史
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/01/27

蘊蓄倉庫

E大名屋敷の中も観光地

 日本橋蠣殻町の水天宮、虎ノ門の金刀比羅宮、元赤坂の豊川稲荷――。どれも、江戸時代から現在まで、多くの参詣者を集める人気神社ですが、この三つには共通点があります。
 江戸時代には大名屋敷の中にあったということです。当時、政治の中心地だった江戸には全国の大名が屋敷を構え、邸内に地元の寺社を勧請していました。水天宮は筑後久留米藩有馬家、金刀比羅宮は讃岐丸亀藩京極家にありました。大名屋敷といえば、庶民が簡単に出入りできない場所のはずですが、実は、定期的に日を決めて公開していたのです。
 この神仏公開には、思わぬ余得もありました。お賽銭です。江戸末期、大名の財政はどこも火の車。お賽銭は貴重な副収入となりました。有馬家の会計記録には「水天宮金」という項目があり、幕末には年間2000両にもなったとか。中には、神仏をでっち上げて一儲けをたくらみ、幕府のお咎めを受けた大名もいたそうです。
掲載:2005年6月24日

著者プロフィール

安藤優一郎

アンドウ・ユウイチロウ

1965(昭和40)年千葉県生まれ。歴史家。日本近世政治史・経済史専攻。文学博士(早稲田大学)。NHK文化センターなどで生涯学習講座の講師を勤める。最近は武士の生活文化の諸相について研究を進めている。著書に『観光都市 江戸の誕生』『江戸の養生所』など。

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