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アメリカ病

矢部武/著

748円(税込)

発売日:2003/05/21

  • 新書
  • 電子書籍あり

銃依存症・巨大化整形・マッチョ願望・健康マニア・精神分析教……。どこを見ても末期症状な人々。

いま明らかにアメリカがおかしい。外交や政治・経済ばかりではない。もっと根幹にある日常の空気に目を向けてみると、見えてくるのは何かにとりつかれた病的な姿だ。過剰なまでの健康志向、心療内科の隆盛、ペニス拡大手術や女性の豊胸手術の流行、そして“正しさ”への盲信……、もはやどこを見渡しても末期症状。強迫観念に覆われた米国社会を精神分析する。

目次
まえがき
第一章 「つねにポジティブである」ことに疲れたアメリカ人
精神科医がスターになる国
全米を覆ったポジティブ・シンキング
重病人にも「明るくなれ」という残酷
見せかけだけの「幸せな家庭」
結婚生活は寿命を縮める……
力で女性を支配しようとする男たち
第二章 健康管理、ダイエット、フィットネスに走る「不健康」
心配しすぎて健康不安神経症に
ジャンクフードを食べながらダイエット
米国人の三分の二が太りすぎ
子供はみんなファーストフードづけ
「太る」恐怖に怯える女たち
「肥満はマクドナルドのせい」
お金目当ての「禁煙ファシスト」
第三章 家、車からペニス、女性の胸まで全てマッチョ志向
「僕は豊胸手術した女性が大好きだ!」
Dカップにして性生活が盛り上がったが……
十数万人が訴える手術後の障害
中高年のフェイスリフト、脂肪吸引……
カウンセラーの役割を求められる美容外科医
美容手術で命まで落とす例も
男もペニス拡大手術に殺到
第四章 ポリティカリー・コレクトという原則論
「キリスト教右翼原理主義」
産婦人科医を殺すのが「聖書の教え」
差別的表現の撤廃を求めるPC
「政治的に正しい」ペットオーナー?
ブッシュを激怒させたTVショー
政府のなかにKKK支持者
「アメリカの正義」ほど信用できないものはない
第五章 銃を持たなければ身の安全も自由も守れない
銃を持った人と議論してはいけない
誰でも連続狙撃犯になる可能性
ブッシュ大統領はライフル協会の友人だ!
「悪の帝国」NRAの正体
護身用の銃がいざという時に役立たない理由
撃たれるのが恐くて学校へ行けない
「米国には頭のおかしな人間が他の国より多い!」
第六章 「誰にも平等なチャンスが与えられている」のウソ
アメリカンドリームを夢みる移民たち
アメリカンドリームが「ただの悪夢」に変わるとき
金持ちばかりがどんどん豊かになる国
ある日本人女性の意地
ロックスターを夢みて渡米して……
白人に近づくための美容整形
報道されない真の米国社会
行き着いた果ての「文明」
あとがき
参考文献及びソース

書誌情報

読み仮名 アメリカビョウ
シリーズ名 新潮新書
発行形態 新書、電子書籍
判型 新潮新書
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-610012-3
C-CODE 0225
整理番号 12
ジャンル 政治、社会学、地理・地域研究、ビジネス・経済
定価 748円
電子書籍 価格 660円
電子書籍 配信開始日 2012/02/24

蘊蓄倉庫

美容整形が大流行の米国事情

 とにかくアメリカ人を見ていると、自分たちは常に“正しくあらねばならない”“ポジティブであらねばならない”“健康であらねばならない”……、そういった強い思い込みに追い立てられているように感じてしまいます。
 根強い「巨乳信仰」から、実に200万人以上が豊胸手術を受けており、さらに胸を大きくしたいと考えている女性は1600万人もいるとか。芸能人に至ってはほとんどが手術を受けているといっても過言ではありません。エリザベス・テーラーのアゴと胸、巨乳女優のパメラ・アンダーソンの胸も偽物、レオナルド・ディカプリオのアゴも整形です。政治家も例外ではありません。甘いマスクを売りに、92年の大統領選に立候補したD・デュークの顔も。
 もっとも最近では、多くのアメリカ人男性が筋肉豊胸やペニス拡大手術に殺到しているそうですが…。詳しくは『アメリカ病』で。

掲載:2003年5月23日

担当編集者のひとこと

“病めるアメリカ”の解説書決定版

 アメリカのジャーナリスト、マイケル・ムーアという人物が、脚光を浴びています。彼の撮った映画『ボウリング・フォー・コロンバイン』は、一月に公開されるや、連日、長蛇の列。アメリカ銃社会の深刻な実情を痛烈な皮肉をこめて描いた作品は、今年度のアカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞も受賞しました。そして、ブッシュをはじめとして白人インテリ層をこき下ろした、著作『アホでマヌケなアメリカ白人』(柏書房)は、二十万部のベストセラーとなっています。
 本書のテーマは、このマイケル・ムーアが抉り出そうとしたものと同じ視点にあります。 超大国・アメリカは明らかに異常な国となっています。外交や政治、経済については日々の報道で十分過ぎるほど伝えられていますが、そうではない、もっと根幹の“日常”に蔓延する空気から米国社会を分析してみると……強迫観念にとりつかれた病的なアメリカ人の姿が見えてきます。
「職場でも家庭でも常にポジティブな人を演じなければならず」、「ダイエット、フィットネスにヒステリックに走り」、「家、車からペニス、女性の胸まで全てがマッチョ志向」、「銃を持たなければ身の安全も守れない」と言いながら毎年三万人が銃で命を奪われている実態。
 私たち日本人は、米国を身近に感じていますが、この異常ぶりは、案外、知らないのではないでしょうか。ハリウッド映画でも、メジャーリーグ・ベースボールでも、音楽でも、マイクロソフトでもない、“等身大のアメリカ”についてです。
 かつて「自分たちが世界一だ」と、ずっと思い込み、国力を失していったイギリスを「イギリス病」といいましたが、それをもじり、“アホでマヌケな”アメリカ人を「アメリカ病」と称し、皮肉とユーモアたっぷりに描きました。
 誰も語らなかった「アメリカの正体」を明らかにしています。そして何より、「アメリカ病」は、明日の日本の姿でもあるのです。

2003年4月刊より

2003/05/21

著者プロフィール

矢部武

ヤベ・タケシ

1954(昭和29)年埼玉県生まれ。1970年代の渡米以降、日米の両国を行き来し、取材・執筆活動を続けている。米ロサンゼルスタイムス紙東京支局記者を経てフリーに。著書に『アメリカ病』『ひとりで死んでも孤独じゃない―「自立死」先進国アメリカ―』などがある。

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