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二流のアメリカ人にならないために――。左でも右でもなく日本を考える一冊。

日本人はなぜ日本を愛せないのか

鈴木孝夫/著

1,430円(税込)

本の仕様

発売日:2006/01/25

読み仮名 ニホンジンハナゼニホンヲアイセナイノカ
シリーズ名 新潮選書
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 252ページ
ISBN 978-4-10-603559-3
C-CODE 0395
ジャンル 社会学、ノンフィクション、ビジネス・経済
定価 1,430円
電子書籍 価格 1,144円
電子書籍 配信開始日 2017/10/13

一度も異民族に征服された経験がない国、日本。ユダヤ人のような強烈な自己主張を苦手とし、外国文化を要領よく取り込んで“自己改造”をはかる国柄は、なぜ生まれたのか。世界でも珍しい“寛容な”民族の思考パターンを、「部品交換型文明」の視点から丸ごと分析。欧米一辺倒でも大陸追従でもない道を語る画期的日本論。

著者プロフィール

鈴木孝夫 スズキ・タカオ

慶応義塾大学名誉教授。1926年、東京生。同大文学部英文科卒。カナダ・マギル大学イスラム研究所員、イリノイ大学、イェール大学訪問教授、ケンブリッジ大学(エマヌエル、ダウニング両校)訪問フェローを歴任。専門は言語社会学。著書に『閉された言語・日本語の世界』をはじめ、『ことばと文化』『日本語と外国語』『武器としてのことば』『日本人はなぜ日本を愛せないのか』『日本語教のすすめ』『人にはどれだけの物が必要か』『日本の感性が世界を変える』など多数。

目次

はじめに
第一章 素晴らしいものは、海の向こうからやってくる
――「蜃気楼効果」による外国礼賛の心理
第二章 外国の醜いところが全く見えない!?
――世界に例のない日本人の「バスト型外国観」
第三章 魚介か家畜か
――動物性食料源の違いに由来する世界観の相違
第四章 外国は、「話せば分かる」か?
――征服されたことのない日本人の「不沈戦艦幻想」
第五章 部品交換型文明の光と影
――日本語を棄てたがる日本人
第六章 日本人の自信回復のために
――歴史を知るということ
第七章 「地救原理」と日本の生き残り戦略
――日本の進むべき道はここにある

インタビュー/対談/エッセイ

波 2006年2月号より 著者インタビュー 『日本人はなぜ日本を愛せないのか』を語る 日本の「長所」は何か  鈴木孝夫『日本人はなぜ日本を愛せないのか』

鈴木孝夫

 今日はまず私から質問しますよ。
――先生、今日は著者へのインタビューなんですけれど……。
 まあそう言わずに。本は編集部の問いに答える形で構成したので、今日はこちらから最初にお尋ねしましょう。さて質問。
「戦争とテロの嵐が吹き荒れる二十一世紀に、世界第二の経済力を持つ日本が、指導的大国としてアピールできる『長所』は何だと思いますか?」
――指導的大国としての長所、ですか? あらためて訊かれると困るような……。
 確かに、超大国アメリカのように「世界のあり方は自分たちが決める」という強烈な使命感や、中華思想のような強い自己主張を日本は持ったことがありませんから、そのような「長所」を問われても戸惑うかもしれませんね。しかし、私は必ずしも悲観的ではないんですよ。
――具体的に説明していただけますか。
 二点お話ししましょう。まず一つめの長所は、異質な外国文化を平気で取り入れ、他の国から見れば呆れるほどの混合文化社会をつくる才能です。これは、悪く言えばいい加減であり、よく言えば硬直したイデオロギーとは無縁のありようですね。例えば宗教のように、本質的には異質の他者を認めない領域でさえ、すべて相対化し融合させてしまいます。つまり、原理原則の議論を戦わせ、強固な信念で相手を説得するよりも、実際に役立つ物事を好む実利的性向があるんですね。「花より団子」「論より証拠」の発想とも言えます。
――日本人は、ユダヤ人のような強烈な原理主義と無縁で、寛容というか、「何でもあり」ですね。
 そう、不寛容の代表格は一神教ですね。イスラーム教、キリスト教の歴史上、神の名のもとにどれほどの血が流され、幾度、凄惨な弾圧と虐殺が繰り返されたことか。泥沼のパレスチナ問題をはじめ、北アイルランドのカトリックとプロテスタントの抗争などは現代の宗教戦争です。この宗教的不寛容が、今後も世界平和を乱す要因になることは間違いありません。そのためにも、協調的混合文化社会の典型として、日本のありようをまず日本人自身が見つめ直して、それを世界に広めるべきだと考えているのです。
――もう一つの「長所」は何でしょうか。
 それは、日本人なら誰でも深層心理に抱いている「アニミズム的な世界観」です。昔から日本人は、生きとし生けるものすべて、いやそれどころか山や森といった無生物にさえ魂や精神性を感じてきました。この世界観こそ、日本人が持っている実に大きな財産だと思うのですよ。
 この世界観は一神教の世界観とはまったく異なります。一神教の世界は、神を最高位におき、次に人間、家畜、野獣、そして下等動物といった具合に断絶した上下階層で成り立っています。そして人間は世界を管理する立場にいると考えるから、人間中心主義なんです。ところが、日本人は心の底で、人も死ねばやがて神になるし、動物も人間も一続きの循環構造のなかで次々とめぐっていると考えてきました。
 しかも日本人のすごいところは、こうした古代的なアニミズムを深層心理に残しながらも、西欧文明社会のトップレベルにわずか百年で到達したということなのですよ。
――いわゆる輪廻転生の世界観というわけですが、ちょっと古い考えというか現代には合わないような気も……。
 いや、そうじゃないんです。まさにこの循環的世界観こそ、非科学的どころか、現代科学の最先端の知見にも合致しているんです。しかも人類の文明は、いま資源枯渇や環境汚染、そして自然的世界の急速な崩壊に直面して危機的な段階を迎えているのですから、日本人はこれをチャンスとして捕えるべきなのです。ですから、いまこそ、自分たちの過去の精神的文化原理を振り返り、そこにこれまで肯定的に見ることをしなかった自己の本来の姿を再発見する必要があります。この世界観を理論的に強化する努力をすれば、出口の見えない対立が続く世界に新しい道を提示することができると、私は考えているのです。
――それが日本の生き残る道ということですね。
 そうです。でも困ったことに、日本固有のこうしたありようには弱点があるんです。長所は短所の裏返しというでしょう?
 それではどうしたらよいのかは本書を読んでいただくとして、異質な他者への容赦ない排除を文化原理とする西欧文明が主導権を握る今のトゲトゲした世界を、平和と融和の世界へと変えていこうとするならば、何よりもまずこれからの日本人は、相手を上回る説得力で自らの文化原理を伝え広めていかねばなりません。武力で折伏するのは論外です。私は、言語社会学の専門家として、言葉で相手に自分を伝えること、これまで軽視されてきた「言力こそ最も重要だと強く主張します。日本の中にある自らの宝を言力で伝えていかなければ、宝の持ち腐れになってしまうのではないでしょうか。アニミズム的な古い知恵を持ちながら西欧文明の一角を占めることができた日本こそ、行き詰まりをみせている硬直した西欧文明原理に、新しい光を投げかけることができるはずです。それは、明治維新以後百年をかけて、西欧文明の素晴らしい果実を吸収してきた日本が、西欧社会に恩返しをすることに他なりません。
 私は、これからの日本と読者諸氏が、大国に追随し小突き回される「情けない国」でもなく、かといって人類史上初めて選んだ非武装の道を棄てて「再軍備」するのでもなく、今世紀を『言葉の力』で生き抜いていくことを心から願って、本書を書きました。

(すずき・たかお 慶応義塾大学名誉教授・言語社会学)

【書評】ときに身が震えた(保阪正康)

担当編集者のひとこと

日本人はなぜ日本を愛せないのか

 最近、日本って外国にナメられてるよなあ……と感じたことはありませんか?
 アメリカからの輸入牛肉問題しかり、中国の油田開発問題しかり。日本が正当に抗議しても、「ああ言えばこう」と主張を押し通し、簡単には自分の非を認めない諸外国。それにくらべて、良くも悪くも日本人は、外国から非難されると、とりあえず謝罪する傾向がありますよね。断固として自分の立場を主張し、不寛容の態度を貫くことは苦手な国柄のようです。 日本人はどうして強い自己主張が苦手なのか。どうしていつも諸外国に振り回されがちなのか——。あらためて問われると、簡単には答えられない問いではないでしょうか。本書には、他にも意外な問いがふんだんに散りばめられています。「なぜ日本人は外国を素晴らしいと思いがちなのか」「どうして日本には世界征覇を夢見る人物が生まれなかったのか」……。
 その答えを探っていくと、日本という“世界にも稀な国柄”が見えてきます。と同時に、アメリカ追随でもなく、中国礼賛でもない第3の道と、日本の誇りとすべき特質が見えてきます。この国の根っこを自分の目で見つめ直したいすべての人に読んでほしい、大げさではなく、21世紀を生きていく日本人のよりどころにしてほしい、そんな思いをこめて本書をつくりました。

2016/04/27

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