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林芙美子 女のひとり旅

角田光代/著 、橋本由起子/著

1,540円(税込)

発売日:2010/11/25

  • 書籍

一度こういう旅をすると、人は死ぬまで旅に取り憑かれる――角田光代

恋に生き、旅に生きた一人の作家。『放浪記』で大ブレイク後も、感覚を磨くために二〇代でパリへ、心の疲れをいやすために三〇代で北海道へ、そして四〇代の屋久島行きは来し方を振りかえる旅に――他にも尾道、門司、北京など、芙美子が人生の節目に訪れ、愛した場所を、心はずむ彼女の紀行文を読みながら訪れてみませんか。

目次
旅という覚醒 角田光代
一 門司
私は宿命的に放浪者である
二 尾道
泳いだ海、恋をした山
三 東京
ああ一人の酔いどれ女でございます
四 パリ
巴里の街は、物を食べながら歩けるのです
五 北海道
山や湖を見て暮したいと思っていました
六 北京
私は北京がほんとうに好きだ
七 屋久島
人間が住んでいる島なのかと思えるほどだった
八 落合
この近所で私を知らないものはもぐりだそうでコウエイの至りなのである
風の吹き抜ける家
私の家では、茶の間と台所と風呂が中心をなしている
芙美子の旅行術 橋本由起子
一 のりもの
二 かいもの
三 たべもの
年譜
地図

書誌情報

読み仮名 ハヤシフミコオンナノヒトリタビ
シリーズ名 とんぼの本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 136ページ
ISBN 978-4-10-602212-8
C-CODE 0390
ジャンル 文学賞受賞作家、ノンフィクション
定価 1,540円

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担当編集者のひとこと

『放浪記』や『浮雲』などで知られる林芙美子(1903-51)は、恋多き作家として知られていますが、年譜を見ると、旅も多かったことがわかります。そもそも、私生児として生れた彼女は、古里を知らず、13歳で尾道の学校に入るまで、両親の行商について九州各地を転々としていました。
 芙美子は〈長旅は一人にかぎる〉〈やりきれなくなるから旅をするのだ〉と書いています。その旅は、戦中の従軍ルポをのぞけば、仕事のためというより、仕事のストレスから逃れるための旅が多かったようです。とはいえ、売れっ子作家だったので、どこへいってもそのあと紀行文を書くはめになるのですが。

 今回、芙美子の紀行文を初めてまとめて読みました。どれもとてもおもしろかった。意外、といってはなんですが、素直で、正直で。気持のたかぶりだけでなく、寂しさや、屈託も記されているところに、時代をこえて、「そうそう、旅ってそうだよねー」と共感できました。
 この本では、そんな彼女の紀行文から、八つの場所を選びました。門司、尾道、東京、パリ、北海道、北京、屋久島、落合です。パリには、彼女が暮したホテルや、立ち寄った酒場がまだ残っていました。稚内の文章は、なぜか朝7時の駅の描写がつづくので、やはり早朝から張り込んでみました。屋久島は案の定、豪雨で、雷も激しくて、飛行機が飛ばず、でもそのおかげで、芙美子と同じく船で鹿児島へ帰ることになりました。
 そうした写真だけでなく、文庫本の品切等で、いまではなかなか読めなくなっている芙美子の紀行文もたっぷり引用していますので、どうぞ手にとってみてください。

2010/11/25

著者プロフィール

角田光代

カクタ・ミツヨ

1967年神奈川県生れ。1990年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、2005年『対岸の彼女』で直木賞、2006年「ロック母」で川端康成文学賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で柴田錬三郎賞、『かなたの子』で泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞、2021年『源氏物語』(全3巻)訳で読売文学賞(研究・翻訳賞)を受賞。著書に『キッドナップ・ツアー』『くまちゃん』『笹の舟で海をわたる』『坂の途中の家』『タラント』他、エッセイなど多数。

橋本由起子

ハシモト・ユキコ

江戸東京博物館学芸員。専門は日本近代文学。1977年東京都生れ。中央大学大学院文学研究科国文学専攻博士前期課程修了。2004年「武蔵野文学散歩 都市のとなりのユートピア」展、2007年「文豪・夏目漱石 そのこころとまなざし」展等を企画担当。共著に『文豪・夏目漱石―そのこころとまなざし―』(朝日新聞社)。

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