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バルテュスの優雅な生活

節子・クロソフスカ・ド・ローラ/著 、夏目典子/著 、芸術新潮編集部/編

1,540円(税込)

発売日:2005/09/22

  • 書籍

20世紀最後の巨匠は、なぜ少女を描き続けたのか。賞賛と誤解に彩られた92年間の生涯。

画壇の流行に背を向け、長きにわたり半・隠遁生活を送りながら、少女という「完璧な美の象徴」を画布に塗り込めたバルテュス。取材を拒み、アトリエに他人が入ることを決して許さず、1枚の絵の完成に数年間を費やした「孤高の画家」の人生の物語を、夫人の回想と初公開写真の数々でたどり、真実のバルテュス像を浮き彫りにする!

目次

スイス、ロシニエールの屋敷グラン・シャレで、節子夫人と。1992年6月。
撮影=景山正夫


寝室のサイドボードには、バルテュスの愛した煙草やマッチ、菩提樹の香りのコロンが今も置かれている。
撮影=山下郁夫


あの映画監督フェリーニさえ、なかなか入れてもらえなかったアトリエにて。制作は大きな窓から射し込む自然光のもとで行われた。
撮影=景山正夫


1754年に建てられたスイス最大の木造建築グラン・シャレ(「大きな山小屋」の意)を庭側から望む。
撮影=山下郁夫
第1部
 バルテュスがバルテュスになるまで

第2部
 愛した館、慈しんだもの

第3部
 バルテュス交遊録

第4部
 音楽のように、空気のように
 夫バルテュスとの40年間
 節子・クロソフスカ・ド・ローラ

「描くことは祈り」バルテュス略年譜
バルテュスの遺志を継ぐ
バルテュス作品が見られる美術館
バルテュスの愛したスイスの小さな村々

コラム
 “猫たちの王”と分身たち
 なぜあなたは少女を描くのですか?
 モティーフとして、道具として
 出会いの頃の思い出がつまった手控え帳
  節子・クロソフスカ・ド・ローラ

書誌情報

読み仮名 バルテュスノユウガナセイカツ
シリーズ名 とんぼの本
雑誌から生まれた本 芸術新潮から生まれた本
発行形態 書籍
判型 A5判
頁数 128ページ
ISBN 978-4-10-602135-0
C-CODE 0371
ジャンル アート・エンターテインメント、絵画、画家・写真家・建築家
定価 1,540円

担当編集者のひとこと

バルテュスの優雅な生活

 あれは約20年前、1984年のことです。京都市立美術館で、ある画家の展覧会が開催されました。画家の名はバルタザール・クロソフスカ・ド・ローラ、通称バルテュス。当時すでに「20世紀最後の巨匠」と呼ばれていましたが、ほとんどの作品が個人蔵であるため、実際に画を観るチャンスはめったに巡ってきません。そのバルテュスの回顧展が日本で初めて、それも東京でなく京都でのみ開かれたのです。よく晴れた初夏の昼下がり、ひとりで会場に出かけました。出品数は少なかったけれども、初期の代表作である《山(夏)》《美しい日々》《コメルス・サン・タンドレ小路》などが放つ、えもいわれぬ神秘と不思議なエロティシズムに圧倒され、魅入られたものです。今回、本書を編集するにあたり、あのときの感動が鮮やかに甦ってきました。 バルテュスはまた「孤高の画家」とも呼ばれていました。シュルレアリスム全盛の時代に生きながら、画壇の流行には背を向け、ひたすら自らの信じる美を追求。彼にとっては、幼い少女たちこそ「完璧な美の象徴」であったため、その画は賞賛を浴びるいっぽう、誤解され非難されることもあったといいます。極貧の時代を経て画家としての地位を確立するも、40代半ばにしてフランスの田舎に隠遁。その後7年間、めったに人前に姿を現すことなく、謎に包まれた生活を送ります。後にローマのアカデミー・ド・フランスの館長に就任。初仕事で訪れた日本で待ち受けていたのが、後に夫人となる節子さんとの運命の出会いでした。
 終の棲家となったのは、スイス山中の屋敷グラン・シャレ。節子夫人は、愛娘・春美さんとともに、今もここに暮らしています。あの京都の夏を思い起こさせる緑かぐわしい季節にこの館を訪れ、節子夫人のお話をうかがいました。そして、めったに他人が入ることを許されなかったアトリエ、鏡や絵筆など遺品の数々、未公開の素描帳などを撮影することができました。
 本書では、そうした貴重な写真や関係者の肉声をもとに、バルテュスの人生の物語をたどっています。もちろん、代表作も多数収録。バルテュスを愛する方々はもちろん、やはり画家でもある節子夫人のファンの方々にも、ぜひ手にとっていただきたい1冊です。



画業に進むきっかけとなったのは、11歳の頃、愛猫ミツとの出会いと別れを描いたドローイングだった。以来、猫はバルテュスの大切なパートナー。この2代目ミツは愛娘・春美さんからの贈り物。
撮影=景山正夫

2016/04/27

著者プロフィール

節子・クロソフスカ・ド・ローラ

セツコ・クロソフスカ・ド・ローラ

東京生まれ。1962年、上智大学フランス語科在学中に画家バルテュスと出会う。1967年、結婚。ローマのアカデミー・ド・フランス館長職にあったバルテュスを支え、退任の1977年までをローマの公邸メディチ館に暮らす。1970年代より自らも画家として活動を始め、欧米で個展を開催。2001年にバルテュス没、翌年、バルテュス財団発足とともに名誉会長に就任する。2005年、ユネスコ「平和のアーティスト」の称号を授与される。同年から2006年にかけて、「節子の暮らし展 和の心」開催。随筆家としても活躍中。主な著書に『「和」をつくる美』(祥伝社)、『グラン・シャレ 夢の刻』、『グラン・シャレの手作り暮らし』(ともに世界文化社)、『見る美 聞く美 思う美』(祥伝社、朝日文庫)、『めぐり合う花、四季。そして暮らし』(角川マガジンズ)、『きものを纏う美』(扶桑社)、『バルテュスの優雅な生活』、『ド・ローラ節子の和と寄り添う暮らし』(ともに新潮社)などがある。在スイス、ロシニエール。

夏目典子

ナツメ・ノリコ

東京生まれ。1960年代、出版社で編集に携わる。1970年渡仏。さまざまな芸術家と親交が深く、多くのインタビューを手がける。バルテュスとその家族との交流は1991年から現在に至る。画家の愛猫“ミツ”の子と暮らす。著書に『パリ近郊芸術家の館』(婦人画報社)『フランスとっておき芸術と出会う場所』(学陽書房)ほか。日本現代詩人会会員、フランスのサン・ソヴール コレット友の会会員。

芸術新潮編集部

ゲイジュツシンチョウヘンシュウブ

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