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素数に暗号、ミレニアム問題まで。『素数の音楽』著者が贈るクリスマス・レクチャー。

数字の国のミステリー

マーカス・デュ・ソートイ/著 、冨永星/訳

2,530円(税込)

本の仕様

発売日:2012/11/30

読み仮名 スウジノクニノミステリー
発行形態 書籍
判型 四六判変型
頁数 335ページ
ISBN 978-4-10-506371-9
C-CODE 0098
定価 2,530円

毎年恒例、英国王立研究所のクリスマス・レクチャーでその数学者は語り出した。素数の謎にゲーム必勝法、果ては世界七大超難問であるミレニアム問題にいたるまで……。世界的ベストセラー『素数の音楽』の著者であり、今なおトップクラスの現役数学者が現場の数学者たちの豊富なエピソードを交えながら不思議の国へご案内!

著者プロフィール

マーカス・デュ・ソートイ Du Sautoy,Marcus

1965年生まれ、オックスフォード大学数学研究所教授、王立協会リサーチャー。2018年4月現在、リチャード・ドーキンスのあとを受けて「科学啓蒙のためのシモニー教授職」にもある。著書に専門書多数、また新聞・雑誌に署名記事を多数執筆、BBCでは数学番組を監修している。人目を引く彼のファッションも手伝って、イギリスで抜群の知名度を誇る。2001年、ロンドンの数学学会から40歳以下の最も優れた数学研究者に対して与えられるバーウィック賞を受賞。初めての一般書である『素数の音楽』は、世界的ベストセラーとなった。他の作品に、『シンメトリーの地図帳』『数字の国のミステリー』など。2010年、科学への貢献が認められ、大英帝国勲章を授かっている。

冨永星 トミナガ・ホシ

1955年、京都生まれ。京都大学理学部数理科学系卒。翻訳家。マーカス・デュ・ソートイ『素数の音楽』、ブライアン・ヘイズ『ベッドルームで群論を』など訳書多数。

書評

数学愛好家のクラブへようこそ!

茂木健一郎

 数学が苦手という人は多い。「数学」という言葉を聞いただけで、逃げだそうとする人をよく見かける。困ったことに、そのような数学不安症が、最近になって科学的に裏付けられてしまった。シカゴ大学を含む研究チームの実験で、数学が苦手な人が問題を解こうとすると、「痛み」を感じる脳の部位が活性化するというデータが報告されたのである!
 一方で、三度の飯よりも数学が好き、という人たちもいる。私の友人の脳科学者は、学生時代のある日、午後四時くらいから計算を始めた。午後八時までやっているカレー屋さんに行こうと、楽しみにしていた。解き終えて時計を見ると、七時である。間に合う! と下宿のドアを開けると、何やらおかしい。さわやかな風が吹き、鳥たちがチュンチュン鳴いている。なんと、「午後七時」ではなく、「午前七時」だったのだ!
 数学が苦手、嫌いという人にとっては、数学に時を忘れるということ自体、信じられないかもしれない。しかし、数学という世界は、一度入ってしまえば、汲めども尽きぬ喜びに満ちている。問題は、「クラブへの入会」の敷居が高いこと。苦手意識を解きほぐしてくれる、水先案内人が必要だ。
 マーカス・デュ・ソートイ著『数字の国のミステリー』(冨永星訳)は、数学が好きな人はもちろん、苦手意識がある人にとっても、数学の世界のすばらしさを教えてくれる傑作である。あなたも、この本を読んで、数学愛好家のクラブに入りませんか?
 著者は、オックスフォード大学の、科学についての啓蒙(public understanding of science)のために創られたシモニー講座の教授。進化論について多くのすぐれた著作のあるリチャード・ドーキンス教授の後を継ぎ、大きな期待を集めての就任だった。
 難解な数学の理論の神髄を、一般読者にもわかりやすく届けるデュ・ソートイ氏の手腕には、定評がある。二〇〇六年には、一一歳から一四歳の子どもに向けての「クリスマス・レクチャー」を担当した。偉大なる物理学者マイケル・ファラデーの始めた伝統が息づく、晴れ舞台に立ったのである。二〇〇八年にはBBCとともに数学の歴史についての番組を制作し、好評を博した。
 本書でも、その親しみやすい語り口は健在だ。デイヴィッド・ベッカムがリアル・マドリッドに移籍した時、なぜ背番号23が選ばれたのか。一七年に一度発生する素数ゼミの謎。NASAから「宇宙人」へのメッセージ。自然界の「かたち」の中に現れるフィボナッチ数。英国の海岸線は、どれくらいの長さか。
 これらの話をきっかけとして、デュ・ソートイ氏は巧みな話術で数学の「奥の院」に読者を導いていく。そして、リーマン予想、ポアンカレ予想、NP完全問題、楕円曲線、そして流体方程式といった、一〇〇万ドルの賞金が懸かった「ミレニアム」問題の解説によって、各章はクライマックスを迎えるのだ。
 それにしても、数学の世界に惹きつけられる人間のドラマの、何と興味深いことか。「数学者につきものの奇行のひとつに、電話番号が素数かどうかをチェックするという行為がある」と著者は書く。そういう本人も、素数の番号にこだわって電話会社のオペレーターに怒られる。そんな風変わりな数学者の世界がかいま見えるのも、本書の醍醐味の一つだろう。
 そして、数学と歴史の意外な関わり。第二次大戦中、ドイツが開発した暗号システム「エニグマ」を、イギリスの数学者たちが解明した。この成功により、数学者たちは第二次世界大戦を二年ほど早く終わらせ、無数の命を救ったとされている。
『数字の国のミステリー』を読むうちに、数学好きは愛が深まる。そして、数学嫌いも、著者の巧みな話術に夢中になっているうちに、コーヒーに入れた砂糖のように、苦手意識が溶けていくことに気づくはずだ。
 数学愛好家のクラブへようこそ! 大したおもてなしはできませんが、一生かかっても味わい尽くせないような、静かで深い喜びがあなたを待っています。

(もぎ・けんいちろう 脳科学者)
波 2012年12月号より

目次

はじめに
参考になるウェブサイトについて
第一章 果てしない素数の奇妙な出来事
第二章 とらえどころのない形の物語
第三章 連勝の秘訣
第四章 解けない暗号事件
第五章 未来を予言するために
謝辞
訳者あとがき

判型違い(文庫)

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  • 発行形態:書籍
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