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ヘッドハンターだけが知っている プロ経営者の仕事術

古田英明/著

1,540円(税込)

発売日:2015/11/18

  • 書籍
  • 電子書籍あり

数多くの人材を見定めてきたカリスマが、トップエリートのノウハウを伝授!

資生堂、武田薬品、サントリー──、創業百年を超える名門企業で外部からトップが招かれるケースが相次いでいる。企業存続のため大胆な変革が求められるなか、日本にも本格的なプロ経営者の時代がやって来た。時代の最先端を行く彼らのリーダーシップと仕事術を、25年もの間ヘッドハンターとして見つめてきた著者が伝授する。

目次
はじめに 「プロ経営者の時代」到来
序章 「人材敗戦」――危機の本質と日本復活への道
プロ経営者、三つの要件
「自分探しではなく、自分試しをしなさい」
「五%ビジネスマン」が見つけられない
“不死身の男”は“辺境”で育つ
プロ経営者になりたければアジアを目指せ
「日本的リーダー」の伝統が継承されていれば
第1章 プロ経営者はこうしてスカウトされる
人材を見極めるのに五年
船の大きさに見合った船長が必要
お金よりも自らの成長を求めて
プロ経営者は駅伝のランナー
反面教師としての斎藤道三
重要となるオーナーの役割
第2章 日本「生き残り戦略」の主戦場となるASEAN
圧倒的な人材不足がグローバル化のネックに
「残念な国」となった日本
ASEANは日本経済の生命線だが……
日本の管理職を上回る現地エリートの給料
日本企業特有の事情も
売上は伸びてもシェアが下がってジリ貧に
中堅企業はプロユースの高級品生産に徹するべきだ
ASEANで企画・生産した製品を世界で売る時代
日本企業の内向き志向を打破するために
人材育成にうってつけの中国市場
アジアのエリートがあなたの上司に
第3章 プロ経営者から学ぶリーダーの条件
社外取締役のオファーの数で分かる経営者の実力
プロが認めるプロとは?
「経営の達人」が語る日本的リーダー像
欧米企業でも機械的な首切りは過去の話
リーダーは自然発生的には出てこない
リーダーに必要な「4E」
GEでできることは日本企業でもできる
学ぶべきリーダーの「型」とは?
日本独自のリーダー像を目指して
リーダーになるために必要な資質
理念・志とは何か
仕事の能力(ハードスキル)とは何か
ソフトスキルとは何か
第4章 二十代、三十代でしておくべきこと
プロ野球スカウトとヘッドハンターの類似点
ある候補者の面談風景
若手ビジネスエリートの共通点はMBAと転職経験
なぜ、転職経験者の方が優秀なのか
中央官庁から逃げ出す若手キャリア官僚たち
まず、転職ありきということではない
若手ビジネスマンに向けた「仕事の心得」
四十歳までに身につけておくべきこと
最も重要なのは人との出会い
フェイスブックの「いいね」に固執するな
第5章 四十代から五十代――決断のとき
ビジネスマンにも売り時はある
四十歳以上は転職の覚悟を持つべき
役員評価で「氏素性」が重要となる理由
四十歳で求められる「コペルニクス的転回」
ビジネスマンの「心」「技」「体」
「四十代の悪魔のささやき」
「論語と算盤」
五十歳で求められる「鬼手仏心」の境地
「不満」や「恨み」で転職をするな
ヘッドハンティングは過去ではなく将来を買うこと
大切なのはポストではなく成長を諦めないこと
「人生は逃げ切れない」と肝に銘じよ
星一徹、勝小吉を目指す手も
「経営の達人」が説く「日本的経営道」
「楕円経営」が醸し出す奥の深さ
バブル崩壊に動じなかった経営力
日立「V字回復」の理論的支柱
「生身の人間への愛情」を経営に
「日本的経営道」を伝承するために
リーマンショックをきっかけに
社外取締役を選任しただけでは
企業経営者は文楽の「主遣い」
「引き際の美学」こそ日本型経営の真骨頂
あとがき

書誌情報

読み仮名 ヘッドハンターダケガシッテイルプロケイエイシャノシゴトジュツ
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判
頁数 240ページ
ISBN 978-4-10-476902-5
C-CODE 0095
ジャンル 経営学・キャリア・MBA、ビジネス実用
定価 1,540円
電子書籍 価格 1,232円
電子書籍 配信開始日 2016/05/13

書評

カリスマヘッドハンターが教えるリーダーの心構え

冨山和彦

 私は、二〇〇三年に産業再生機構に参画し、企業の倒産や再生の現場を数多く見てきました。
危機に瀕した企業の中身を調べて、再生のための処方箋を書いてみると、財務リストラだけでは到底間に合わず、ほとんどのケースで経営陣の入れ替えが必要でした。だから、企業を再生する上で、新たな経営を誰に任せるかということが非常に重要な要素となります。
 産業再生機構ではカネボウやダイエーなどの大企業から中小企業、地方の名門企業など四十一社の再生に取り組みました。それぞれの企業の規模やタイプに合わせた新たな経営者を探さなければならないのですが、その際に、たいへんお世話になったのが本書の執筆者である縄文アソシエイツ社長の古田英明さんでした。
 古田さんは、エグゼクティブを対象としたヘッドハンターとしては、日本の草分け的な存在だといえるでしょう。本書はその古田さんが、プロ経営者を題材にしてリーダー論を述べたものです。
 特に興味深いのは、ご自身の経験をベースに、プロ経営者の候補となるエグゼクティブをどのようにスカウトするのかが詳細に描かれていることです。古田さんによれば、一人の人材を見極めるのに五年くらいの時間をかけるということですが、この件を読んで私としても大いに納得するものがありました。
 私自身、企業再生を託す経営者候補の面接をしていて、人間を見抜く難しさを痛感していたからです。たとえその都度何時間話をしようと、いくらでも演技することができます。しかし、五年間その人の人間的な成長やそれに伴う発言の変化などをトレースしていけば、能力のみならず人間性もかなり掘り下げることができるはずです。そういう候補者を数百人もウオッチングしているところに、ヘッドハンティングのプロのノウハウがあるのだと思います。
 本書ではまた「人材敗戦」という言葉で、リーダーとして経営を担える人材が圧倒的に不足している日本の現状に警鐘を鳴らしていますが、私もこうした危機感を共有しています。
 かつて右肩上がりの経済が続き、企業を取り巻く環境が連続的にしか変化しなかった時代には、トラブルが起こってもほとんどが想定内のものだったので、問題解決のための調整をすることがリーダーに求められる役割でした。
 しかし、バブル経済が崩壊して以降、低成長時代に入る一方で、グローバル化やデジタル革命の進展に伴い、不連続な変化が常態となった現在、ビジネスや生産の現場では日々、まったく想定外の問題が噴出し続けています。こうした局面でリーダーに求められるのは決断力ですが、多くの日本企業では依然として調整型のエリートが経営を担っています。このミスマッチこそが、日本経済の長期的な低迷の大きな原因だと言えるでしょう。
 しかも、バブル崩壊から二十年以上もたっているのに、混沌の時代に対応できるリーダーの育成を怠ってきました。それが現在の深刻な人材不足を招いたことは明かです。
 そもそも決断力のある経営者というのは中間管理職の延長線上に存在するのではなく、早い段階から経営者として育成されるものです。ただし、ピカピカのエリートコースを歩ませればいいというわけではありません。むしろそういうところからは強いリーダーは生まれてこない。三十代半ばくらいから、経営状態がボロボロの子会社やビジネス環境の劣悪な新興国市場などを渡り歩いて経営者としてのトレーニングを積み、挫折と失敗を乗り越えて生き残るような人材でなければ、これからの会社経営は担えません。
 さらに、そういう厳しいプロセスを経てトップになれば、ワークライフバランスなどはない。仕事に追われて社長が一番大変だと部下から同情されるくらいの存在にならなければ、経営はうまくいかないでしょう。こうしたリーダーの心構えが「三角形を逆さにして頂点が底辺となって全体を支える」というユニークな表現で分かりやすく解説されているのも、本書の読み所の一つだといえるでしょう。

(とやま・かずひこ 株式会社 経営共創基盤 代表取締役 CEO)
波 2015年12月号より

著者プロフィール

古田英明

フルタ・ヒデアキ

縄文アソシエイツ株式会社代表取締役。1953年生まれ。1976年に東京大学経済学部卒業。神戸製鋼所で、東南アジア、中近東等での企画・販売業務に携わる。野村證券では、資本市場部、営業企画部で引き受けおよび企画業務などを担当。1996年4月に日本初となるエグゼクティブサーチ会社「縄文アソシエイツ」を設立。AMROPボードメンバー。“ひとつの会社の終身雇用から、ひとつの社会の終身雇用へ”という理念のもと、様々な活動を行なっている。

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