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ベッドサイド・マーダーケース

佐藤友哉/著

1,650円(税込)

発売日:2013/12/19

  • 書籍
  • 電子書籍あり

『ワスレルナ』。妻を殺された復讐者たちは、世界の秘密を解かねばならなかった――。

妻が殺された。僕の眠る隣で――。小さな町で密かに進行する連続主婦首切り殺人。復讐者となった夫たちは犯人を追う。しかし、真相に迫る彼らの前に、地球規模の恐怖が立ちはだかった。そう、この事件を解決するとは、人類を救うことだったのだ! ジェノサイド/文明更新(アップデート)とは何か、そして真犯人は? 四年ぶり長篇ミステリー。

目次
第1部 ベッドサイド・マーダーケース
第2部 ベッドタウン・マーダーケース
第3部 ベッドルーム・マーダーケース

書誌情報

読み仮名 ベッドサイドマーダーケース
雑誌から生まれた本 新潮から生まれた本
発行形態 書籍、電子書籍
判型 四六判変型
頁数 208ページ
ISBN 978-4-10-452505-8
C-CODE 0093
ジャンル ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
定価 1,650円
電子書籍 価格 1,320円
電子書籍 配信開始日 2014/06/13

インタビュー/対談/エッセイ

波 2014年1月号より アウトサイド・レアケース~中途半端な僕らの逆襲~

佐藤友哉

嫁さんと銀座でデートをして、「YOU」でとろとろのオムライスを食べ、子供のクリスマスプレゼントを買おうと、「博品館」でトトロやらアンパンマンやらを物色していると電話が鳴った。担当編集者からだ。
「佐藤さん。恐縮です。新刊の件なのですが、十二月刊行に決まりました」
「十二月に出して誰が読むんですか(笑)」
「恐縮です(笑)」
「じゃあほら、装幀をクリスマスカラーにしましょうよ。『ノルウェイの森』みたいに」
「じつは、本当にその予定でして……」
「えーー」
通話を終え、プレゼントをトランクに詰めて車を走らせているとき、ふと思う。
この人生は誰のものだろう。
「三十代既婚男性」の中の人が僕ということに、まだ違和感があった。
さて。みなさんはいかがですか。
若者ですか?
元・若者ですか?
最近は、九〇年代やゼロ年代を総括する本などが出てきたり、当時を知らない若い子らの誤解したカルチャー認識(それはとても新鮮なんだけど)を見つけたりして、なんというか、年をとった。ふつうに。
M君事件とか、阪神淡路大震災とか、オウム事件とか、酒鬼薔薇聖斗とか、9・11とか、そういうのに騒ぐ大人を「だるーい」とうんざりしていた僕も、とうとうそっち側の人間になったわけだ。老害予備軍だ。
『You Never Give Me Your Money』が、車のスピーカーからごく小さい音で流れている。ポールが愛すべきエルヴィスの真似をしながら、「ガッコを出てカネ使っちゃって未来もなけりゃ家賃も払えんね~」と歌い上げているところだ。
やれやれ。
ビートルズなんて、おっさんの聞くものじゃないですか。

この長い前置きが物語っているように、僕はまだ成熟しきってはいない。行きつけの寿司屋もないし、ワインの銘柄も覚えられないし、自分の足のサイズも知らないし、目玉焼きはいつも焼きすぎちゃってカチカチだ。
とはいえ、「成熟しないのが逆にカッコイイのです!」なんてオチに持っていくつもりはない。いやカッコイイとは思うけど、僕は残念ながら「永遠の子供」ではなかった。
中途半端。
似たような人は多いだろう。
どうも残念でしたね。自分がアウトサイダーからアウトするなんて思ってなかったでしょう。年齢と立場が勝手にふくれあがり、配偶者や子供や部下がぐいぐい迫ってきて、「よっしゃ。おれにぜんぶまかせなさい~」とゲラゲラ笑いつつも、内心げっそりしている人はお客さまの中にいませんか?
「出世したのに辛い」「パートナーにぽっくり死んでほしい」「年齢的に正義のヒーローにはなれない」「夜中に食う牛丼がまずい」「ずっと退屈」という人に、本書を読んでもらえればうれしい。『ベッドサイド・マーダーケース』には、その先の人生を見せる力があると確信している。
そう。これは小説の宣伝文なのです。

「新人の書いた強烈なデビュー作みたいですね」
本書を読んだ某名物編集者に、そう云われた。
僕には十年以上のキャリアと十冊以上の著作があるし、青春からも遠い状態にある。そんな人間の書いた小説が、若者の特権である「新人の書いた強烈なデビュー作」なる誉れ高い言葉で評された以上、本書は中途半端な僕らによる「逆襲の一冊」となるのだろう。

この文章の前半を飾る銀座デートのくだりは嘘っぱちだ。「YOU」には行ったこともないし、東京の道はこわくて運転できない。それでもこの人生は本物だし、何歳になっても「デビュー作」みたいな本しか書きたくない。そういうものに、僕はなった。
じゃ。最後はベタに。
『ベッドサイド・マーダーケース』、読んでください!
内容と無関係なクリスマスカラーが目印です!

(さとう・ゆうや 作家)

著者プロフィール

佐藤友哉

サトウ・ユウヤ

1980年北海道生れ。2001年、『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』で第21回メフィスト賞を受賞しデビュー。2007年、『1000の小説とバックベアード』で第20回三島由紀夫賞を受賞。他の著書に『クリスマス・テロル』『灰色のダイエットコカコーラ』『デンデラ』『333のテッペン』『1000年後に生き残るための青春小説講座』『ナイン・ストーリーズ』などがある。

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